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第十八話 おとーさーん!見て見て!サボテンの上に乗れたー

初夏のような陽射しが照りつける中、

おっさん一行を乗せた竜車《トカゲハイエース》は、のっしのっしと順調に進んでいた。


鉱山の村を出発してから、もう、しばらく経つ。

窓から見える景色も、徐々に様変わりしてきている。


かつては鬱蒼と茂っていた木々は、すっかり数を減らし──

広がっていた草原も、いまではところどころ赤茶けた岩肌や、乾いた土が目立ち始めていた。


鉱山のほうはというと──

さすがに縄梯子だけじゃ不便だろうと思い、

縦穴の天井に滑車を取り付けてやった。


ベアリングの効いた、地球産の高性能品。

……ちょっと文明チート感は否めないが、

あの年寄りばかりの村が、少しでも活気を取り戻してくれるなら、それでいい。


あの滑車なら、軽い力で木箱を井戸のつるべみたいに引き上げられる。

きっと採掘作業も、前よりはずっとマシになるだろう。


村中から五体投地で見送られ、

こっぱずかしさに背中を押されるように、俺たちはそそくさと村を後にした。


──いや、マジで。

虹色のあのカードを持ってなくて本当に良かった。


名乗りもせず、報酬も求めず。

黙って立ち去った俺たちは、

この先きっと、伝説の“謎のおっさん”として語り継がれることだろう。


鉱山で手に入れた、スライムと蟻の魔石については──

正直、まだ大して調べていない。


ひとまず言えるのは、

「調味料ではない」ということだけだ。


どういう使い道があるのか、

それはまた、いずれ分かるだろう。


竜車は進む。


かつて見た西部劇のような景色──

赤茶けた大地に、藁のようなボールがコロコロと転がってくる。


……そうそう、あれだ。

最初に 盗賊拳法家《ヤムチャ》 がいた…あの辺りの風景だ。


気がつけば、俺たちはそんな荒れ地に足を踏み入れていた。


平坦な道が続くかと思えば、突然、目の前に切り立った岩山が現れる。

まるで大地が急に機嫌を損ねたかのように、道がいきなりゴツゴツと荒れ始める。


そして、道ばたにあるのは、見たこともねぇトゲトゲのサボテンみたいなやつばっか。

葉っぱも花もつけず、ただひたすら耐えるだけ──そんな顔してやがる。


トカゲはといえば──

緑地にいた頃よりも、むしろ元気になっているように見えた。

乾いた岩地を蹴っては、砂埃を巻き上げて駆け回る様は、どこか生き生きとしている。


「……お前、この辺の方が性に合ってんのか?」


まるで故郷に戻ったかのような動きに、

おっさんは目を細めて呟いた。


娘たちはといえば、あいも変わらず元気いっぱい。

この暑さもまるで気にしていないのか、

拵えてやったトロピカルジュースを片手に──


「おとーさーん!見て見て!サボテンの上に乗れたー!」

「トゥエラ、それは乗るもんじゃないのですー!」


大はしゃぎで岩を登ったり、

サボテンを囲んでキャッキャとはしゃいでいた。


(……こっちは汗だくだってのによ)


おっさんは、うっすら滲む汗をぬぐいながら、苦笑いで娘たちを見守っていた。


やがて──

照りつける陽射しの中、赤茶けた風景の果てに、

崖下を見下ろすような位置へとたどり着いた。


「……おい、見ろよ」


おっさんが手をかざし、遠くを指さす。


娘たちもその方向へ目を向け──

思わず、わぁっと小さく歓声をあげた。


崖の下には、街があった。

荒野にぽつりと浮かぶように、

石造りの建物が肩を寄せ合い、

その隙間を縫うように道が走っている。


中心には広場のような空間。

建物の屋根には布を張った日除けや、

煙突から立ちのぼる薄い煙も見える。


「……結構デカいな、あれ」


おっさんはぼそりと呟き、

腰袋の重みを感じながら、その街をじっと見下ろしていた。


挿絵(By みてみん)


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