表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺様御曹司は逃がさない  作者: 橘ふみの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/157

滅(1)



「ありがとう七瀬さん、助かった~」

「サンキュー」

「前田先輩との貴重な時間削ったんだから今度学食奢ってよね~? ちょっとでも昼食代浮かせたいし~っていうかそもそも学食なんてあたしには贅沢で食べらんないし~」

「それはもちろん! つか七瀬ってまだ金に困ってんの? 大丈夫か?」

「学食なんて安いし、よければ私いつでも奢るよ? 遠慮しないでね!」


 ちょっとした軽いノリというか貧乏人ジョークてきなノリだったのに、ここにいる全員が哀れみの眼差しであたしを見つめている。


「いやいや冗談だって……」


 まぁ冗談ではないんだけどね。事実貧乏人だし? 学食なんて高すぎて滅多に食べられないし。


 だけど、同期に奢られるほどお金に困っているわけではない。(お父さんの借金さえなければ)


「じゃあそろそろあたし行くっ」


 ~~♪~~♪


 各々のスマートフォンから緊急速報のアラームが鳴り響き、全員がスマートフォンを手にした。


「わぁ、大雨特別警報だって」

「ってことは今日の集会中止だな」

「えっ、愚痴大会中止なの!?」

「こら七瀬、“愚痴大会”ではないぞ?」

「愚痴大会だなんて、私そんなこと言ったらマスターに殺られる自信しかないわ……」


 華の金曜日、あのマスター達ですら如何なる理由があろうとも同伴禁止のサーバント集会──


 サーバント集会=マスターの愚痴大会でしょ。


 楽しみにしてたのにー!!


「あたしこの日のために日頃の鬱憤メモってきたのになぁ……」


 みんなに見えるよう、どこからともなく取り出した分厚いメモ帳をペラペラと捲った。


「「「「いや、鬱憤溜まりすぎでしょ」」」」


 総ツッコミを受けた当の本人(あたし)は、『え? みんなもこのくらいはマスターにたいして鬱憤あるでしょ』みたいな表情(かお)でいる。


 すると、『やれやれ、どうしようもないやつ』みたいな若干呆れ顔で凝視される。


「な、なによ、みんなして」

「いやぁ、九条様のサーバントなんて至れり尽くせりだろ」

「溺愛だしねぇ、九条様」

「愛されてるもんなぁ七瀬」


 ま、まぁ、愛されてはいるけれども。


「荒っぽい時もあるけどさ、超爽やかスマイルで微笑んでること多くね?」

「ほんっと目の保養になるわぁ! あ、彼女の前でこんなこと言うのはデリカシーなかったかな、ごめん。でもさぁ? なんだかんだ優しいよね、九条様」


 みんっな騙されてる、あいつの猫かぶりに。


 ちょっと横暴なところを見せたって、日頃うさんくさい笑みを振り撒いてるから帳消しになってんのよね。


 それに、なんだかんだ天馬のために行動する人だし、天馬の生徒になにかあっても見捨てるようなことをする人柄でもないし、なんだかんだ信用信頼尊敬されてるのよねぇ、あんの暴君御曹司。


「あ、ここにいたのね七瀬さん。エレベーターの月次点検終わったみたいよ。今回の担当あなたでしょ?」


 一軍マスターのサーバントである3年の先輩。峰不○子のような色っぽさ……そしてもちろん爆乳。間違えなく九条のタイプね。なんなら九条が一度抱いたとか抱いてないとか噂されてた先輩で、ぶっちゃけちょっと……気まずい。


「あ、はい。あたしだったはずです」


 天馬学園にはもちろんエレベーターがあって、月に一度業者の点検が入った後、一軍のサーバントが実際エレベーターに乗って動作確認する必要がある。


「ならよろしく頼むわね。警報出てるから早くしたほうがいいわよ、気をつけてね」

「わかりました、ありがとうございます」




 エレベーターのドア前には使用停止中のポールが立っている。あたしの動作確認が終わるまでこれを退かすことはできない。


 エレベーターのボタンをカチッと押した時だった。


「七瀬」


 その声に振り向くと同時に「ドアが開きます」の音声案内、そしてエレベーターのドアが開く。


「九条様、どうしたんですか?」

「どうしたって、特別警報出たろ。もう帰るぞ~」

「あぁ、そうですね。あたしエレベーターの動作確認があるのでこれが終わったら……ってちょっ!?」


 あたしの腕を掴み、一緒にエレベーターに乗った九条……いや、なぜ? 動作確認くらいひとりでできるんですけど。


「あの、降りてください」

「あ? べつにいいじゃん。俺がいようといよまいとやることは変わんねぇだろ?」

「まぁそうだけどっ」

「んじゃさっさと押せよ」


 この動作確認中に万が一のことがあったらどうするのよ……と言いたいけど、言ったら言ったで『お前になんかあったらどうすんだよ』ってネチネチうるさそうだしなぁ。


「はぁー、はいはい」


 適当に返事をしながらドア開閉ボタンと行先階ボタンをすべて押すと動きはじめたエレベーター。


「で?」


 ……「で?」とは?


「なに?」

「なに? って、マスターを差し置いてどこで誰となにしてたんだよお前」

「あぁ、サーバント体力テストのこととか諸々。アイデア出しみたいな?」

「ふーん」


 ここで『九条はなにしてたの?』と聞いてあげないと高確率で拗ねる。『なにお前、俺に興味ねぇの?』とかあれこれ言いはじめるのよね。


 意外(?)とかまってちゃんなのよ、こんっなデカい図体してるくせに。


「九条は? なにしてたの?」

「あー、乳でけぇ女のエンスタ見漁ってたわ」 

「は?」

「ははっ! んだよぉ、嫉妬してんの~?」


 ニヤニヤ嬉しそうにあたしの顔を覗き込んできた九条。


 まじで滅、いっぺん滅びろ貴様。


「あたしの乳にないものねだりすんな?」


 にやけヅラの九条に満面の笑みをお返しした、次の瞬間──


 ガタンッ! と音を立て止まったエレベーター。


「「え……?」」


 顔を見合わせるあたし達。


 そして──


 パチンッと照明が消えた。


「え!? ちょ、なんでなんで!? むりむりむり! 死にたくない! こんなところで九条と生涯を終えるなんて絶対やだぁーー! 誰か助けてぇーー!」

「お前まじで黙ってろ、やかましい。大袈裟すぎだっつうの」

「いてっ!?」


 取り乱すあたしの頭を九条がコツいた瞬間、照明がパッと点灯した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ