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金木犀の香り

あの不思議な会社の奴から数日が経った。あれからあんな感じの奴は見ていない。やっぱりあれは夢だったのか?けど、どうしてあんなに現実味を帯びていたのだろう?だが少し変わって一歩前進したことがある。それは口が第一関節くらい空くようになった事、だか体が動きそうな様子はない。頭の痛みはほんの少しだけましになったのかもしれない。

そしてこの数日ここの病院に不満なところができた。いや、この病院自体ではなくて俺の担当看護師だ。初めて声をかけられた時から少し緊張した口調ではあったが自分にかける言葉、早とちり、ミス、が多い。そりゃあ完璧な人間はそう簡単に居ないが毎回似たようなミスをする。

まぁ百歩譲って患者目線から言うと少し怖い。入院当時は口も動かず点滴で栄養を入れていたが、口が少し動くようになってから水みたいなお粥みたいな液体を口に入れている。そしてここからが問題。

自分は全身麻痺で体がまともに動くかもわからないだから呼吸用のマスクを着けているのんだけど、その例の看護師が確認なしなマスクを外すんだ。自分はそれがすごく怖い。もし急に呼吸が出来なくなるかもしれない…は、ないかもだけど喋れない以上相手に伝えることも難しい。けど本当に最悪な事態が起きた時が怖い、だからいつも覚悟してその時間を過ごしている。それが今の不満だ。するといつもと同じコツコツという足音。そして確認もなく空けるカーテンの音。

「新道さんおはようございます。良く寝られましたか?」

この声はいつもの看護師…いつも同じことを繰り返しているがそろそろ覚えてほしい。自分は答えれないんだって。

「はい!じゃあ朝ご飯食べでいきましょっか」

そうして躊躇なくマスクを外す。そして急にはいってくる水みたいなお粥みたいな物…本当に気が抜けない。

このお粥みたいなのはいつも三口ぐらいで終わる。この量は自分にとって丁度良い。この丁度良いの感覚がずっと続けば良いのになぁ…。そういえば感覚で思い出した。最近の晩ご飯の時看護師が「晩ご飯の時間」という晩ご飯という響きに違和感を覚えた。何だか胸がくすぐられる感じてこそばゆい、この正体も一体何なのか気になる。何て思っているとカーテンの奥から声がした。あの看護師の声かはわからなかったけど俺に問いかけてるわけではない、いわゆる内緒話って奴だな。

「連絡が来ない以上亡くなってるって考えた方がいいよね」

「そうよねぇ~森さんが警察の方にも頼んでるみたいだけど話がうまくと通らなくて」

亡くなってる?警察?このワードだけで考えられるのは事件があったのか?だけど患者のいる部屋でそんな物騒な話はやめてもらいたいな…。するとカーテンの開く音がした。誰が来たのだろう?と、疑問に思ったが声を聞いてその疑問は消えた。

この穏やかな声…この人はこの病院の医師の森さんだ。目も開くことしかできないなか人を判断するのは声しかない…だから看護師も森さんも声で覚えている。

「体調はどうですか?新道さん?まぁ、聞いても答えられませんけどね」

森さんはいつもここへ来たら同じことを言う、それを自分は毎回聞く習慣になっている。

「最近はここへ来たときよりも肌の色も良いし栄養管理でも順調だよ、来週くらいから眼球自体も動きそうだと予想されているから頑張っていこうね」

最近ってまだここへ来て十日しか経ってないけど…まぁそうゆうところも面白いから良いし、森さんはここへ来た時毎回自分の事を褒めてくれて患者として普通なのにとても嬉しく感じてしまう。


森さんがでた後、今日に睡魔か襲ってきた。さっきまで寝ていたはずなのに…そう思っていたがきずいたら視界は真っ暗になっていた。



「どけよ!」

聞き覚えのあるがあのときとは違う大きい声が耳に入った。だが、叩かれてはいない。怖い気持ち和や胸に秘めて目を開くと、すごく睨んでこっちを見ている五十代半ばの男性がこっちを向いて言っていた。自分はソファに座っている…いやソファの前に立っている?さっきの大声で反射的に立ったのか?この人は一体誰なのか?ここは何処だろう?前と同じ奴なのか?色々な疑問が頭に浮かんでいると、

「最悪」

後ろから声がした。また無意識に振り向くとそこにいたのは金髪の明らかに気の強そうな女性だった。その女性は椅子から降りてドアから出ていった。

「おまえもさっさと出ていけよ!」

そう言われた直後自分の足はドアの方に向かっていた。ドアからでると勝手に足がもう一つのドアに向かって自然に一つのスニーカーに足を通した。目の前にあるドアをかけると眩しい光、暖かい光が体にあたった、目の前に広がる住宅街可もなく不可もなくごく普通の住宅街だ。自分は家の中に居たのか。

ここは…と、思って家の表札を見ようとしたが先に足が動いていた。どんどん進む足、歩いているのはずっと住宅街。何か目的があるのか?と勝手に動く足にそう思った。だが少し変わっていって鼻の辺りに違和感を覚えた。何かの匂い?嗅いだことのあるような匂い?嫌な感覚ではない、優しい感覚、

説明するのは難しい感覚…その感覚はどんどん近付いていく。



考えているうちに足は止まっていた。下を向いている頭を上げると目の前には黄色い小さな花が視界一面に広がっていた。金木犀の匂い…だったのか?

鼻にほんのり感じる感覚にそう思った。しばらくしても自分の足は動かなかった。多分この匂いを嗅ぎに来たのだろう。花を一つ一つ見ているとまた視界が暗くなった。やっぱりこれは何なのだろう?夢?幻覚?けど、今回のは結構良かったな。金木犀を嗅いだような感覚になれたから。

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