17 怒涛の日々
森から運ばれて来た遺体を3つの棺桶に入れた。皆深い悲しみの中にいるのにダレルだけが浮いていた。涙一つ流さず平然としていたのだ。
自分の息子達も到着して皆叫び涙を流していたのにだ。皆が皆ダレルの犯行ではないかと疑惑の目を向けた。
「そなたは夫人が亡くなったというのに悲しくないのか?」
余りの態度に王から質問が上がった。
「悲しく、悲しく仕方ないですが、私には私の血を引く娘が産まれましたから。エノーラなら喜んでくれるはずです!孤児にも優しくしていたのだから…。エノーラは私の1番、私の胸の中に生き続けるのです!」
余りの言葉に皆言葉を失った。今にも殴りそうな王妃を必死に王は止めていた。
息子達は全員憎しみの目で父を見ていた。
皆の考えが一つになった瞬間でもあった。駄目だコイツである。
下半身だけじゃなく頭も緩いのか?良く今迄公爵として生きてこれたな…とダレルの言葉に皆が皆顔を顰めた。ただ単にエノーラと前公爵夫婦が優秀だったからに他ない。だが前公爵夫婦は息子の育て方だけ失敗したらしい…。
そして着々と葬儀埋葬が行われ関係者は神に祈りを捧げた。それと同行してチェリツリー公爵の交代が行われチェリツリー公爵はエディーノが継いでダレルと前公爵夫婦はフラーゴラ男爵の地位を継ぐ事になった。
時同じにしてフラーゴラ男爵領に前公爵夫婦の使用人やチェリツリー家にいた使用人達や夫人であるドリアも男爵領へ移動する事になった。前公爵は王からきちんとフラーゴラ領を回す様にきつく言われダレルが表向きはフラーゴラ男爵だが、領地の権限は前公爵夫婦が握る形となった。
所謂お飾り男爵である。
今回の事は噂になり夜会や茶会等でも誰にも相手にされないであろう。社交界から弾き出された形になるだろう…。
それくらいダレルがやらかした事は今迄にない形なのだ。タグリード王国も各国に噂が広まれば只では済まないのだ。
だからエノーラとは離縁という形にしてその後ダレルとドリアが結婚して男爵になったという形を取るしかなかったのだ。
そして公爵とは何も関係ない間柄にしたのだ。まだ幼いエディーノに王族から後見人を出す形にした。王国として一夫多妻は認めてはならない。
確かに一夫多妻が駄目な法律等はないが、女性優遇の世界で多妻一夫はあっても女性を軽んじる一夫多妻はあってはならならないのだ。
女性がまるっきりいないわけではないが女性は世界でみても少ないのだ。だから妻になった者や娘を皆大切にするのがこの世界なのだ。
王城での一室で子供達が話ていた。
「兄様大丈夫ですか?」
トライアスがエディーノのを心配して声を掛けた。
「あぁ、僕、いや私は大丈夫だ。元父やあの女やあの女の子供に伝統ある公爵を好き勝手にはさせない。私が立派な公爵になる」
「なら僕は兄様の補佐をします」
「いいのか?もっと大きくなってからなりたい職業についた方が良いのでは?」
「大丈夫です!僕は勉学は苦手ではないし、兄様の役に立ちたいのです。それに…セレフィオーネは神様が認めた子です。神様が助けたのではないかと思え…これは間違いなのでは?という気持ちがあります」
「そうだな…。確かに3人いたけど母様やセレフィオーネ達だと判別出来ない遺体の状態だったから私もそうであれば嬉しいな…。ただ、父やあの女やあの女の罪を暴かなければ3人は帰って来ないだろ。また命を狙われるだろうからな。無事な事を神様に祈るしかないな。それに…あの女の裏には何かいる様な気がしてならないんだ。それを全て明るみに出せれば…」
「そうですね。生きてる可能性にかけあいつらの全てを暴きます。それに、あの女の子供が父の子供である証拠はありませんし、僕は妹はセレフィオーネだけだと思っています」
「あぁ、私もだ…」
小さい子供達のお世話をしながら子供達の会話を聞いていた祖母であるエライザは複雑な心境になっていた。
子供達は娘の面影がなく皆ダレルにそっくりなのだ。少しでも娘の面影があれば…。
そして神様がエノーラ達を助けてくれていたなら…。
やはり結婚は間違っていたのだ。ガイドロスと共に自分は反対したのだ。それを息子が勝手に推し進めこんな形になってしまった。
ガイドロス同様息子を恨まずにはいられない。
エライザは胸中で必死に神様に祈る事しか出来なかった。




