第4話 世界は能力者を恐れた
主人公は出ません、政府サイドの話です。
同日 PM2:00 秘匿された会議室
議員らが一同に騒めき座る中、首相と白衣を着た男が入ってくる。皆が身構える中首相が口を開く。
「えーっ……先刻に各国と極秘の会議を行いました。一難去ってまた一難……隕石の破片による緊急事態。私の独断で皆様方を招集させて頂きました……つきましては……」
そう話していると1人の議員が焦り顔で言う。
「なんですか! この情報は!? 秘書から伝えられても理解出来ないです、異能力? 化け物?」
1人が言うと続々と不安が連鎖爆発していく。
「隕石は多少落ちても何も起こらないといった話だろ!」
「我々の中にもその異能を持つ奴はいるのかっ!? 俺は殺されたくないぞ」
それに堪忍袋の緒が切れ、首相は壁をダンッと殴り叫ぶ。
「言葉を慎め、この間抜けがっ! 今からその説明だ、話を聞いてから文句を言えっ! ……ふぅ、では頼みましたよ」
いつも思うが馬鹿な奴らよ。
話くらい黙って聞くんだな。
普段は物腰柔らかく誠実、現在の支持率は驚異の89.42%と世間からも好印象の首相の豹変。
それに静まり返ると白衣の男が話し始める。
「承知致しました。皆様方、隕石の対応お疲れ様でした。しかし、破壊しただけでは終わらず現在、世界中で異変が起きています」
そう言うと白衣のポケットからケースに入った石と粉末を出す。
「こちらが隕石です、調べたところ未知の金属と未知の生物が発見され、その生物が人と融合する事で人や獣は超能力に目覚めます」
それを聞き議員達は寄生される、乗っ取られると慌ててまた騒ぎ始めた。
だがその中で冷静に落ち着いていた議員がいた。
その名は——本國文記だ。
彼は一体自分が何者になったのか不都合があるのか早く知りたかったのだ。口を開き、他者を黙らせる。
「我々を集めて説明する余裕があるということは、少なくとも今すぐ死ぬような話ではない。まずは最後まで聞くべきだ! ……申し訳ないです、研究員さん。続きをよろしくお願いします」
席を立ち頭を下げる本國、他の議員達も謝罪して着席をした。
「た、確かにそうでした、失念でした。副総理……」
研究員は少し頭を下げてから再度説明を始めた。
「世界中でパニックにはなっていますが、先ずは死にはしません」
「ほ、ほんとか?」
とある議員が思わず口に漏らす。
「はい、ですが先ほど述べた通り特別な存在は生まれます。そしてその能力者を隕石から取って《ミーティアン》、非能力者は古い動物を意味するアーキゾアから取って《アーキアン》、ホモサピエンス以外の動物は《ミュータント》と呼ぶことにしました。差別的意図はありませんのでご注意を、それでは私は失礼致します、お疲れ様でした」
研究員は一礼すると、時間も惜しいと言わんばかりに足早に会議室を後にした。
「と言うことですのでよろしくお願いします。この後緊急会見をします、他国より先にすれば印象も良い。そして、この千載一遇の好機を逃す事は国家滅亡、植民地化による奴隷扱いなどに直結しかねません。多少は事を荒立ててもしょうがない事、コラテラルダメージです……それにここに隠れたミーティアンもいるでしょうが、我々の邪魔をせずにひっそり生きていくならばこちらからも何もしませんので」
誰でもわかる簡単な脅し、その後に更に声を強くし手を広げながら強行姿勢を見せ、先程より更に演説の様な事をする薬師寺。
「ただ他国に人工ミーティアンを作られた時のための軍拡、自衛隊を軍とし核兵器を配備する事も辞さないつもりであります! 強行姿勢を崩さず他国にも圧を掛け、今こそ我が国日本が世界の主導権を握る時ではありませんか!」
決まったっ……
この掌握しきったときが快感なのだ。
それに議員達は拍手喝采、さっきまで首相の変貌に怯えていた議員も手を上げて喜んでいる。
この異質な空気の中、本國は首相の横顔を見つめ思う。
あの目は力を欲していた。薬師寺総理……あなたは本当に日本を守るつもりなのか? それとも、やはりただ力を欲しているだけなのか……
だがここで異を唱えても誰も乗らないだろう。
スーツを整えて退室していく薬師寺。そして一同は解散し、彼は21時頃から会見を開く予定だ。
無論、能力者を管理する為の検査などを行うといった内容だ。
——————————
本國が秘書が運転する車で帰路に着く中、悩みに悩んでいた。
薬師寺総理は必ず悪さをする、さてどうしようか。
私は副総理という立場を利用すれば、能力者である同胞を守れる。だが能力者だと知られれば全てが終わる。 ……薬師寺を止められる抑止力が必要だ。
この深刻さが伝わったのか、ミラー越しに秘書が言う。
「大丈夫ですか? 先生? お具合が悪そうですが……」
「あ、ああ……私は心配性なので色々考えてしまうだけです……ご心配ありがとうございます」
「その心配、もしかしてご自身がミーティアンだから……とか? ですかね……?」
ズバッと言ってしまう秘書。
「っ!? ……い、いや私は」
気遣いに仕事もできる部下を持つとこんな場面で危機に陥るとは……
こ、こんなに早くバレてしまっては粛清されかねないっ。
「隠さなくていいですよ、先生。この車に仕込みは無いです。……それに私もソレになってしまった様ですから!」
そう笑いながら秘書が言うと本國は目を丸くし潔く認めた。
コンビニでコーヒーを買い、飲みながら本國が説明した後に秘書が話す。
「私の力はメモ帳とペンです。これが体内から出てきて、絵を描くと具現化します。複雑なものほど高度な画力が必要ですし、能力自体も地味です……本國先生のお役に立てそうになく不甲斐ないです」
秘書は俯きズボンを握りしめて絞り出すかの様に話すが、彼は笑顔で秘書の肩に手を置く。
「いやいや、私1人と言う重圧から逃れられただけでは助かりましたよ。焼石君! まあ暫くはお互い話すのは控えましょうか、総理が総理ですので」
「そうですね、あと事務所も何か仕掛けられてないから調べます。……あ! Zで牛のミュータントと戦った人物が話題になって、すごい騒がれていますよ! 他国でもトレンド一位です!」
「名前は……?」
「恐らくこれです!」
そう言うとトレンド一位の人物の写真や動画を見せた。
それを見た本國は静かに息を呑む。
――この人物こそ、日本に必要な抑止力かもしれない。




