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特選隊

 李央と丹瑞の二人を無事に部隊に入れることができた。他にも関羽や張飛の隊に入れず燻っているもの達に声をかけて回った。

 その結果、総勢十三人の部隊を編成することができた。千人の中から絞った結果としては、悪くないと思う。

 俺は劉備と徐庶に報告をした。


「劉備様、徐庶殿。無事、めぼしいもの達を集める事ができました」

「馬岱、頑張ったな。曲者揃いだろうが、しっかり調練をしてくれ」

「十三名とはいえ、大事な軍隊だ。関羽将軍や張飛将軍にお前の強さを見せつけてやろう」


 俺は頷き、選りすぐりの十三名を呼び出した。

 全員からとは言わないが、強い意志を感じさせる目をみせるもの達が多い。


「劉備様、この者たちです」


 劉備は十三名を眺めて、笑みを浮かべた。


「見た目から気合いが入っているな。いい部隊だ」

「ありがとうございます。全員、礼」


 一斉に礼をするのに慣れてないせいかバラバラな礼になってしまった。

 最初はこんなものであろう。俺は劉備に訓練に出ると伝えると、新野城から離れていった。


「馬岱隊長、何故、新野城から離れるんですか?」


 問いかけてきたのは李央だ。


「俺達はしばらく新野城には戻らない。激しすぎる訓練を他の兵達に見せられないからな」

「そんなに激しいのですか?」

「まあ、見ていろ」


 よし。これからの訓練を伝えることにしよう。


「まずは駆け足で半日駆け回る。その後、半日は武器を使っての稽古だ。最後は俺との立ち会いで終わりだ」


 李央を含めた十三名がその程度か、と楽観視した。

 普通の訓練とさして変わらないではないかと思っただろう。

 だが、これは俺も含めた限界まで鍛える訓練になっている。


「よし、まずは駆け足だ!」


 俺が先頭になって駆け始めた。皆、慣れた様子でついてくる。半日走り回って疲れて来たところで、昼飯と小休止を取らせる。

 そして、残り半日は隊員同士の稽古を中心に行なう。

 武器の扱いが不慣れな者には、まずは慣れることからさせ、それなりに使える者達は組んで打ち合いをさせる。


 そうして半日が過ぎ、夕食の準備が始まったところで、俺と隊員が一人ずつ稽古をつける。

 何度も何度も木剣を寸止めして、負けを認めさせる。手を抜いた者には、容赦なく蹴りを入れた。

 これくらいは張飛もやっていた。俺達の違いが出るのはここからだ。


 夕食を食べ終わって、野宿をする。まずは野宿に慣れさせなければならない。

 野宿では疲れは取れづらく、次の日に疲れを引きずってしまうのだ。

 朝日が昇ると共に、隊員を起こして周り、朝食の準備をする。


 隊員の中から、体が痛いとボヤくものもいるが、それは無視した。

 朝食後はまた駆け足、昼から隊員同士の稽古。夜は俺との一騎打ち。

 とにかくこれを毎日こなして、野宿を続ける。始めて三日くらいは痛みを訴える者もいたが、少しずつ慣れてきたようだ。


 訓練と野宿。戦場では付き物の訓練を集中的にこなす。

 十日過ぎたところで隊員の疲れが目に見えてきたので、一日の休みを与える。

 その休みが終われば、また訓練の毎日。隊員達も疲労が蓄積しているが、俺も疲れている。

 だが、そのような姿は臆面にも出さない。常に余裕を持って振る舞う。


 駆け足と武器の扱いに慣れたら、今度は馬に乗っての訓練だ。

 これは馬に乗ったことのない者も多いので、なかなか苦戦した。

 馬に乗れるようになれば、馬上での武器の振るい方、馬術を叩き込んだ。


 それも様になってくると駆け足、稽古、馬術、俺との打ち合いと、更にやることが増えた。

 今までの訓練に慣れてきたものも、疲れた顔を見せるようになった。

 やることが増えて、休憩が減れば、そうもなろう。


 この状況でも文句を言ってないのは、李央と丹瑞だ。二人とも他の者たちに比べると、頭ひとつ抜けているかもしれない。

 訓練、訓練、また訓練。訓練漬けの日々に嫌気がさす頃が近々来るだろうと思っていた頃、一人の隊員が夕食の際に駆け寄ってきた。


「隊長、お話が」

「ああ、なんだ?」

「俺にはこの部隊が合ってないのではないかと……」

「なるほど。抜けたい、という事だな」


 隊員は気まずそうに頷いた。


「お前は抜けたら何がしたい?」

「えっ? 普通の部隊に戻ろうと思っております」

「なら、お前を斬るしかないな」

「えっ!?」


 隊員は驚き、一歩下がった。

 俺は続けて言う。


「お前は選ばれたと思ってここに来たのだろう? だが、違う。お前達は爪弾き者たちだ。ただの兵卒にもなればければ、後方支援にも使えそうにない。だから、兵士に戻ろうとしても、お前に居場所はない」

「で、では、兵を辞めます」

「分かった。ならば、お前を斬る」

「どうしてですか!? どうしたら隊を抜けられるんですか!?」


 隊員は感情が爆発したようで、思い切りまくし立ててきた。

 だが、俺は顔色一つ変えずに言う。


「簡単だ。俺を殺す、それだけだ」

「えっ?」

「軍隊の内情を知ったものが逃げれば死罪に等しい。お前達は俺が特選隊を作ったことを知った。逃げれば死罪だ。ただ、劉備様にお願いしていることがある。俺が殺されれば隊は解散。他のもの達は好きなようにしていいとな」

「そんなこと……」

「しても構わない。なんなら仲間と共謀しても構わない。それくらいの覚悟で、俺はここにいる」


 隊員は一歩引き下がり顔を俯いた。劉備と交わした約束は隊の失敗は全て俺が引き受ける、というものだ。

 だから、俺は隊員に命を預けて訓練をしている。


「馬岱隊長、全員で掛かられれば死ぬかもしれませんよ?」


 言ったのは李央だった。面白い事を言う。間違った話ではない。


「お前の言う通りだ。ただ、俺を甘く見るなよ? 隊員の数名は道ずれにする。その一人になる覚悟があったら、攻めて来い」

「怖い話です。自分は死にたくないので、やめときます」


 李央はそう言うと、ごろりと寝返りを打った。

 俺は引いたままの隊員に言う。


「俺を殺す選択肢は全員にある。それを考えて訓練に当たれ。お前達の命を預かっているんだ。俺も命を預けるのは当然だ」

「……分かりました。失礼します」


 去っていく隊員の背中からは覇気が感じられなかった。

 そこまでの覚悟はないらしい。


「隊長も命がけなんて言葉を掛けてくれる人は、なかなかいないでしょうね」


 李央が背中を見せたまま語りかけてきた。

 俺はその背中を見て、思わず笑みになった。

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