HSS型HSPについて考えてみる
HSS型HSPとは何か
──刺激を求めて、刺激に消耗する人たち
一般的に言われているHSS型HSP
HSS型HSPとは、
**HSP(Highly Sensitive Person)**の特性に、
**HSS(High Sensation Seeking:刺激追求傾向)**が重なった状態を指す言葉だ。
医学的な診断名ではないが、日本では自己理解の文脈でよく使われている。
一般的には、次のような特徴が語られる。
• 新しいことに興味を持ちやすい
• 行動の初速が速く、挑戦も嫌いではない
• 人付き合いもできる
• ただし、途中で急激に疲れる
• 一人の時間がないと回復しない
周囲からは、
• 元気そうなのに突然消耗する
• 社交的なのに引きこもる
• 行動派なのに繊細
と見られやすい。
⸻
一般的な説明の、少し足りないところ
HSS型HSPはよく、
• 繊細さと刺激欲求の両立
• 気質の矛盾
• バランスが難しい性格
として説明される。
だが、この説明だと一つ疑問が残る。
なぜ行動する前ではなく、
行動してから強く消耗するのか。
刺激に弱いだけなら、
そもそも最初から避けるはずだ。
ここで、
「刺激」ではなく別の軸で見る必要が出てくる。
⸻
サイサイセオリー的解釈
──HSS型HSPは「刺激過敏」ではなく「予測過剰」かもしれない
焦点を刺激から予測へずらす
サイサイセオリー的に見ると、
HSS型HSPのしんどさは、
• 刺激が強すぎる
ではなく
• 刺激の先を予測しすぎる
ところにある可能性が高い。
ここでいう「予測」とは、
• 先の展開を想像する
• 相手の反応を読む
• 失敗した場合をシミュレーションする
といった、
起きていない未来を先回りで処理することを指す。
⸻
予測の上に、さらに予測を立てる構造
HSS型HSPの人は、行動前後で
次のような多層処理に入りやすい。
1. 何が起きそうか(一次予測)
2. それが外れたらどうなるか(二次予測)
3. そのとき自分はどう評価されるか(三次予測)
4. その評価が関係性や将来にどう影響するか(四次予測)
ここが重要だが、
一次予測だけで行動は起動する。
だから、
• 興味を持つ
• とりあえず手を出す
• 話しかける・参加する
までは速い。
しかし、動き出した直後から
二次・三次・四次予測が同時に走り、
内部負荷が一気に上がる。
結果として、
• まだ何も起きていないのに疲れる
• 進んでいるのに消耗する
という状態になる。
⸻
なぜHSS型で目立つのか
この構造自体は、
HSP全体にある程度見られる。
だがHSS型の場合、
• 行動起動が速い
• 新規性に反応しやすい
ため、
予測が立ち上がる場面がそもそも多い。
結果として、
予測過剰による消耗が
日常的に表に出やすくなる。
⸻
行動対策①:予測は一段で止める
対策は「考えないこと」ではない。
むしろ、
予測の深さに上限を設ける。
たとえば、
• 「とりあえず30分だけやってみる」
• 「評価は今日は考えない」
• 「失敗したら元に戻る前提で進む」
と、
一次予測だけで行動を許可する。
⸻
行動対策②:判断は行動後にまとめてやる
HSS型HSPは、
• 行動前に考えすぎ
• 行動中に消耗し
• 行動後に振り返る余力がなくなる
ことが多い。
順序を逆にする。
• 行動前:最低限
• 行動後:まとめて評価
「考える時間を後ろにずらす」だけで、
消耗はかなり減る。
⸻
行動対策③:回復を工程として組み込む
この構造を持つ人にとって、
回復時間は気分の問題ではない。
• 予定の後に何も入れない
• 人に会った日は一人の時間を確保する
これは逃げではなく、
処理能力を維持するための必須工程だ。
⸻
まとめ
HSS型HSPは、
• 矛盾した性格
• 気難しい気質
ではない。
予測を多層に生成しやすい認知構造を持つ人だ。
重要なのは、
• 自分が弱いかどうか
ではなく
• どこで予測を止めるか
• どう負荷を設計するか
という点に目を向けること。
構造が分かれば、
自己否定よりも、
扱い方の調整に意識が向く。
それが、
HSS型HSPが楽になる一番現実的な道だ。
予測過剰は「才能」ではなく「適応」かもしれない
人が予測を増やすのは、
失敗や不利益を避けながら生きるためだ。
とくに次のような環境では、
予測を重ねることが合理的になりやすい。
• 正解が頻繁に変わる
• 判断基準が人によって違う
• 後出しで評価される
• 一貫性のない叱責や期待がある
この環境では、
一段の予測では足りない
先を読まないと損をする
という学習が起きやすい。
⸻
「予測を重ねた人」だけが損をしにくかった環境
たとえば、こんな経験はないだろうか。
• 空気を読んだ人だけが責められなかった
• 先回りして動いた人だけが評価された
• 深く考えずに動いた人が割を食った
この環境では、
• 反応が速いだけでは足りず
• 反応の“その先”まで想像できる人が残る
結果として、
予測を重ねる → 不利な立場を避けられる
という成功体験が蓄積される。
⸻
なぜHSS要素と結びつくのか
ここが重要なポイントだ。
予測過剰だけなら、
人は基本的に慎重になる。
ではなぜ、
• 行動が速く
• 新しい刺激にも手を出す
HSS要素と結びつくのか。
理由はシンプルだ。
「考えた上で動けば、大きな失敗を避けられた」
という学習があるからだ。
• 考えた
• 読んだ
• 想定した
その上で動けば、
致命的なミスは回避できた。
すると、
予測+行動=問題が起きにくい
という回路が形成される。
⸻
しかし環境が変わると、構造だけが残る
問題は、環境が変わったあとだ。
• 子ども時代
• 厳しい職場
• 不安定な家庭関係
では機能していた予測過剰が、
より自由で不確実性の高い環境に移ると、
• 予測を回しすぎる
• 判断は速いのに消耗する
• 行動後の反動が大きくなる
つまり、
適応として身につけた構造が、
いまの環境では負荷になっている。
⸻
発生原因を性格に固定しないという意味
HSS型HSPを
「こういう人だから」と固定してしまうと、
• 自己否定
• 無理な我慢
• 環境調整の放棄
につながりやすい。
だが、発生原因を
予測を重ねないと不利だった環境への適応
と捉えると、見え方が変わる。
• 壊れているわけではない
• 状況に対して装備が重いだけ
• 調整の余地がある
という理解になる。
⸻
結論(暫定)
HSS型HSPの少なくとも一部は、
• 先天的な気質
だけでなく
• 評価や正解が揺れ続ける環境への適応
として形成された可能性が高い。
刺激に弱いわけでも、
繊細すぎるわけでもない。
考え続けないと、立場を保てなかっただけだ。
だから必要なのは、
自分を責めることではなく、
いまの環境に合った
予測の深さへ調整すること。
この視点を持てるかどうかが、
HSS型HSPを「しんどさ」から
「扱える構造」へ変える分かれ目になる。




