第5話 怖い話
「メトさん。この子疲れないんですか?」
僕たちが出発してから約十時間が経った。
僕は眠いのでねていたがメトさんはこの十時間寝ずに考え事をしていたらしい。
「まあ、疲れるでしょうね。けど何とかなるんじゃないかしら」
そういい終わるとフフッと笑い、言葉を続けてくる。
「ところで、あなためっちゃ寝ていたわね。まさかこんな硬いところで爆睡できるなんて、なんかの素質でもあるんじゃない?」
素質ってなんの素質だろうな。もしかしたら魔法を使えたりするかも。
「それはないって否定したいけど、柔軟な人は魔法の適性があるって聞いたことがあるわ」
「やった。何の魔法を使おうかな〜」
話をしていると、夜も更けてきた。そんな時にする話と言ったら1つだよね!
「メトさん。怖い話しませんか?」
「なに?その怖い話って」
まさか怖い話を知らないなんて。いや、僕が住んでいた時から結構な時間が経っているし、知らないのも当たり前かな。
「怖い話っていうのは、幽霊が出てきたり、化け物が出てきたりする話のことですよ」
「そうなのね。けど化け物ならそこにいるじゃない」
「この子を化け物扱いってひどくないですか?こんなに頑張って運んでくれているのに」
そう言いながら巨体の頭を撫でる。
「いやちがくて、下よ」
メトさんが指を下に指す。
つられて僕も視線をしたにやると、グニョグニョとした形を保っていない"なにか"がそこにいた。
「なんですかあれ。巨体君の体がヤバくないですか!?」
びっくりしすぎて声が裏返り震えてしまう。
それほどまでに異様な何かがそこにいた。
「大丈夫よ。形を保てていない化け物は平気。朝になると消滅するわ。形を保っていないやつはヤバいかもだけど」
ちょっとニヤけながら言っている。
え、そんな大丈夫なやつなのかな?まあメトさんが言っているし大丈夫…なのか?
巨体は何もいないかのように歩き続ける。下を見ておくと、踏まれた化け物は霧散して、一定時間を経て復活するらしい。
果たして攻撃はされないのだろうか。
「攻撃されないわよ。そもそも攻撃されたところでノーダメージね。で、怖い話とやらをやる?」
「まあそれならいいですけど。絶対にビビらせてやりますよ」
実はとっておきの話があったりするんだけど、それは内緒。
「心を読めるってこと忘れたのかしら?十億年生きてきているのにビビるなんてそうそうないわよ。やってくれるかしらね」
「よしっ。話しますよ。これは僕がまだ病気だったころの話なんですけど……」
僕の話が終わった頃に、衝撃はきた。
「確かに怖いわね。ちょっとビビったわ。あなたの勝ちでいいわよ」
「やったぁ!メトさんは何かあります?」
「そうね、これは結構前の話なんだけ」
メトさんが話始めようとしたら、僕たちの乗っている肩が急に斜めに傾いたのだ。
「おっと、どうかしたのかしら?」
そう言いながらメトさんは下を見る。すると血相を変えて僕のところへ向かってきた。
「降りるわよ!」
「えっなんでですか?ていうかこの高さはヤバくないですか?」
「いいから早く!」
僕の服の襟をメトさんに掴まれ、そのまま巨体の足元に降りたはずだった。
メトさんが衝撃を吸収し、僕を立たせる。
僕は巨体の足が見えるはずだった。
だがそこに見えたのは……巨体の膝だった。
「え?足は?」
僕は目の前にある事実から目を避けようと辺りを見回す。
ちょっと遠くにデカい石みたいなのがあった。暗闇でよく見えないが、目を凝らして見る。……足だ。
「メトさん!巨体君の…足が!」
鼻にツンとくる鉄の匂いが嫌でもこれを現実だと突きつけてくる。
急に後ろから唸り声が聞こえ始める。
僕は形の保てていない化け物だと思い、後ろを振り返る。見えるのは形の無い化け物のはずだった。
けどそこにいたのは、形の保った両手が刃の化け物だった。




