第3話 空腹
「十億年?僕がいた時から?いやいや、そんなのもうタイムスリップじゃないですか」
僕はこの惨状から目を背けるように彼女に向かって話した。
「嘘じゃないわ。この場面を見たらわかるでしょう。人類は滅んだ。のこっているのは君と、私だけよ」
冷たく、冷静な声。だがそれが逆に現実だと突きつけてくる。
いつも楽観的な僕でもさすがにわかる。これはヤバいと。
「確かにヤバいわね。あなたの状況からしたら」
「まだ全然理解できません。ちゃんと詳しく説明がほしいです」
ここで僕はある違和感に気がつく。
僕はヤバいと声を出していない。
なのに彼女はヤバいと共感していた。
まさか僕の心でも読めるのか?
なんて超能力者じゃあるまいし。
「いや、読めてるわよ。超能力者ではないけども」
「え!?じゃあ今までも読んでたんですか!?」
「まあ読みたくなくても読めちゃうから」
今まで全部読まれていたなんて、僕がめっちゃ楽観的なこととか、めっちゃツッコミ入れてることとかバレてるってことだよね。
恥ずかしすぎるんだけど。
「それも聞こえてるわよ。とりあえず、ここはあなたが生きていた時から十億年が経った。その間にいくつもの国が滅び、また、作られた。」
「そして、人類が滅ぶ前に最後にあった国は3つある。魔法の国、科学の国、そして何をやっているかはしらないけど、南極にある国。とこんなところね」
なんかすごい色々あったな。何より、魔法の国が気になりすぎるんだけど。
「ちょっと魔法の国行ってみま」
グゥゥゥ
あたりが静まる。
「すいません。ちょっとおなか空いちゃって」
「ああ、そっか。人間は何か食べないと死ぬんだったわね」
彼女は付いてこいというジェスチャーをし、僕もそれに従って付いていく。
僕が起きてから何時間経ったかわからないが、全体的に暗い印象を受ける。
「ここの水しか私は飲めるところを知らないわ。」
「なんか、飲める色してないと思うんですけど」
飲めると言われて案内された場所には、乳白色の泉があった。
ブラックシャウトみたいだな。ってことは美味しかったりしたり?
「私は飲んだことないけど味は保証しないわよ」
そうだった。心の中読まれるんだった。会話する必要がないのはちょっと楽かも。
僕はとりあえず泉のなかに手を入れてみる。
少しぬるいが指の先からじんわりと暖まっていく。
「なんかぬるいんですけど腐ってたりしませんよね。水なのに白いし」
「水じゃないならそのブラックシャウトっていうやつなんじゃないの?」
確かに。ってあれって泉から取れるのか?
「いやいや、あれはお酒ですよ」
そう言いながら一口。
昔何処かで見た毒見を試したみようとしたが、その前に舌に衝撃が走った。
ブラックシャウトと同じ味がする。
まさかこんなところで飲めるとは思っていなかった。
「やっぱりおいしい」
十億年前と同じようにもう一口飲む。
どうして口に含んだ瞬間、僕の身体は燃えるように熱くなった。
少しの間悶絶していると、彼女が駆け寄ってきた。
「ちょっと、大丈夫?」
まだ口が動かないが、心の中で思う。
ギリギリ、大丈夫です。
「いやそうじゃなくて、君の身体が」
「"クマみたいになってるんだけど"」




