40.レオンハルト、勇戦する
ワイバーンの巨体が、地面に叩きつけられ、地面が揺れる。
地面に激突したダメージで、ワイバーンの体が一瞬硬直するが、すぐに動き出す。
「GULLLLLL・・!」
ワイバーンが苦痛と怒りに満ちた唸り声を上げている。
「アル、行くぞ!」
私はアルに声をかけてからワイバーンに向かって走り出した。
「は、はい!」
アルブレヒトも返事をして、《フィジカルドライブ》を発動し走りだす。
ワイバーンは、高速で近づく私達を見つけたようだ。
右腕は《ゼピュロス》の威力で右翼もろとも跡形もない、左腕のかぎ爪はボロボロながら健在だ。
巨大な爪が、私たちに向かって振るわれる。
更に加速し爪を回避、ワイバーンに肉薄した。
右腕は無く、左腕は傷つきスピードに欠けるため、かわすことは難しくない。
アルも、何とか爪を回避している。
だが、その動きはどこか精彩を欠き、やっとのことでかぎ爪を交わしている状態だ。
その時、ワイバーンが私たちに向けて、尻尾を振るった。
尻尾の先端には、鋭い毒の棘が生えている。
かぎ爪に比べればそれなりのスピードだが、やはり墜落のダメージで大したスピードではない、
私は軽々かわして剣の届く間合いへと入った・・・だが、アルは――
「うわっ!」
尻尾の攻撃に驚いて足を止めてしまった。
ワイバーンが、アルに向けて再び尻尾を振るった。
止まってしまったアルにはその攻撃を避けるすべはなかった。
「グエッ!!」
アルは尻尾の毒針を喰らってしまったようだ。
「チッ!!」
私は、向かう方向を変えアルを襲う尻尾の方へ走った。
「レオンくん、そんなヤツほっときなさい!!」
遠くからシャルロッテの声が聞こえるが、そういうわけにもいかない。
アルに追撃しようとしている尻尾の先端を刃に魔力を纏わせて切りつける。
ドシュッ!!
ワイバーンの尻尾の先は鈍い音とともに切断された。
「GYAAAAA!!」
ワイバーンが苦痛の声をあげる。
アルは毒で動けそうにないが、今はこのままにしておくしかない。
「剣を借りるぞ」
アルに声をかけて、弾き飛ばされた彼の長剣をつかんで、ワイバーンに向かっていく。
「レオンくん!」
シャルロッテの声が聞こえる。
岩場から、ベアトリクスも駆け下りてくる。
二人は、こちらに向かっているが、まだ時間がかかりそうだ。
ワイバーンは、至近距離に迫った私を睨みつける。
「そんなににらむなよ。キライなのはお互い様だ」
私は軽口をたたきながら、速度を上げてかぎ爪のない右側に回り込む。
ワイバーンは一瞬私を見失ったようで、ほんのわずかに隙ができた。
私は跳躍し、失われた右腕の傷口に、アルの長剣を突き刺した。
「UGYAAAAAA!!」
硬い鱗に覆われていない傷口なので、剣の刀身が全て突き刺さるほど深く押し込めた。
「GLUUUUU!」
ワイバーンは憎悪をたたえた瞳で私を見ながら、大きく息を吸い込んだ・・・まずい!火炎のブレスだ!
ゴォォォォ!
ワイバーンが轟音とともにブレスを吐いた。
私は、回避を試みるが、火炎の範囲が広い・・・完全には回避できない。
その瞬間――
「《バリエーレ》!」
シャルロッテの声が聞こえ、私の前に透明の障壁が、幾重にも張り巡らされたようだ。
パキッ! パキッ! パキッ!・・・・
透明の障壁はブレスに砕かれながらその威力を相殺していく・・・助かった。
「無茶しすぎよ、レオンくん!」
シャルロッテが怒りながらやってくる。
「会長、助かりました」
素直に礼を言って、態勢を立て直す。
ワイバーンはどうやら連続してブレスを吐けないようだ。
しかも、ブレスを吐く前から吐いた後まで本体は隙だらけに見えた。
「会長、私が囮になってブレスをひきつけますので、本体を攻撃してください」
私はシャルロッテに具申した。
彼女は意図を察してくれたようだ。
ワイバーンの憎悪は私に向いているようなので、私がブレスの射程内にいればおそらくもう一度ブレスで攻撃してくるだろう。
その間ワイバーンは動けないし、体は隙だらけだ。
つまりブレスを吐ききるまで、攻撃し放題というわけだ。
「ベアトリクス、ワイバーンがレオンくんにむけてブレスを吐いたら本体に突っ込むわよ」
「わかったわ!!」
ベアトリクスも意図を理解してくれたようで短く返答した。
さて、もうひと頑張りするとするか・・・
私はワイバーンの正面に歩いて行った。
「どうした?私を焼き殺したいんだろう?」
私は両手を広げながら、ワイバーンを挑発してみた。
ワイバーンは私を睨みながら、ブレスを吐くため大きく息を吸い込んだ。
まだだ・・・
ワイバーンがブレスを吐く、私に向かって火炎が伸びてくが、先ほどのような広範囲ではない。
目の端で、シャルロッテ達が本体に向かっていくのが見えた。
・・・今だ!
私は、静止状態から、無拍子から最高速度で右に避けた。
ブレスは私が立っていた場所を薙ぎ払いそのまま放出され続ける。
私の速度についてこれていない・・・・見失っているようだ。
ズシャッ!
シャルロッテの太刀とベアトリクスの剣が、ワイバーンの腹部に食い込む。
「GYAAAAA!」
ワイバーンが苦痛の悲鳴を上げブレスが途切れた。
血が噴き出し、ワイバーンの動きが明らかに鈍くなってきた。
あの状態では、ブレスは吐けそうにない。
私も攻撃に加わるべくワイバーンに向かっていった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




