37. 共同戦線
「急ぐわよ!」
私たちは、商隊の元にようやくたどり着いた。
そこには、地獄のような光景が広がっていた。
ブレスの火炎を受けた人も荷物も跡形もなく、かぎ爪や毒の尻尾での攻撃を受けた者たちが地面に転がっている。
「エリカ、回復魔法を!急いで!」
エリカが生存者に駆け寄る。
まず、出血のひどいかぎ爪でやられた護衛に回復魔法をかける。
「《ハイルング》!」
傷口が、少しずつ塞がっていくが、出血が多すぎる。
「だめです......! 出血が止まりません......!」
護衛は、やがて動かなくなり息を引き取った。
次に、尻尾で打たれ、毒を受けた商人やの元へ駆け寄り解毒の魔法を唱えた。
「《エントギフトン》!」
毒で変色していた部分が正常の色へと戻っていく。
「うっ......ぐ......」
「大丈夫です! 毒は抜けました!」
「ありがとう......ございます......」
エリカは、さらに他の毒を受けた負傷者の元へ駆け寄り、次々と解毒魔法を唱える。
毒を受けた者たちは、何とか命を取り留めた。
だが、ブレスでやられたものは跡形もなくなっているし、爪でやられた者もほとんどの者が回復魔法をかけたが間に合わず、そのまま死亡した。
その時、ベアトリクスとアルブレヒトも駆け寄ってきた。
「......間に合わなかった」
ベアトリクスの表情は、悔しさと怒りに満ちている。
「こんなことが......」
一方、アルブレヒトは、少し離れた場所に立っている。
その顔は青ざめ、惨状から目を逸らしている......おそらく、このような凄惨な光景を見るのは初めてなのだろう。
軽傷者も含めれば、商隊の半数以上が被害を受けている・・・これは、ワイバーンによる、一方的な蹂躙だ。
「とりあえず宿場町に戻って警護隊に報告して生存者を連れて帰るようにしないとね」
シャルロッテはが素早く判断を下す。
重傷者が多くこのまま宿場町まで自分たちで移動するのは確かに難しいだろう。
私たちは急いで宿場町に戻り、警護隊にしらせ襲撃された商隊の保護を頼んだ。
一通りの手配を終えてから私たちも、宿泊しているホテルへと戻った。
「あれが、ワイバーンの力よ。とりあえず対策をたてて一刻も早く討伐するわよ」
ラウンジにつくなりシャルロッテが言い出した。
その声は、冷静だが、どこか怒りが混じっているようだ。
「騎士団の討伐隊なんて下手すれば到着まで数か月かかるでしょう?そんなの待ってられないわ。このままではすぐにシルバーヴェーク護衛隊にも被害が出るのもの」
「シャルロッテ、あなたはこんな状況自分都合しか考えないのね!帝国国民に被害がでているのよ」
ベアトリクスが非難をにじませながらシャルロッテに言った。
「それは帝国騎士団の仕事でしょう?私はヴェルザー家の一員として、依頼を受けた冒険者としてヤツを一刻も早く討伐するのよ。規則に縛られて何にもできないくせに黙っておいで」
シャルロッテの言うことは正論だ。
帝国国民を守る義務は帝国騎士団にあり、シャルロッテ個人にはない。
「・・・では、ワイバーンの討伐に協力します」
ベアトリクスがシャルロッテを睨みながら言った。
「あんたは先行派遣として来てるんでしょ?騎士団の規則違反になる可能性があるのわかってる?」
「被害を目の当たりにして、早期討伐が必要と判断しました。私は遊撃隊の隊長です。判断はある程度まかされてるから問題ないわ」
「ふーん・・・あんたにしては思い切った判断ね。そっちの護衛騎士はいいの?」
「僕は・・・」
アルが何か言いかけたのをベアトリクスが遮った。
「プフェル卿は私の護衛騎士ですので問題ありません。責任の所在は私にあります」
「分かったわ。じゃあ、わたしの部屋で作戦会議よ」
こうしてワイバーン討伐の実戦要員が倍増した・・・2が4になっただけだが倍増は倍増だ。
私たちはワイバーン討伐の作戦の打ち合わせをするべくシャルロッテの部屋へ集合することになった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




