36. ワイバーン襲撃
翌朝、私たちは馬を借りギルドの情報からワイバーンが出没した場所へと向かった。
一時間ほど馬を走らせた後、私たちは大陸公路のワイバーン出没地点に到着した。
グリムヴァルト山脈の麓を通る、本来行きかっているはずの商隊の姿は全くない。
ワイバーンの出没により、通行が止まっているのだ。
「この辺りが、ワイバーンの目撃が多い地点ね」
シャルロッテ言いながらが馬を止める。
周囲を見回すと、グリムヴァルト山脈の峰々が連なっている。
「まず、現地調査をしましょう。戦いに勝つには情報が必要よ」
私たちは周囲を調査し始めた。
大陸公路沿いには、破壊された馬車の残骸が散乱している。
どうやらワイバーンに襲撃された商隊のものの様だ。
木材は焼け焦げ、一部は完全に炭化しており、金属部分は高温で溶け、歪んでいる・・・ワイバーンのブレスの痕のようだ。
「すごい破壊力ですね......」
エリカが震える声で呟いた。
「ええ。ワイバーンのブレスは非常に高温よ。鉄を溶かし、直撃すれば、人間なんか灰も残らない」
地面には大きな爪痕が、いくつも残っている。
私はは爪痕の大きさを見て、少し眉をひそめる。
「予想以上に大きい個体の様ですね.」
「ギルドマスターからの情報によると、襲撃時間はかなりバラバラね」
「商隊が山道を通過する時に襲撃しているということですかね?」
「ええ。おそらく、ワイバーンは空腹になったら狩りをしているのでしょうね」
その時――
「会長、あれを!」
遠くの空に、巨大な影が飛んでいる。
翼を広げ、空を舞うその威容は、遠くからでもはっきりと分かる・・・ワイバーンだ。
ワイバーンは、グリムヴァルト山脈の上空を飛んでいる。
翼を大きく広げ、風に乗って滑空している姿は、まさに空の覇者だ。
全長15メートル以上、翼幅は、おそらく20メートルを超えるだろう。
灰色の鱗が、夕日に照らされて鈍く光っている。
その威容は、圧倒的だった・・・あれを討伐できるのか?
「さすがの貫禄ね・・・」
呟いたその声には、驚きと・・・・そして、興奮が混じっている。
ワイバーンは、私たちのことなど気にも留めずに悠然と飛び去って行った。
「今回は偶然遭遇できたけど、討伐するとき遭遇できるとは限らないから何か考えないとね」
「そうですね・・・餌を求めているということは牛や羊などを用意したほうがいいんですかね」
「そうね、襲われた商隊は牛を奪われた見たいだし――」
その時、硬質な女性の声が背後から聞こえた。
「シャルロッテ・フォン・ヴェルザー」
私たちが振り返るとそこには、ベアトリクスとアルブレヒトが立っていた。
「あら、ベアトリクスじゃない。こんなところで何をしているの?」
「それは、こちらの台詞です。現場で鉢合わせるとは・・・」
「隊長、これはチャンスじゃないですか?」
アルブレヒトが軽薄な口調で言った
「ヴェルザー伯爵令嬢は帝国でも屈指の冒険者ですよね。この際討伐のための情報収集をご一緒させてもらいましょうよ」
軽薄な笑顔を浮かべているが、その目には計算高さが宿っている。
「なんで、あんたたちと一緒に行動しないといけないのよ。こっちにメリットが何もないじゃないのよ」
「えーっ、早期に討伐すればヴェルザー家にだってメリットがあるじゃないですか~」
「騎士団の出動なんて何か月先になるのよ!あんたたちは、わたし達がワイバーンを討伐するのを指くわえて見てればいいのよ」
「ワイバーン討伐って、帝国騎士団でも数個小隊必要なんですよ。たった3人で出来るわけありませんよ」
馬鹿にした口調でアルが言った。
その時――遠くから、多くの馬車の音が聞こえてきた。
ガラガラガラ・・・
大陸公路を行く大規模な商隊のようだ。
ワイバーン出没の情報を知らない商隊だろうか、かなりの規模だが護衛の数が平時でも少ないくらいの数しかいない。
万が一、あんな状態でワイバーンに遭遇したら・・・
その時遠くから風切り音が聞こえてきた・・・ワイバーンだ。
「まずい......!」
『GYAAAAAAAAAA!!』
空から、ワイバーンが咆哮をあげながら商隊めがけて急降下してくる。
私たちの場所からは距離が1キロメートル近く離れているのではっきりとは分からないが、商隊は大混乱に陥っている。
私たちは商隊に向けて馬を走らせるが到底間に合わない。
ゴォォォォ!
ワイバーンが火炎のブレスを吐くのがこの距離でもはっきりと分かった。
一瞬でブレスの範囲にいたあらゆるものが炎に包まれる。
商隊の商人も護衛も散り散りになって逃げていく。
ワイバーンが商隊の家畜を襲っているのか家畜の鳴き声が聞こえる。
その直後両足で牛を2頭つかんでワイバーンが飛び上がって去ろうとしているようだ。
無謀にも商隊の護衛が去り際のワイバーンに攻撃を仕掛けようとしている。
ワイバーンは尻尾を一閃させて攻撃を仕掛けようとしていた護衛達を払い飛ばした。
「GULLLL・・・」
ワイバーンは、満足したように唸ると、空へと飛び去っていった。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




