35. 第二騎士団遊撃隊隊長とその護衛
3日後、私たちは大陸公路順調に進みグリムヴァルト山脈に最も近い宿場町に到着した。
ここから先は、ワイバーンの出没地域で商人たちは、この町より先には進めなくなっている。
「明日からは本格的に討伐作戦になるから、今日はここに泊まって英気を養うわよ」
ワイバーンという大物を相手取るのに体調を整えるのも確かに重要だ。
私たちは宿場町で一番立派なホテルに入った。
大陸公路の宿場町だけあって、宿泊施設は豊富にある。
「部屋を三つお願いします。最上の部屋を1つと普通の部屋を2つで」
エリカが素早く部屋を確保しに行った。
最上級の部屋は当然シャルロッテのためのものだ。
「はい、かしこまりました。すぐにご用意いたします」
受付の落ち着いた係員が答え、私たちを部屋に案内してくれた。
最上級の部屋と普通の部屋が並んでいる。
ふつうは部屋のランクで階層違うことが多いので妙な作りだと思っていると
「大陸公路の高級宿泊施設では護衛の方同フロアで宿泊を希望される富裕層の方が多いのでこういった作りになっております」
と係員が教えてくれた。
どうやら考えが顔に出ていたらしい。
護衛する身にとってはありがたい作りだ。
「レオンくん、エリカ後で一緒に食事に行きましょう。30分後に部屋に来てね」
シャルロッテが言い、部屋へと消えていく。
私とエリカはそれぞれの部屋へ入り身なりを整えて、30分後にシャルロッテの部屋の前に集合した。
扉をノックすると入室の許可が出たので部屋に入った。
シャルロッテが宿泊している部屋はさすがに広く調度も高級なものが取り揃えられている。
「じゃあ、食事に行きましょうか。明日から忙しくなるからしっかり食べとかないとね」
私たちは連れ立ってホテルの食堂へと向かった。
3人で夕食をとった後、私達はホテルのロビーで明日の予定について話し合っていた。
その時、扉が開き、二人の人物が入ってきた。
一人は、黒髪を肩まで伸ばした美しい女性と若い軽薄な感じの若い男性だ。
「すみません、部屋を二つお願いします」
男性が受付で部屋を手配していると、黒髪の女性がこちらを見て嫌な顔をした。
「お久しぶりね。シャルロッテ・フォン・ヴェルザー」
女性がシャルロッテに顔をしかめたまま挨拶をした。
「あら、ベアトリクスじゃない。顔がしわだらけで分からなかったわ。風の噂で騎士団に入団したって聞いてたけど、騎士団の生活はお肌に悪いようね」
シャルロッテが憎まれ口で返す・・・この女性がベアトリクス・フォン・クラム伯爵令嬢か。
2人の美女がにらみ合っているところに場違いな明るい声が割って入った。
「あれ? もしかして、レオンハルト先輩ですか?」
若い男性騎士が笑顔で近づいてくる。
「・・・ああ、そうだが」
私を『先輩』と呼ぶということは、この男性騎士は第一騎士団の所属なのか?
「やっぱり! お久しぶりです。お忘れですか、アルブレヒトです」
アルブレヒトが爽やかに笑う。
「・・・ああ」
・・・確か、第一騎士団にいたような気がする。
子爵家の出身だったはずだ・・・そういえば、いたかな、という程度の記憶だが。
「先輩が護衛騎士として配属されたって聞いて、驚きましたよ。第一騎士団でも指折りの実力者でしたから・・・」
その言葉には、どこか皮肉めいたニュアンスが混じっている。
・・・無邪気に見えるが、貴族らしい底意を感じる。
「私はベアトリクス・フォン・クラム、第二騎士団遊撃隊隊長です。こちらは私の護衛騎士のアルブレヒト・フォン・プフェル卿よ」
ベアトリクスが私たちに自己紹介とアルブレヒトを紹介してくれる。
「僕のことはアルって呼んでくださいね」
「ふーん・・・あんたも騎士団内で嫌われているようね。自分より実力が下の護衛騎士をつけられるなんて」
「ひどい言われようですね。僕はこれから伸びる人材なんですよ」
アルがへらへら笑いながら言い返す。
「シャルロッテ、あなた・・・もしかしてワイバーンの件で来たのかしら?」
「ええ、そうよ。帝都冒険者ギルドのギルドマスターから依頼されてね。あんたたちも?」
「騎士団の討伐の先行派遣よ。討伐は本隊が派遣されてからの予定よ」
「そんなに悠長なことをしてて、被害が拡大するだけじゃないの。まあいいわ、お互い邪魔をしないということでいいかしら?」
「それで構わないわ。それでは失礼」
ベアトリクスが会話を切り上げて部屋へと向かった。
アルもそれに倣って消えて行く。
(やれやれ、明日の現地調査何事もなければいいが)
私達もそれぞれの部屋へ戻りその日は休んだ。
拙い文章、読んでいただきありがとうございます。
多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。




