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シャルロッテは華麗に笑う ~新興貴族令嬢と護衛騎士の冒険~  作者: 朧 李奏
3章 港湾都市オスティア怪事件編
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EX01 レオンハルトとの稽古(シャルロッテ目線)

 オスティアから帰還して二週間が経過した。

 わたしは訓練場で、レオンくんとの立ち合いの準備をしていた。

「会長、準備はよろしいですか?」

 レオンくんが木剣を構えながら尋ねてくる。

「ええ、いつでもいいわよ」

 わたしも木剣を構える。


 今日は定期的に行っている立ち合い稽古だ。

 この男の剣は剣術の試合より実戦でこそ真価を発揮する。

 先日のオスティアでの戦闘でも、5体もの強敵を相手に一人で圧勝していた。

 あのオーガー因子を注入された実験体たちは、通常の騎士では一体を相手にするのがやったのはず・・・わたしでもあの短時間で魔法を使わずに倒すことが出来るか自信はない。


 それを、傷一つ負わずに全滅させるなんて・・・ なのに、本人は「大したことない」と思っているみたい。

 あほなのかしら?


 まあ、謙虚なのはキライじゃないし、わたしが見込んだ男だから優秀で当然よね。

「では、始めるわよ」

 わたしが木剣を構えると、レオンくんも構えを取る。


 太刀を使い始めてから、彼の戦闘スタイルが変わった。

 以前は騎士らしく盾を装備していたが、今は剣のみだ。

 太刀を両手、時には片手であつかい、体術と剣技を組み合わせる戦闘スタイルがより洗練された。


 わたしはレオンくんとの立ち合い稽古では手加減なんてしない。

 魔法を使わないだけで、いつも全力だ。


 今まで、わたしは数多くの身体強化魔法(フィジカルドライブ)を使う剣士と対峙したした経験があるが、わたしと互角の戦いをできる剣士にあったことは、ほとんどない。

 剣術でわたしと打ち合える腕があったとしても魔法の効果が切れてしまえば、後は一方的な戦いになってします。

 でも、レオンくんは違う。

 彼との立ち合いはしのげば勝てるわけじゃない・・・だからこそ、やりがいがあるのよ。


(・・・それに)

 彼はわたしと同じ、永久活性(ペルペトゥア)だ。

(この男、自分が《ペルペトゥア》だということの意味を、全く分かっていないわね)

 この男は、単純に身体強化魔法が常に発動していると思っているのようだ。

 一般的にもおそらく同じような認識だと思う。



≪フィジカルドライブ≫と≪ペルペトゥア≫は戦闘力が増加するという点では一緒だけれど、そもそも全くの別の現象だ。

 身体強化魔法≪フィジカルドライブ≫は一時的に肉体の能力を強化する魔法で効果時間は15~30分程度で、効果が切れた後すぐに連続使用は難しい。

 《ペルペトゥアル》は、身体の全てが魔力で常時活性化している現象だ。


 身体機能の強化はもとより、あらゆる機能が魔力で活性化しているため毒や精神系魔法も効きにくい。

 さらに、常に肉体が魔力で活性化しているということは・・・肉体の老化がほとんどなくなる。

 つまりは、≪ペルペトゥア≫の人間は通常の人間の何倍も長く生きるようになるということだ。

 つまり、この男は今のまま数百年生きる可能性が高いということ。


 レオンくんはおそらく知らない。

(・・・まあ、今のところ言う必要もないわね)

 知ったところで、この男の生き方は変わらないでしょうし。

 それに・・・私はそこで思考を止めた。

 今考えても仕方がないことよ。


「行くわよ!」

 わたしが踏み込むと、レオンくんが木剣を構えて迎え撃つ。

 私の斬撃を受け流し、カウンターを狙ってくる。

 私は体を捻って攻撃をかわし反撃するが、相手も跳躍してかわし距離を取る。

 そして――

「ハッ!」

 レオンくんが踏み込んできた。

(――速い!)

 一瞬で間合いを詰めてくる。

 これは、ヒポグリフ事件以降に使用するようになった静止状態から、急速に間合いを詰める動きだ。

 わたしをヒポグリフの攻撃から守るためにとっさに力を瞬間的に集中した超加速、それをいつの間にか戦闘技術として取り込んでいる。


 対戦相手としては、厄介極まりないわ。

 わたしは横へ飛びのき何とかかわす。

 だが、レオンハルトは体を捻りながらバックブローを放ってくる。

「ッ!」

 わたしは後方に跳躍して攻撃をかわすが、着地と同時に追撃してくる。

 首元を狙ってくる木剣で受け止め、力で押しあいになる。


 ガキン!


 わたしの木剣が弾き、レオンくんが後退する。

「やるわね。」

「・・・ありがとうございます」

「まだ続けるわよ。次はわたしが勝つわ」


 わたしの連続攻撃を、レオンくんが捌いていく。

 剣技だけじゃなく体術も織り交ぜてくる。

 蹴り、肘打ち、体当たり、掴み技、武骨で実戦的な戦闘法だ。

 型にはまらない、柔軟な戦い方、攻撃を予測して、先手を打ってくる。


(・・・面白いわね)

 わたしは更に速度を上げると、レオンくんも対応して更に速度を上げる。

 木剣が激しくぶつかり合い、火花が散るような激しい攻防。

 わたしが上段から斬りかかるが、レオンくんが受け止める体制をとる。

 その瞬間、木剣を引いて、下段から斬り上げる。

 だが、レオンくんは反応し、木剣を下げて、わたしの斬り上げを受け止める。


 レオンくんは後退しながら、木剣に魔力を纏わせ《飛燕》を放った。

 木剣から、魔力の塊が中途半端に飛ぶ。

 私は魔力の塊を木剣で弾き、間合いを一気に詰めレオンくんの胴を払った。


「2本目は私の勝ちね。木剣では《飛燕》は無理よ」

「・・・やはりそうですか。でも魔力塊は飛んでいくんですよね・・・」

 彼は息を整えながら何か考えている。


 わたしとレオンくんは魔法抜きで考えると、総合的な戦闘力はもともと互角くらいだ。

(でもなぜか、負け越しているのよね・・・)

 この半年くらいの立ち合いで、私の勝率は4割程度。

(・・・この男、何か持っているのかしら?)

 実戦経験? 戦闘センス?

(・・・なぜ?)

 わたしは心の中で首を傾げた。


 まあ、それはそれで面白いけど。

 負けるのは悔しいけれど、それ以上にこの男と戦うのは楽しい。

「今日はここまでにしましょう」

 わたしたちは訓練場を出て、館の方に向かった。


「さて、体も十分に動かしたし、次は栄養補給ね。レオンくんも夕食一緒に食べていきなさい」

「そうそういつもご馳走になるわけには・・・」

 驚いた表情を浮かべながら言った。

「つべこべ言わない。わたしが誘っているんだから、素直についてきなさい」

「・・・わかりました」

 レオンハルトが諦めたように頷く。


 わたしたちは並んで館へと向かった。

 夕日が、わたしたちの影を長く伸ばしている。

(レオンくん、わたしの退屈しのぎにつきあってもらうわよ・・・)

 心の中で呟く。

 今までは、一人でやりたいことをやってきた。

 今は、自分と互角以上に戦えるこの男が隣にいて、退屈な日常に、彩りを加えてくれている・・・とりあえずは、それでいい。

 わたしは、そう思いながら館へと歩いた。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。

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