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島津斉彬に成り代わった歴史オタク〜余命7年でペリーを返り討ちにする爆速近代化計画発動中〜  作者: りどみ


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吉田松陰と揺らぐ誇り

なぜか作者の中で、吉田松陰は老年のイメージがあります(享年29歳なのに)

あの肖像画が老けすぎなんや……


作中で吉田松陰は23歳、品川から日比谷は7キロの設定です

決してお年寄りをいじめている訳ではありません



膝は笑い、息は途切れ途切れだった。

公儀の圧倒的な現実から逃れるように、松陰はひたすら日比谷にある長州藩邸を目指して走っていた。


「あそこへ行けば……志を共にする同志が……」


芝口の交差点に差し掛かり、日比谷まではもう目と鼻の先だ。荒い呼吸を抑え立ち止まったその時、前方の広場に人だかりができているのが目に入った。


町人も、旅人も、果ては武士までもが足を止め、揃って同じ方向を見上げている。


「なんだ……? 」


興味を惹かれ引き寄せられるように近づく。




彼らの視線の先、広場の中心に立つ鉄塔の壁面に、見たこともない漆黒の巨大な板が据え付けられていた。背丈の倍ほどの高さに掲げられたその板が、突如、じじっと淡い光を放った。


「ひぇっ……!?」


松陰の喉から引きつった声が漏れた。板の中に女がいる。板の向こう側からにこやかに此方を見つめ、口を開く女が。


『これより、公儀報道をお伝えいたします』


髪をきっちり結い上げた若い女の声が、広場全体に朗朗と響き渡る。


『本日正午をもちまして奥州筋ならびに信越・北陸線の磁気軌道車網が全面開通いたしました。これにより江戸から京・大坂、ならびに仙台・蝦夷までの物流時間は従来の二十分の一に短縮されます』


同時に画面が切り替わり、線路の上を疾走する巨大な車輌と、賑わう会津の街並みが鮮明に映し出された。


群衆から「おおっ」「これで荷もすぐ届くようになるな」と歓声が上がる。


『なお、長州・土佐・水戸をはじめとする一部の藩においては依然として、公儀の新技術を辞退する意向を示しております』


簡易な日本地図の上、色付けされた路線図が映し出された。しかし、長州や土佐、水戸の領地はそこから綺麗に迂回され、ぽつりと灰色の空間のまま取り残されている。


『公儀といたしましては各藩の意向を全面的に尊重し、当該地域への敷設および遠視電信の開通を見送る方針です。また、これに伴う迂回輸送につきましても、周辺の公儀直轄路にて滞りなく手配されておりますので、皆様の生活に支障はございません』


松陰にとっては到底聞き捨てならない内容がさらりと流れた後、画面は街角の風景へと切り替わった。


『続きまして各地のお便りです。会津藩の温室農場より、今朝採れたばかりの会津みかんが磁気軌道車にて江戸へ到着いたしました。本日より日本橋の青果市にてお買い求めいただけます』


画面には、木箱一杯の瑞々しいみかんを食して顔をほころばせる日本橋の町人たちが映る。


『また、公儀の電信案内所を利用した旅籠の事前予約が好評を博しております。最寄りの案内窓口で簡単に手配できるとあって、連日多くの人でにぎわっています』


画面の向こう、街角にある公儀の案内窓口では制服を纏った女性案内員が、電信機を指先で軽やかに叩いていた。カタカタと打刻音が響き、通信が届くと、笑顔で宿の控えと磁気軌道車の切符を客に手渡している。


『以上、公儀報道局よりお伝えいたしました。本日も皆々様つつがなくお過ごしください』


画面の中の女が柔らかい笑みで深々と頭を下げると、やがて光が薄れ、ただの黒い板へと戻った。

それを合図に、集まっていた群衆もそれぞれ話しながら散り始めていく。




「みかんが美味しそうだったねぇ。どれ買いに行こうかね」


「うちも今度湯治に行くんだよ。あそこに行って聞いてみないと」


「旅籠の手配までしてくれるってんだから、すごい時代になったもんだよ」


人々は口々に、新しい技術がもたらす日常の楽しみに顔をほころばせていた。


「しっかし長州や土佐の奴らは、なんだってこんな良い話を断るんだろうな?」


「ほんとにねぇ? お上がせっかく色々してくれるって言ってるのに、わざわざ断る理由なんてあるのかね」


「まぁ、お偉いさんの考えることは俺らには分からんよ。勝手に損する分にはあちらの勝手さ」


何気ない会話の端々が、鋭い針となって松陰を刺す。


(これ、は一体……)


人波が動き出す中、松陰だけが動けない。喉が張り付き息の吸い方すら分からない。雷に打たれたような衝撃だった。


己は藩の末端にいるしがない一藩士に過ぎない。国元のお偉方が公儀とどのような腹づもりで対しているのか、その理由など知る由もなかった。


(お偉方は……これを知っているのか? 知った上で長州をあの灰色の空間に閉じ込めているのか……?)


自分が信じているものは、江戸の庶民から見れば訳の分からない分からず屋にしか見えないのだ。

恥ずかしさと悔しさ、憤りが冷たい泥のように腹の底から沸き上がってくる。


(……いや、これは何かの間違いだ。公儀の欺瞞か、あるいは上にもっと深い考えがあるはずだ……!)




立ち尽くす膝を叱咤し、松陰は日比谷の藩邸へと走り出す。確かめなければならない。我が藩の真意を。


自分が信じてきたものが正しいのだと証明するために。








はい(笑)相当、好き勝手に書いてます 職業アナウンサーが爆誕しました

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