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島津斉彬に成り代わった歴史オタク〜余命7年でペリーを返り討ちにする爆速近代化計画発動中〜  作者: りどみ


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遠視電信が繋ぐ命

美濃大垣城下、高台にある高照寺の避難陣屋。


まだ夜明けには程遠い未明の刻。

荒れ狂う濁流が家々を呑み込み、山が鳴り響く。美濃は今、深い絶望と混乱に包まれていた。


「直ちに高台へ逃げよ!」という藩の即刻避難の報せにより、人々は身一つでこの境内まで駆け登っていた。

迅速な決断のおかげで命は助かった。しかし、着の身着のままで避難してきた人々は、闇の中で泥と雨に濡れた体を寄せ合い、黒い波に呑み込まれていく城下をただ呆然と見下ろすしかなかった。


「……命さえあれば、家はいくらでも建て直せるっ!」


泥と雨に濡れた羽織姿のまま、声を張り上げているのは大垣藩の藩主・戸田氏正であった。

自ら高台へ登り、民の誘導と陣頭指揮を執っていたのだ。


だが、その眉間には深い皺が滲んでいた。

山間を切り開いた境内は震える民であふれ返り、武士も役人も、疲労しきった面持ちでただ右往左往するばかり。


その時だった。


「……あ、灯りがっ!」


漆黒の闇と降り続ける大雨の中、泥の悪路の向こうから、幾筋もの鋭い光が列になって近づいてくる。


揺れる数多の光線が雨粒と泥水を白く照らし出し、足元を確かに捉えながら、水飛沫を上げてぐんぐんとこちらへ迫ってくる。


互いの灯りに照らし出されたのは、泥に塗れた着物の裾を高く括り上げた男たちの姿だった。背には大きな木箱や資材を背負い、手に手に筒状の携行電燈を握りしめている。


五十人や百人ではきかない。二百、三百……いやもっと、千を超える光の列が、泥に足を取られながらも力強い足取りで陣屋へとなだれ込んできた。


驚きで呆然と見つめる大垣の人々。

それは幕府からの遠視電信で美濃の窮状を知り、磁気軌道車で早急に駆けつけ、そこから数里の泥道を、自らの足で踏破してきた近隣藩の男たちだった。


先頭に立つ男が笠を脱ぎ捨て、泥と雨を拭う間もなく進み出た。腹の底から声を張り上げる。


「尾張藩救護隊、第一陣! 遠視電信の打電を受け、ただいま参上いたした!」


後ろに続く男たちも次々に名乗る。


「同じく越前より参上! 救援衣料と炊き出し資材、お持ちいたした!」


「同じく近江より参上! 直ちに温床天幕の設営に取りかかりまする!」


名乗りは短く、迷いがない。かつてなら他藩の者が許可なく集団で領内に入ることなど考えられなかった。


しかし今、目の前にいるのは領地を害す者ではなく、命を救うために泥の中を駆けつけた同志たちであった。


「……よくぞ、よくぞ駆けつけてくれた……!」


声を詰まらせる藩主氏正に、それぞれの長は深々と一礼し力強い眼差しを返した。そして即座に振り返ると、雨を突いて境内に響き渡る大声を張り上げた。


「皆のもの、幕府の救援規律に従い、直ちに濡れた民の衣類取り替えと給食を始めようぞ! 大垣の者たち、案内を頼む!」


「おう!」


一斉に威勢よく応じる声が上がり、男たちはすぐさま動いた。背の箱から「斉彬印」の刻印が押された防水布を広げて天幕を組み上げ、手際よく薪に火をくべ、湯を沸かし始める。

別の班は手早く箱を解き、厳重に守られ乾いたままの衣類と大量の布、救援食を次々と取り出していく。


絶望に暮れていた大垣の武士も民も、彼らの圧倒的な頼もしさに自然と動きはじめる。

泥と雨と絶望に打ちひしがれていた境内に、温かな湯気が立ち上り、生きるための熱気が怒涛のごとく溢れ出そうとしていた。






近江の者たちは「斉彬印」の防水布と組み立て式の木枠を手際よく組み上げ、あっという間にいくつもの簡易天幕を出現させていく。


「これより女子(おなご)と幼子の着替えを行う! こちらの目隠し天幕へ立ち入られよ!」


その声に導かれ、庇の下で震えていた母子もまた、張られたばかりの天幕へと足を踏み入れた。


外の雨と視線を完全に遮る厚手の防水布の中には、持ち込まれた電燈が柔らかい光を投げかけており、乾いた衣類と布の山が用意されていた。


母親の手で冷たく皮膚に張り付いていた衣服を脱がされ、体をしっかりと拭われて乾いた衣類を身につけた幼子。その小さな体に、奪われていた体温が急速に蘇ってくる。


母親たちもまた濡れそぼった着物を脱ぎ捨て、体を拭いて支給された衣類に身を包んだ。肌に触れる乾いた布の温もりに、思わず全身の力が抜けていく。


そこへ、湯気をもうもうと立てる木椀のうどんが各々にさっと支給される。凍えた手で抱え、その熱い汁を一口。

温かさが身体の奥深くまで染み渡っていく。


「おいし……! おっ母、これ、すごくおいし!」


大きな椀を抱え、ふぅふぅと息を吹きかけながら顔をほころばせる幼子の姿に、母親の目から涙がこぼれ落ちる。


「うん、うん。おいしいねぇ。本当においしい……」


溢れる涙を拭い、我が子の頭を優しく撫でる。


あちらこちらから「あたたかい……」「うまいっ」声が聞こえてくる。

大雨をも押し返す温もりの中で、母子は深く身を寄せ合った。








※深く考察すると、時系列がおかしいのですがすみません、目を瞑ってくださいm(__)m


お読みいただきありがとうございました

恥ずかしながらお願いがありまして


作者の他の小説↓

『異世界転移したら、地球を所有してました。その裏で、地球では大騒動が始まっていた。』


これが悲しいほど伸びなくてですね(泣)

確かに読んですぐ面白い!!ではないスロースタートなのですが、44話くらいからとてもとても面白くなるのです

少々?長いですが、そこまでは薄目で流し見ていただいて(汗)すみません

仕方ねーな、読んでやるよという方 どうか、お願いしますm(__)m


※追記、読んでいただき誠にありがとうございます

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