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島津斉彬に成り代わった歴史オタク〜余命7年でペリーを返り討ちにする爆速近代化計画発動中〜  作者: りどみ


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14/32

ペリーとオグリ

翌朝。サスケハナ号の自室で目を覚ましたペリーは、窓から差し込む太陽の光に目を細めた。

昨日受けた衝撃の余韻は、一晩眠ってもなお胸の奥で燻っていた。


身なりを整え、副官や将校たちを伴って小舟に乗り込み、指定された港の桟橋へと向かう。

港へ足を降ろすと、そこにはすでに数人の役人を従えた一人の青年が佇んでいた。


太陽を背に立つ若い役人——昨日、自分たちを圧倒的な知性と度胸で降した男だ。

彼は船から降りてくる自分たちの姿を認めると、すっと洗練された動作で一礼した。


『おはようございます、ペリー提督。昨夜はよく眠れましたでしょうか』

『……ああ。素晴らしい食事のおかげで、長旅の疲労が吹き飛んだよ』


ペリーは提督帽のつばに手をかけ、目の前に立つ青年に向かって、軍人らしくまっすぐな視線を向けた。


『……昨日は大変な無礼を働いた。改めて自己紹介をさせてほしい。私は東インド艦隊司令長官、マシュー・カルブレイス・ペリー。アメリカ合衆国大統領の命を受けた外交使節だ』


ペリーは自らの右手を差し出した。青年は迷うことなくその手をしっかりと握り返した。力みがなく、それでいて確かな芯の強さを感じさせる握手だった。


『お見知り置きを、ペリー提督。私は江戸幕府目付格——小栗忠順と申します。官名から、小栗上野介とお呼びいただければ』

『オグリ……コウヅケノスケ……』


ペリーはその名を口の中で反芻した。

目の前で涼しい顔をして立つ男、どう見ても自分(59歳)の息子ほどの年齢20代半ばだろう。

この若さで、一国の外交を預かり、世界情勢を見通す圧倒的な知性を持っているという事実に、ペリーや傍らの副官たちは密かに息をのんだ


小栗はどこか品のある微笑みを浮かべると、ペリーと将校たちを見渡した。


『さて、ペリー提督。条約の手続きも終わり、貴艦の兵士たちも回復も順調です。そこで提案なのですが、せっかく遠い東洋の地まで来られたのです。我が国がどのような技術と未来を見据えているのか、その目で直接ご覧になりませんか?』

『……何? 我々に貴国の技術を見せるというのか?』


副官たちは思わず顔を見合わせた。罠ではないか、軍事機密を見せるはずがないと困惑する将校たちを制し、ペリーは深く頷いた。


『……断る理由が見当たらんな。喜んで案内してもらおう、オグリ殿』














『では、まずはこちらの乗り物で移動いたしましょう』


小栗に促され、ペリーたちが案内されたのは、港の広場に敷かれた美しい鉄の軌道の直線上にたたずむ、ガラスと滑らかな鉄骨で組まれた見慣れぬ「箱」だった。


「……馬が曳いておらん。蒸気機関車の煙突も、煤の臭いすら皆無だ。どうやって動かすというんだ?」


将校たちが首をかしげながら、ガラス張りの室内へ乗り込む。

ふかふかの座席に腰を下ろした次の瞬間だった。

揺れすらほとんどない滑らかな感触とともに、その「箱」はすうっと滑るように走り出した。


「な……!? う、動き出した!?」


ペリーは思わず窓枠にしがみついた。

外の景色が、恐ろしい速度で後ろへ流れていく。

我が国の誇る蒸気機関車のガタガタという猛烈な振動も、耳を聾する金属音も、立ち込める黒煙もない。まるで空中に浮いているかのように静かに、そして爆発的な速さで加速していく。


だが、ペリーや将校たちを真に絶句させたのは、その驚異的な速度だけではなかった。


透明なガラス窓越しに広がる日本の街の景色そのものだった。


「て、提督……! ご覧ください、あの街並みを……!」


副官が窓にへばりついて指をさした。

車窓の向こうには、綺麗に舗装された白磁の道がどこまでも続いていた。沿道には整然と立ち並ぶガラス張りのモダンな建物、幾多の街灯が美しい景観を作っている。


さらに彼らの目を釘付けにしたのは、そこを行き交うの人々の姿だった。


(な……なんだと!?)


道端で手持ち無沙汰にしている職人風の男も、小さな商店の店番をしている娘も、手に手に「本」を持ち、熱心に目を走らせているのだ。


「民が、当たり前のように書物を読むだと……!?」


将校が信じられないものを見る目で呟いた。

本国アメリカでも、労働者階級や貧しい民衆の識字率は決して高くない。読み書きができるのは一部の裕福な階層に限られているのが現実だった。


『我が国では、寺子屋や新式学校により、市井の者でも読み書き・算術・世界の地理を修めております。民が賢くなければ、国は栄えませんから』


小栗は隣で静かに腰掛け、流れていく外の景色を眺めながら、事も無げに言った。

ペリーの背に一筋の汗が流れ落ちた。



作者の別作品です↓

『異世界転移したら、地球を所有してました。その裏で、地球では大騒動が始まっていた。』


5話までは、ふーんこういう世界観ねと流し見てもらって19話くらいからタイトルに沿ってきます

今現在は作中の掲示板が大盛り上がりです

読んでくれると嬉しいです

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