第200話
【サイモン視点】
「よし。この辺で良いか」
針葉樹林の反対側まで移動し、ダミー用の簡易キャンプとトラップを設置。
素材もその辺で手に入る木の枝やコケを使用し、それっぽく簡易シェルターモドキを作る。
そして、その周囲に魔法付与で作成された呪符を地雷として埋め込めばトラップダミー拠点の完成だ。
「さて、あと2~3か所くらい作れば完璧」
と思ったその瞬間、風を切る轟音と共に鉄球が俺の方へ突っ込んできた
「っぶな!?」
咄嗟に上体を逸らして緊急回避。鉄球は俺の目の前を通り抜けて直線上にある木を叩き折った
「テメー。なにコソコソやってんだ?コラ」
「警告なしかよ・・・」
鎖付きの鉄球が引き戻され、その先に居たのは眼帯の女。
っつーかあの格好寒くねーのか?ホットパンツにチューブトップで肌露出しまくってんだが
「あー待て!俺は」「死んどけ!」
話聞けよ!女が鎖付き鉄球を振り回してまた投げつけてきた!
くっそ!コイツはどっちだ!?巨人側か聖域側か判断がつかねぇ
とりあえず、応戦して無力化するか
「≪インベントリ≫ッ」
武器を引っ張り出して突っ込んできた鉄球をソイツで受け止める
「巻物・・・それにその恰好は忍者か!」
俺の武器は長さ2m弱の巻物。鉄球が引き戻されたタイミングで巻物を広げてスキルを発動し、手裏剣を召喚
「チッ!飛び道具!」
「≪忍法:乱れ手裏剣≫!」
手裏剣を投擲後に素早く両手で印を組んで忍術を発動。
投げつけた手裏剣が多数に分身し、面制圧する忍術だが
「≪パワーサイクル≫ッ!」
鉄球女は鎖を高速で回すことで盾にしてガードした
「≪フルスイング≫ッ!」
「≪忍法:空蝉≫」
大きく薙ぎ払われた鉄球の動きに合わせて丸太を身代わりに上空へ緊急回避する忍術で回避。
よし、上を取った!
針葉樹の枝に上下逆さまな状態の足場とし、上から巻物で召喚した手裏剣を3本同時に投げつける!
「オラァ!」
しかし鉄球女の方も鉄球を引き戻しながら薙ぎ払いを続行して飛ばした手裏剣を鉄球で撃ち落とした
扱い難い武器種で器用な事するな・・・習熟系のパッシブスキルか
だが、イマイチ俺のスタイルを測りかねてるな。打ち落とされた手裏剣が良い位置に突き刺さったので素早く印を組んで忍術を発動
「≪忍法:影縫いの術≫」
「んなぁッ・・・!?うごけねぇ・・・!」
相手の影に突き刺さったクナイや手裏剣を起点に発動する拘束スキルだ
パワー自慢でも抜け出せねぇよ。・・・さて
「とりあえず落ち着け、俺がここに居るのはなぁ」
「な・め・ん・なぁ!」
説明しようにも暴れるし騒ぐし・・・コイツめんどくせぇな。
とりあえず気絶狙うか・・・?
「ーーーッ!≪武具精霊実体化≫ッ!」
「ッ!!」
鉄球女が実体化スキルを発動。あの鎖付き鉄球、精霊武器だったか!
「≪暗黒星≫ッ!」
鉄球から実体化したのは顔とか耳にピアスがジャラジャラついた男の人間型精霊。
あとなんか黒っぽいシャツと腕とか首にシルバーアクセがじゃらじゃらついてるし、背中には黒い翼ってすっげーイタい恰好してる。
おい片手で顔を覆うなよ
実体化と同時に勝手に地面の手裏剣が引き抜かれ、鉄球に引き寄せられている
これは磁力・・・いや、枝や小石に雪までも引き寄せられている・・・コイツは
「”引力”かッ!」
「かっ飛べッ!」
女が鉄球を振り回し、遠心力で飛んで来たのを横っ飛びで回避しようとするが、鉄球が迫るにつれて引力に捕まれた。ダメだ避けられねぇッ!
「≪武具精霊実体化:霞狸≫ッ!!」
こっちも巻物の武具精霊を実体化させて能力を発動させてガード
『い、イタイでやんすぅ~』
「悪ぃ。直撃したら流石に俺でもヤバイからな」
俺の武具精霊は「タヌキ」の精霊。・・・正直もっと強そうな精霊の方が良いとも考えるかもしれないが、見た目と能力性能は別だ!
あと、何気に愛嬌もあるからどうにも変える気にはならなかった
霞狸はデカイ鉄で編まれた笠を背負い、身の丈ほどのデカイ徳利を持った二足歩行の太った大狸。
コイツの能力は、俺の意思と指示に応じて俺の習得している忍術を代行してくれることだ。
消費する魔力やスタミナは所有者である俺が負担するのは変わらないが、実体化中なら俺は2種類の忍術を同時発動できる
霞狸が受け止めてくれた隙に素早く駆け抜けて離脱し、霞狸に指示を下す
「霞狸!火を頼む!俺は風だ!」
『ハイでやんす!≪火遁:古里行灯≫!』
「≪風遁:突風波≫ッ!複合忍法!≪炎遁:古里大名行列≫ッ!」
俺の指示に従って霞狸が発動させた火遁による提灯型の炎に対して、俺が追加で風を送り込むことで火力を強化
俺が編み出した複合忍法で巨大化した炎を殺到させる初見殺しコンボを叩きつける!
「ッ!」
向こうは慌てて鉄球を引き戻してガードしようとするが遅い!
巨大火球の群れが鉄球女に殺到し大爆発
「・・・やり過ぎたか?」
まぁ、最初に手を出してきたのは向こうだし、死体が残ってたら蘇生させるか
そんなことを考えていたら、いきなり地面が発光
「ッ!?コイツは!?」
瞬間、地面から岩の壁が突き出て四方を完全に閉ざされた
上る・・・のは無理だな。打ちっぱなしのコンクリみたいに全く表面にとっかかりが無い
「すいません。こちらのせいでご迷惑をぉ」
妙に間延びした口調が壁の向こう側から聞こえる
「アンタ何者だ?つーかこの壁お前の仕業か!?」
「はいぃ。えーっととりあえずぅ。アナタは聖域の人ぉ・・・じゃぁ無いですよねぇ?」
「・・・あぁ。俺は南から来たプレイヤーだ。聖域の拠点がドワーフの国にあるって聞いて、仲間と一緒に調査しに来た」
「そうですかぁ・・・」
その直後、鈍い音が聞こえた
「あで!や、やめ!社長!やめ」
「いきなり襲ったらだめって言ったじゃないですかぁ」
ゴスゴスと鈍い音が壁の向こうから何度か聞こえた後、壁がゆっくりと変化し、一枚のドアが出現。
ドアが開けられ、向こう側では申し訳なさそうな黒髪の女とタンコブ作って地面に倒れているさっきの鉄球女
「すいません。こちらの不手際ですぅ。私、巨人種の雷の氏族って方々の居住地を拠点にしてるイチホって言いますぅ」
「あぁ・・・霧隠れサイモンだ。よろしく」
「はいぃ・・・よろしければ、私達も合流と情報共有を進めたいのですがぁ」
「あーちょっと待ってくれ。今、森の向こう側に仲間もいて、そいつらと話し合いたい」
「はいぃ。一応、私達の前線拠点の位置だけ渡しておきますねぇ」
1枚のメモを渡され、俺は仲間の元へと戻る事になった
こりゃ拠点作ってる場合じゃ無いな・・・
≪火遁:古里行灯≫
種別:遁術/中忍専用
制限:Lv3以上
属性:火
射程:1~20m
形状:射撃
発動後、5~10個ほどの提灯型の火炎が出現し、それらがゆっくりとターゲットへと進む忍術
弾速が遅い代わりに強い誘導性能を持っており、術者の視界に捕えたターゲットを自動追尾する
また、当たり判定も大きいため急接近する対象への牽制や、風遁忍術などで加速させての攻撃など応用も可能




