第198話
【ジャン・バラ視点 北地南西部のとある港町】
やぁ。久しぶり。
以前、僕はオニキスってプレイヤーの頼みで北地にいるプレイヤーの所へと旅に出たのは覚えているだろうか?
今、それをすごく後悔してる。
「これってさぁ。僕、騙されたって認識でいいのかな?」
「いやぁ。俺もこんな事態になってるとは思わなかったんだ。いやマジで」
僕の目の前にあるのは吹雪と波間に見える灯台の光と港町
『オォォオオオオオオオ!!!』
それを戦場に暴れる鎧を着こんだ巨人とドワーフ
当然僕達も巻き込んでの戦いが始まっていた。
「≪投擲≫ィ!!」
巨人の戦士長の誰かの掛け声を合図に、信じられないくらいデカい投槍を巨人族の戦士たちが投げつけ、ドワーフ側からはバリスタ砲の応射が返ってくる
「≪城壁錬成≫ッ!!」
それを防ぐのは地面からせり上がった巨大な石組みの壁。巨人族の巨体でも簡単に身を隠せるほどの巨大な壁が等間隔にせり上がり、バリスタのボルトが跳ね返される
それを僕らは海上でテイムモンスターのケロたんの背中にあるプラットホームから見てたんだけど・・・っとあぶなっ!僕の足元にもデカイボルトがプラットホームの床に突き刺さった
どうやら向こうの索敵に見つかったらしい
「そら、ぼさっとしてたら死んじまうぞ。死にたくないならやるっきゃねーぞ」
「やっぱ僕騙されたヤツじゃん!!」
クソッタレ!オニキスのギルドマスターが巨人側ってのは分かってたけど、到着直後にこんな事態になってるなんて!!
どうしてこんなことになってるかって?
まぁ早い話が、僕らが北地へ上陸しようと港に立ち寄ったらドワーフと巨人族の戦争が既に始まってて、その港がモロ戦場になってた。
この港はドワーフの国の領土だったらしいけど、針葉樹林と港を同時に持つこの港町は最重要拠点ってコトで、そんでもってオニキスの仲間は巨人側だから、僕らは海側から戦艦のバリスタ砲でドワーフ軍に狙われてるんだよなぁ!!!
「ケロたん!≪自然防核≫!」
「≪撃ち落とし≫!」
アスピドケロンのケロたんに指示を出してシールドを展開し、飛んでくるバリスタ砲をガード。オニキスも鎖が付いたデカイ棘付き鉄球を振り回してボルトを空中で撃ち落としてくれた
その後、オニキスはインベントリからスクロールを取り出して魔法を発動。
この魔法は・・・≪通信≫か
「≪通信≫!社長!やっぱ海側はバリスタで固められてる!あと戦艦みてーのも何隻か動かしてんのが見える!」
『あー。やっぱりですかぁ。戦艦に回り込まれて沿岸から撃ち込まれると厄介ですねぇ。海上戦で戦艦を潰せますかぁ?』
「無茶言わないでくれるかい!?僕のケロたんは戦艦じゃーないんだけど!?」
「レベル90超えたウミガメだろーが!戦艦と変わんねーよ!」
「ウミガメじゃなくてアスピドケロンだって!」
ったく!ケロたんに大砲とかそんな装備を積んでるワケないだろう!
仕方ない、こうなったら戦うか。伊達に略奪者相手に武闘派を気取ってるわけじゃいと教えてあげよう
「シロくん!」
ホイッスルを使って猛獣使いのスキルで海中に潜伏させておいたテイムモンスターに指示を出し、こちらに接近する戦艦へと体当たりさせる
「でっか!?」
「レベル89の白鯨。シロくんだよ。≪ホエールダイブ≫!」
ホイッスルでシロくんに指示を出し、シロくんは海中から大きく飛び上がってドワーフの戦艦へとダイブし、その巨体による質量攻撃で戦艦は一撃で真っ二つにへし折れる
「よし!出番だクロくん!≪鯨音砲≫ッ!」
次に海中から飛び出したのは黒い鯨型モンスターのクロくん。
海を渡る時はシロくんとはセットで呼び出していて、シロくんが物理攻撃担当ならばクロくんは魔法攻撃担当だ
クロくんの口から大音量の咆哮が放たれ、その衝撃で別の戦艦は側面から押しつぶされて転覆
「残り1隻は俺に任せろ!≪万鎖≫ッ!」
オニキスがモーニングスターのスキルを発動させると鎖がとんでもなく伸びて鉄球がドワーフの戦艦の船体に突き刺さった
「ちょっくら乗り込んで来る!」
そう言ってオニキスは伸びた鎖を収縮させて一人ドワーフの戦艦に殴り込みをかけた
「あーもう!勝手なんだから!ケロたん取り舵!オニキスが殴りこんだ戦艦に近寄って!」
海戦じゃ僕が使役してるペット達は大半が使えない。
と言うか、海洋生物はあまり育ててない。ゲームでの海戦は同乗してた魔法使いの魔法による撃ち合いがメジャーだったし、海洋生物は陸じゃ役に立たないから、3体手持ちに入れてる僕みたいなのは少数派だ
せいぜいが足場と移動手段程度だが・・・今度エリシア君に頼んで大砲用の火薬とか作ってもらおうかな・・・
オニキスが殴り込んだ戦艦に到着すると既に大半はオニキスの攻撃で無力化されてた。
あとは・・・海に放り出されたドワーフ達の救助かぁ
そう考えていた矢先に強力な魔法の気配・・・上位クラスの広範囲攻撃魔法だ
恐らくドワーフ側のプレイヤーが発動させたヤツだ
「マズイな街ごと吹っ飛ばす気か?ありゃ」
「まだ海のドワーフ達を引っ張り上げるには時間が足りないんだけど」
この距離だと余波に巻き込まれそうだな。ケロたんのシールドでどこまで防げるか・・・
そう考えていたら巨人側からも強力な魔法の気配。
まさかここで広範囲攻撃の撃ち合いをする気か!?
「まじぃ!社長の≪万物分解≫だ!」
「覚醒スキルか!それを聞いてますますヤバイ!」
僕はすぐにケロたんの背中に搭載してあるプラットホームのハッチを開けて中に滑り込む。
「早く!海水を緩衝材にやり過ごすよ!」
「おう!アレは流石にマズイ!」
オニキスも戦艦から飛び降りてプラットホームに飛び乗って中に入り、僕もハッチを閉じてケロたんに指示を飛ばす
「全員急速潜航!海底まで潜るよ!」
その指示と同時に床が一気に傾き、ケロたんは海底に向かって深く潜る
その間を置かずに同時に大破壊を巻き起こす広範囲攻撃技のぶつかり合いを窓から確認した
「≪災禍顕現≫ッ!!」
「≪万物分解≫ッ!!」
海底に退避した直後にすぐ真上の海が大きく荒れた。多分、覚醒スキルがぶつかり合った余波だ。あんなのが直撃したら僕のペット達じゃひとたまりもない
「派手にやってんなぁ」
「やり過ぎだよ、流石にあのレベルの戦いに僕のペット達はついてこれないよ」
「いや、そこはマジで悪かったって」
海底でしばらく収まるのを待っているとオニキスに≪通信≫が入った。
どうやら、今回は痛み分けで互いに撤退するらしく、合流地点が指示されたらしい・・・
「ここまで来たからには、最後まで付き合ってもらうぜ?」
「これで僕が損したら、覚悟してもらうからね」
ここまで来たからにはタダでは帰らない。何かしらのリターンを得てやる!
≪城壁錬成≫
種別:生成魔法・錬成術師専用
制限:Lv11及び前提魔法≪防壁錬成≫の習得
属性:地
射程:1~20m
形状:壁
地面の鉱物を材料に防壁よりも堅牢な「城壁」を錬成する魔法。
一般的な壁を生成する魔法よりも耐久性が高く、大きさもかなり大きいため、広範囲攻撃を防ぐ事もできる。
術者はこの城壁に「銃眼」などの機能を予め設計する事もでき、即席の迎撃拠点としても使うことができる。
ただしこの魔法で生成した「壁」は建造物であり、治癒魔法や強化系魔法の対象にすることは出来ない。




