22 夢夢 Ⅲ
(ここ……は?)
意識が浮上してきたリヴィア。この感覚にも慣れてきた頃だろう。
(夢の……中……なの?)
何となくそう感じる。それが正解であると言うように可愛らしい声が聞こえてくる。
「リーーアおーーーーん」
(? ルゥ……ちゃん?)
「リヴィーーねーーん」
(うん、今……起きるよ……)
「リヴィアお姉ちゃん!」
ゆっくりと瞼を持ち上げるリヴィア。やはり、ルゥが大きな目をして、リヴィアの顔を覗き込んでいる。
「おはよう……ルゥちゃん……」
「おはようなのっ」
リヴィアはゆっくりと上半身を持ち上げる。やはり、いつもの夢の中のようだ。真っ白な空間。
「私……死んでないよね?」
意識を失う前の事を思い出すリヴィア。ダールの一撃。アレは魔王が放つ魔弾と似ていた。あんな一撃を受けて生きている訳がないのだが……。
「うんっ! 今お姉ちゃんは気を失ってるだけ! ちゃーんと生きてるなの!」
「そっ……か……」
生きていて嬉しい反面。ミロを連れて行かれてしまった事や、ダールがフェア神官のように、人が変わったようになってしまった事などが頭の中をグルグルと駆け回る。
「リヴィアお姉ちゃん……きっと目が覚めたら大丈夫になってるなの」
「ルゥちゃん……」
リヴィアはルゥが元気づけてくれていると微笑む。ルゥはその小さな手をいっぱいに上げてぴょんぴょんしている。
「リヴィアお姉ちゃん達のおかげで色んな人達が繋がったなの!」
「繋がった……?」
うん! っと身体いっぱいで頷くルゥ。
「ジハードちゃんが、あのミロちゃん達と分かり合える日は決して来なかった。それをリヴィアお姉ちゃん達が繋げてくれた。そして、魔王の封印も見つけることが出来たなのっ!」
手をギューっと握って上下に振っている。しかし、リヴィアの顔は浮かばれない。何故ならダールを止めることが出来ず、ミロは攫われ、ヤンナやムンガジは大変な状態なのだから。
いくらルゥに褒められても、リヴィアの心は晴れることがなかった。
「うん……でも、もっと上手く出来たんじゃないかって……思っちゃうな……」
せっかく過去に戻ったのにもっと良い方法があったのでは、と悔やんでしまうリヴィア。仕方のないことだろう。もう一度過去に戻りたいと思ってしまうのも無理はない。
それでもルゥは首を横に振る。
「リヴィアお姉ちゃん達は出来る事をしてくれたなの。ダールちゃんも心の闇を利用されてしまっただけなの。だから、リヴィアお姉ちゃん達のせいじゃないなの」
「うん。ありがとうルゥちゃん……」
リヴィアは寂しそうに笑顔を向ける。
「そう言えば……ミロがガーゴ夫妻も人が変わったようになったって言ってたんだけど、もしかして魔王の封印のせいなの?」
「うんきゅ! 二人共生贄を捧げる収穫人形だったなの」
「ハーペット……? どういうこと?」
ダメ元で聞いただけなのに、まさかの返答が返ってくる。興味深いワードも飛び出したので、リヴィアは食い気味にルゥへと押し迫る。
「わ、わわ! ま、まって、待ってなの、リヴィアお姉ちゃん!」
「ルゥちゃん! 知ってるなら……お願い! 教えて!」
「う、うん。あちしはリヴィアお姉ちゃんのお手伝いさんだから、これまでの説明は出来るなの!」
コクリとリヴィアは頷き、ルゥの話に注視する。
「まず、ガーゴ夫妻はあの魔王の封印の宝玉に近付いた一番初めの獣人だったなの。そこで心を支配されて、ダールのように人が変わり、封印を解くために行動するハーペットとなったなの。」
「そ、そのハーペットって何なの?」
「生贄を集めて、適合者を探し出すこと……なの」
「生贄……適合者……?」
「そうなの。あの地域の住民が居ないのは、ガーゴ夫妻が火口へと案内していたからなの」
「!? じゃ、じゃあ居なくなったんじゃなくて……」
「そう。魔王の封印の生贄にされたなの」
衝撃の事実にリヴィアは口を手で塞ぐ。同じだ……クラーゲン王国でのフェア神官が取った行動に。
「そして、ミロちゃん達を餌に、ジハードちゃんを襲わせて、遅れてきたダールちゃんに復讐心を宿らせようとしたなの」
「でも、ジハードちゃんが襲ったのはガーゴ夫妻だけ……」
コクリと頷くルゥ。
「ジハードちゃんはガーゴ夫妻の企みを止めるために襲ったなの。おかげでガーゴ村の人々は無事に帰ることが出来たなの」
「そ、それじゃあダールはたまたまそれを見てしまって……」
「ガーゴ夫妻の思惑とは違いはしたけど、適合者としての種はダールちゃんに宿ってしまったなの」
「そ、その適合者っていうのは何なのっ!?」
「適合者は宿主のことなの。魔王の身体の一部が乗り移るための……」
「! ……じゃあ、もうダールは……」
俯きながら頷く。それは既にダールが元には戻れない事。そして倒すべき相手となってしまった事を意味していた。
「そ、そんな……ゃ、やよっ! ダールを殺すなんて私には出来ないわっ!」
「大丈夫……その役目ならもう終わってるなの」
ルゥは静かに言葉を発する。その声は寂しげで儚く、聞く者の心にチクリと刺すような声だった。
「お、終わってる……? ど、どういうこと?」
「もぅ目を覚ます時間なの……リヴィアお姉ちゃん、頑張ってなの」
スーッとルゥの身体が離れていく。何が何だか分からずリヴィアは追いかける。必死に手を伸ばしてルゥを懸命に追いかける。
「ちょ、ちょっと待って! どういう事!? 何が終わってるのっ!」
だが、ルゥには決して追いつけず、どんどん距離が離されていく。リヴィアは必死に叫ぶ「待ってぇぇぇ!」、だが最後に聞こえたルゥが発した言葉は「許してあげて……」だけだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回目を覚ましたリヴィア達に新たな困難が立ちはだかる
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