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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
75/216

21 復讐の鬼

「あ、あれが本当にダールなのか……」

「悪魔……」


 ヤンナもムンガジがその恐ろしい姿に身体が震えている。


「彼は恐らく封印の悪魔に取り憑かれているようデス」


 分析するように緑の生体兵器が言う。


「ダール……ダールっ!」

「ダメよ近付いちゃ!」


 我慢できず走り出そうとするミロを止めるニコレット。


「だって……だってダールがっ!」

「彼は今普通じゃないっ、近付けば襲われてしまうわっ!」

「ダール……うぅぅぅ」


 ミロは泣き崩れるようにその場へ座り込む。ニコレットがミロを抱きしめるようにして抱える。ニコレットの表情は暗い。何も出来ない自分が悔しいのだろう。唇を強く噛んで、ただただミロを抱きしめる。


 ニコレットは顔を持ち上げダールを見つめる。その禍々しいオーラがダールを包み込み、飲み込もうとしていた。


 そんな状態のダールに、光る拳が突き刺さる。


「獣拳 熊殺(ベア・ナックル)

「ぐぼはぁぁっ」


 キアラだった。黄色いオーラに包まれた拳が、ダールの腹部を直撃する。


「もう、許さないよっ! ヴァルの兄ちゃんもジハードちゃんも虐める人なんて大っ嫌いっ!」

「キアラちゃんっ!」


 強い眼差しでキアラがダールを睨みつけている。リヴィアはヴァルを引きずるように、ニコレット達の方へ向かっていたが、キアラの行動に驚き、叫ぶ。


「ぐふぅ、こ、このチビがァァ!」


 腹部に走る鈍痛に耐えながらも、ダールがその鋭い爪でキアラに襲いかかる。キアラは落ち着いた様子で、ダールの動きを見極める。


「獣拳 豹牙(パンサー・ヴァイト)


 黒いオーラに包まれた両腕を、飛び切ってくるダールの腕に当てて攻撃を防ぐと同時に、懐へと潜り込んで喉元へ強烈な一撃を加える。


「こ、こほぁあ」


 喉を潰されたダールは呼吸が出来ず、後ろに後退する。キアラはその動きを見逃さず、さらに距離を詰めて腹部へと強烈な乱打を叩き込む。


「ウワァァァァァアア」

「ごほっ、がはっ、ぐふぅ」


 拳を叩きつける度にダールの身体が衝撃で跳ねる。ミシ、メキャという音と共に、口からは肺の空気を強制的に押し出されて、涎と共に血を吐き出している。

 キアラは乱打を繰り出した後、一歩後退して背中を向けるとトドメの一撃を放つ。


「獣拳 烈馬(バースト・ホース)


 赤く輝く脚で強烈な後ろ蹴りをダールに浴びせた。


「ぶはァァァァあ」


 ドッォン


 ダンプカーに轢かれたように大きく吹き飛び、壁にぶち当たるダール。ズルズルと壁を背に、その場へ崩れた。


 まさに怒涛の連撃だったキアラ。息を切らせつつ、ダールを見ている。同じく、キアラの戦闘を目の当たりにして驚愕するニコレットと緑の生体兵器は言葉にならないのか固まっている。


「だ、ダールゥゥウ!」

「ダールっ!」

「ミロ、ヤンナ」


 ミロ達獣人三人は崩れたダールへと走っていく。ニコレット達の元へやっと辿り着いたリヴィアがニコレット達に声を掛ける。


「さすがキアラちゃん! ナーゴ族の戦士は強いねっ!」


 っとキアラの戦いに賛辞を送っている。しかし、ニコレットも緑の生体兵器も、リヴィアの言葉に食いつく。


「な、ナーゴですって!?」

「ナーゴといえば、アノ虐殺されたという亜人戦闘民族のナーゴ族の事デスかっ!」

「え? う、うん、そう聞いたけど……」


 二人の驚きように、逆に驚くリヴィア。


「ナーゴ族の……生き残り……」


 ニコレットが驚きを隠せないといった表情でキアラを見つめる。前に目にしたキアラの動きは確かに目を見張るものであったが、ナーゴと聞いて顔色が悪くなる。


 すると、ジハードが意識を取り戻したのか、崩れた壁から起き上がってくる。


 グオオオッ


「あっ! ジハードちゃん! 良かったァァァ!」


 キアラがジハードの元へと走っていく。ジハードはキアラが抱きついて来るので大丈夫だよと言うようにクルルッと可愛く鳴く。

 しかし、次の瞬間には顔を持ち上げてダールへと鋭い視線を向ける。


 グルルル……


 明らかに警戒しているジハード。キアラがどうしたのかと思っていたその時。


「キャァァアアア!」


 ミロの悲鳴が響き渡る。リヴィア達もその悲鳴に顔を向けて顔を青ざめさせる。


「ウゴくんジャねぇっ!」

「おいっ! ダール! 何やってんだよっ!」

「ダール、やめろっ!」


 見るとそこにはミロを片腕で抱きしめるようにし、もう片方の手の爪でミロの顔を傷つけるように構えているダールがいた。ヤンナとムンガジが説得するように喋りかけるが、ダールはまるで錯乱状態のように声を荒らげるだけであった。


「チカづくんじゃネェ! オレはウバウんだっ! 全てをウバウんだっ!」

「やめろ、ダール! ミロが分からねぇのかっ! お前の幼なじみじゃねぇかっ!」

「ダール、目を覚ますっ!」


 必死の説得もダールにはもはや届いていなかった。リヴィア達も急いで駆け寄るが、近付き過ぎるとミロの身が危ない。


「だ、ダール……」


 ミロは大粒の涙を流しながらダールの名を呼ぶ。ミロやヤンナ達の声がダールの意識に干渉する。


「ヤメロォ、オレは……オレはぁぁぁぁあ!」


 頭を抱えるようにダールが後ろへよろめく。その隙を突いてヤンナが槍を腕に突き刺す。


「ハァァァアッ!」

「ッガア!」


 そしてムンガジがミロを抱えている腕に巨大な棍棒を殴りつけてミロを救う。


「ヤンナ! ムンガジ!」

「こっち、こっち!」


 ミロを逃がそうとムンガジが手を引く。しかし、ダールは槍の刺さった腕を振り回してヤンナを壁に叩きつける。


「ぐるぁぁあっ!」

「う、うわぁぁあ!」


 ドガン


「ぐふぅ」


 ヤンナは血反吐を吐いて崩れる。


「ヤンナァァア!」

「ミロっ!」


 ミロがヤンナに気を取られた隙に、ダールはその巨大な爪を振りかざす。しかし、ムンガジが盾となってミロを庇う。


 ズバッ


 あまりにも強烈な一撃で切り裂かれ、ヤンナ同様ムンガジも壁に叩きつけられる。


 グシャ……


「そ、そんな……なんで、なんでよダールっ! 貴方の大切なお兄ちゃん達だったじゃないっ! お願いっ! もうやめてっ!」


 ミロは紫色の瞳をしたダールへ叫ぶ。しかし、既にダールの意識はなかった。そこには悪魔が宿っていたのだから。


「コぉいっ!」

「いゃ! やめてっ! ダール! ダールっ!」


 ダールはその大きな手でミロの身体を掴むと、強烈な咆哮を上げる。


 ボァァァァァア!


 ビリビリと地面や壁が揺れる程の咆哮。リヴィア達は堪らず耳を塞ぐ。ジハードやキアラも咆哮に驚きその場から動けない。頭が砕けそうな咆哮に苦悶の表情となるリヴィア達。


 そして咆哮が止み、ダールが居た場所に目を向けるリヴィア達だが、そこには倒れたヤンナとムンガジしか居なかった。どこへ? と辺りを見回すリヴィア達。


 すると背中に氷が滑り落ちるような悪寒を感じて上を見上げる。そこには紫色のオーラで形作られた翼を生やしたダールが居た。そしてその口からは超巨大な紫色のエネルギーが溜め込まれていた。


「ま、まさかっ!」


 リヴィア達がそう思った次の瞬間には、その超巨大なエネルギー弾が火口から降り注がれる。ジハードが盾になろうとエネルギー弾の前に割って入るが、あまりに強烈な光に辺りを包みこまれ、衝撃と共にリヴィア達は意識を失ったのだった。



最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回急展開を迎えるリヴィア達、どうなるのか


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