13 男の子は胸アツが好き
「それで? ヤン兄、今日はどこに行くんだ?」
「そうだなぁ……」
「湖の方には行かねェのか? どうせ行くんなら下見がしてェ所なんだがな?」
ヴァルが提案する。
「だがなぁ……」
そう来たか、と重く渋い表情になるヤンナ。ヴァルが何をするのか薄々感じつつも、今まで踏み込めなかった場所に行くのは無謀だと思っていた。しかし。
「……行こうぜ、ヤン兄」
「! ダール……」
ダールの言葉に驚くヤンナだった。ダールにとってはトラウマの場所であり、復讐の始まりである場所。
「いつかは克服するんだ。それが今だっていいじゃないか」
笑顔でダールは言う。ヤンナは、変わろうとしているダールに身体の中から熱いものを感じる。
「ふん、言うようになったじゃねぇか。……ようし、行くぜムンガジ、ダール、ヴァルのダンナっ」
「任せろ」
ダール達に背を向けるヤンナ。その背中は少し震えているようだ。こんな時に相方のムンガジがいてくれて心強いと思うヤンナ。口数が少ないが、必要な時には必ず声を掛けてくれる頼もしいパートナーだった。
「いいか? ヴァルさん、レッドに気付かれたらおしまいだ。慎重に行くぜ?」
「あァ任せな。隠密行動は得意なんだぜ? それと、別にヴァルでいいぜ? ダール」
「ああ、分かったぜ、ヴァル」
二人は意気投合し、腕と腕を軽く当てると、湖目指して進むのであった。
密林の中を進む男達。先頭からヤンナ、ダール、ヴァル、ムンガジの順で一列に進んでいく。鬱蒼と繁る草木が行く手を阻むので、一列になるしかないのだった。
「もうすぐ、湖が見えるぞ、注意しろ」
先頭のヤンナが小さめの声でそう言った。ダールの身体に力が入る。あれ以来足を踏み入れなかった場所に向かうのだから仕方がない。
するとーーーー。
「力を抜けよダール。そんなんじゃァ、この先が思いやられるぜェ?」
ヴァルがダールの肩に手を置きつつ、そんな言葉を投げかけた。
「! そうだな、ありがとうヴァル」
肩越しにヴァルを見つつ、ダールが笑顔を見せた。いいってことよっというように、トントンと肩を叩くヴァル。そんな二人を見てヤンナもムンガジも自然と笑顔になった。
しばらくすると湖が見える場所までやってくる。
「着いたな、例の場所はここから東に向かって湖をグルッとした場所だ」
「おぅけェ、んじゃとっとと行こうャ」
四人は慎重に東へと進んでいく。かなり進んだ所でヤンナがアレだというように、無言で合図を送る。ヴァルはヤンナの指し示す方に視線を向けると、そこには輪っかのような小さな島のようなものが見えた。
「ありャ……火山のてっぺんか?」
そう、そこには昔に沈んだはずの火山の火口が、水面ギリギリに出ていたのであった。
「俺達はガーゴさん達に連れられてあそこへ向かったんだ。そしたらレッドの野郎が現れて……」
「……」
ヤンナが苦しそうな表情で説明する。ダールも下を向き、震えているようだった。
「あそこにャあ、ヤツの守る何かがあるって事か……」
顎髭を弄りつつ、ヴァルが考えている。すると、どこからともなくレッドの咆哮が聞こえてくる。
「! これ以上は不味いな、一旦戻るぜ」
「くっ……分かりました」
「……」
ヤンナが素早く指示を出す。ダールは悔しそうに火口を睨んでいるが、ヤンナの指示に従った。そんなダールを見つめつつ、ヴァルも一緒に元来た道を戻るのであった。
湖から大分離れてやっと緊張が解けた四人。
「ここまで来りゃ安全だ」
「ふぅ……」
「……」
息を付く三人。しかし、ダールの表情はまだ固いままだった。
「ダール、落ち着く」
「! わ、悪い、ムン兄」
ムンガジがダールの腰に手を添えて落ち着かせる。
「さァて、どうすっかな。あんな湖のど真ん中だなんて聞いてねェぞ?」
「あぁ。俺達も連れてこられた時はびっくりしたな。だが、ガーゴさん達が行くもんだから、仕方なくついてったんだ」
「ふぅ〜ん、あそこにャあ、そう迄しても手に入れたいものがある……か」
ヤンナとヴァルが考えるが、想像もつかなかった。
「……よし、下見はしたんだ、狩りをしてとっとと村に戻ろうぜ」
「そうだ……な。行こう」
こういう時、兄貴肌のヤンナが頼もしい。暗い空気もスパっと切り替えてくれるのだから。こうしてヴァル達は狩りをして村へと戻っていくのであった。
補足だが、ヴァルはこの狩りについて行ったことに後悔する。美味しく食べていたものの原料を知ってしまったから……。
狩りが終わって村へと帰る途中、ヴァルはダールに声をかける。
「よォ、吹っ切れたかィ?」
「……どうだろうな。今のままじゃアイツには勝てないからな」
「だろうな。だが、恨んでる、憎んでるってだけじャあ、奴は倒せない」
「……」
「お前に必要なのは切っ掛けさ」
「切っ掛け……?」
「そうだ。覚悟を決める。そんな切っ掛けがな」
そう言って、また肩をトントンと叩いて先に行くヴァル。ダールはヴァルに言われた言葉を頭で考えつつ、そうかもな……っと漏らし、村へと帰って行くのであった。
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こちらはヴァル達が湖の偵察に向かう少し前ーーーー。
「アノォォ、これは一体……?」
「んんー? なぁに?」
グルルッ?
「ァ、ィエ。な、なんでこんな事になっているのかなぁ〜なんて」
「んんー?」
今、緑ヘイキ危機一髪状態でジハードの背に乗って飛んでいるキアラ達。文字通り油汗が出ている。
「ジハードちゃんがお気に入りの場所に連れてってくれるんだってさ」
「ジハード……ちゃんっ?」
グルオオ?
「ヒィ、ヒィイ!」
言葉は通じないが、何かカンに障ったのだろうと直感センサーが反応する。
「この娘はジハードちゃんだよ? キアラとお友達になったの!」
「とも……だち?」
「うんっ!」
グオオオッ♪
ドラゴンの鳴き声的に友好的であると判断出来る油まみれのロボット。
「ハ、ハァ……?」
「変な人だって、ジハードちゃんが見つけてくれたから助かったんだからね?」
グオン
「ソ、ソウデシタカ。それはどうもありがとうございます」
「ねぇねぇ、お姉ちゃん達は? 探してるんだけど見つからなくて……」
「ソウデスネ、この時代の方々に救われているので無事ではありますよ」
「ホント? 良かったぁ〜!」
リヴィア達は無事である事を知り、両手を上げて喜ぶキアラ。
ガオオオン、ガオン
「うんっ! ありがとうジハードちゃん!」
「モ、モウ何がなにやら……」
あまり状況が掴めない緑油は、喜びあっている一人と一匹に連れられて湖へと向かうのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
男の子はね、何も言わなくてもわかるのがすごいよね。
なんとなーく、本能で伝わる何かがあるんでしょうね!
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