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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
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10 理不尽の権化

「何よっ! さっきから謝ってるじゃない! しつっこい男ねェ、そんなんだからアンタはダメな男、ダメールって呼ばれてるのよっ!」

「んなっ! そ、それが本当に謝る態度なのかよっ!」

「悪いの? 大体ねぇ、アンタが普段から真面目に働いてればこんな勘違い、この私がする訳なかったのよ! アンタこそ反省したらどうなのよっ!」

「うぐっ……」


 何故だろう。ミロが胸の前で腕を組んで堂々とした態度でダールを叱っている。ダールは今回何も悪くないのに、理不尽だっという目で必死に訴えているが、その姿はもはや仔犬のように怯えている。


 ダールは灰色と黒の混じった犬の様な獣人であり、黒い瞳が可哀想なほどウルウルしていた。さらにふさふさの尻尾が怯えるように下向きに強ばっていて、ミロには楯突けないと調教済みのご様子だ。


 居た堪れないダールの姿に、あれ? この光景どこかで……と思うリヴィアでさえ、酷く同情してしまう。まぁリヴィアの場合は暴力という理不尽の塊だったので、口だけで負かすミロの方がまだマシだったかもしれない。


「あっちは放っといて、こっちは楽しみましょうや! ほら、これなんか美味しいんだぜ?」


 っとヤンナが空気を変えようと、こんがりと焼かれた肉を配っていく。


「あ、ありがとう。……んんっ、美味しいっ!」

「だろぉ? こりゃ、あそこのミロ姐さんが作った料理なんだ」


 リヴィアは口いっぱいに広がる濃厚な肉の味わいに、これまでの空腹が吹き飛ぶ。


「んんっ!? これも美味しいわね」

「おっ! さすがだね、そりゃミロ姐さんの自信作さぁ。こいつもかけるともっと美味いんだぜ?」


 そう言ってヤンナが黄色いトロっとした液体を、ニコレットの食べているふわっふわのパンのようなものにかける。それが余程美味しかったのか、ニコレットが笑顔でんんん〜! と色っぽい声で唸りながら上品に頬張っている。


「んぐっ、んぐっ……ぷはぁぁ〜! こいつァいいっ! 喉にガツンと来るじゃねェか!」

「ハッハー、兄さんイケる口じゃねぇか! そりゃこの村でも一番キツいやつよっ」


 オレンジ色にシュワシュワしている飲み物を、ゴクゴクと飲むヴァルを見て、ヤンナが飲み仲間を見つけたように喜んでいる。


 まだまだケンカ……いや、裁判中のミロ達。被告人ダールはついに両手を地面に付けて戦意が喪失しているようだ。真上からスポットライトを浴びているように見え、それが余計に哀れさを醸し出している。


 そんな事は気にしていないというようにムンガジは黙々と野菜を頬張っていた。


 そこでリヴィアが気になった事をいくつか聞いてみた。


「久々の客人って言ってたけど、そんなに珍しいの?」

「んん? そうだな、かれこれ五年は見てねぇな」

「そんなに?」


 ニコレットが驚き、その姿を見てリヴィアもふむふむと頷く。


「まぁもともとあのレッドの化け物が近くにいるからな、ここら辺の村はみんなどっかへ行っちまったよ」

「そうなのねぇ……それで、そのレッドって何なのかしら?」

「さぁな、俺達が生まれた時にはいたし、特に襲ってきたりもしねぇんだが、村には奴には近づくなって掟があるくらいだな」

「そうなのねぇ」


 グイッと一気にグラスに入った液体を飲み込むヤンナ。すると、判決が下されたのか、ミロがこちらにやってくる。


「まぁ実際、あんなデカい生き物が近くにいるんですもの、みんな怖がってしまうのも仕方ないわよ」

「確かにね……」


 チラッとミロの後ろに視線を向けると、まるで殺人事件でもあったかのように、死体が遺棄(いき)されている。よぉぉく見ると早く浅く呼吸をしているので、恐らく死んではいない。今は。


「他には何かないの? あっ! そうだ、何かを封印してるとか、不思議なペンダントとか見たことない?」

「封印?……ペンダント?」


 んんーっと言うように、耳を折り曲げながら考えるミロ。ヤンナやムンガジも天井を見上げながら一緒に考える。

 そこで何かを思い出したように、ミロが手を叩き、あまり周りに聞こえないように近付いて小声で喋る。


「あんまりいい話ではないのだけど、あのレッドが一度だけ村の人を襲ったことがあるの」

「姐さん、そりゃ……」


 ヤンナが気まずそうに声を出す。しかし、ミロは軽く首を横に振り、話し続ける意思を伝える。


「でね、その場所がレッドの住む湖のある場所だったのよ」

「ある場所?」

「うん。普段は襲ったりしてきたことなんてなかったから、その時はみんな驚いたらしいんだけど、その場所以外では襲われないのよ」

「つまり……そこに守る何かがある……って言うこと?」


 コクリと頷くミロ。すると後から声がする。


「そん時に襲われたのが俺の両親さ」

「だ、ダール」


 俯き加減に拳を震わせるダールがそこに立っていた。


「……俺は、アイツを許さないっ! 絶対に!」

「あっ、ダール! 待って!」


 それだけ言うとダールは部屋を出て行った。走っていくダールに手を伸ばしたまま、ミロは追いかけることが出来ず、その場で落ち込んでしまう。


「姐さん。やっぱりまだ早ぇんじゃねぇか?」

「うん……ごめんなさい」


 ヤンナが落ち込むミロの肩に手を差し出す。ミロも大きな耳を垂らして悲しそうに地面を見つめる。


「ダールは強い。だから、平気」

「うん、ありがとう。ヤンナ、ムンガジ」


 あまり喋らないムンガジもミロを元気づける。ミロはよおしっというように、気合を入れ直してリヴィア達に振り返る。


「ごめんなさいね、ダールは今でも両親の仇であるレッドを憎んでいるの。だから、貴方達がレッドの守る何かを見つけることが出来たら、ここから居なくなるかもと思ったのだけど……」


 どうやらダールの事を想っての行動だったようだと理解するリヴィア。


「おいおィ、いくら何でもあんな化け物相手に俺たちだけで何とか出来るわけねェじゃねぇか」

「うん、それは分かってる。でも、私達だけでもどうにもならないの。だったら一緒に手を組んで……」

「却下だ! こっちだって人探し中なんだ、余計な事に首突っ込んでる暇はねェよ」


 ヴァルが手をヒラヒラさせながら断る。しかし、リヴィアは何とかしてあげたいと思ってしまう。今はそんな時ではないと分かりつつも、目の前で困っている人を無視することを心が許さないのだ。


(どうにか……力になってあげたい……でも)


 ヴァルの言う通り、今はキアラが居ない。それにレッドも居ないのだ。こんな状態で人助けなんて出来ない。しかし、そこへニコレットが手を差し伸べる。


「じゃあこういうのはどうかしら? 私達は今はぐれた仲間を探しているの。それがあの湖だから、仲間を探しつつその場所へ向かい、何も無ければ良し、襲われるようなら協力して逃げるって言うのは?」


 ヴァルの言葉に落ち込んでいたミロ達がニコレットの提案で目を輝かせる。


「お、おいッ、そんなことやってる場合じゃ……」

「お願いっヴァル! 私もミロさん達になんかしてあげたいの! 命を救われたんだもの、恩返しだと思ってお願いっ!」


 両手を合わせてお願い事をするリヴィア。昔のリヴィアだったらきっと、「いいじゃないの、やらせなさいよっ」と上から目線だったであろう。成長したものだ。多分。


「それに土地勘がない私達では仲間探しどころか、迷子になってお陀仏(だぶつ)よ?」


 ニコレットの鋭い意見にヴァルも渋々了承する。


「……ったく、勝手にしろィ。その代わりもっと飲みもんだっ!」


 空になったグラスをやけくそ気味に高く伸ばすヴァル。その姿にミロ達は笑顔になる。


「へへっ、任せときなダンナっ!」

「よぉーし、それじゃあ私ももっと料理作ってくるわっ!」

「仲間、嬉しい」


 そうしてリヴィア達とミロ達は手を組んで仲間を探しつつ、レッドの守る何かを探りに行くことに決まったのだった。



 え? 誰か忘れていないかって? まっさかぁ! アハハ……。




最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

幼馴染系お姉ちゃんが通りますよ~っと。文句ある?


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