8 スレ違い
「キアラー、キアラー?」
「ダメね、近くに居ないって事はまだ湖に……」
「チッ……あんな化け物のいる湖にまた行くっつぅのかよ?」
リヴィア達は来た道を戻りつつ、キアラが近くに居ないか呼びながら湖へと向かっていた。
「キアラなら大丈夫よっ! あんな生き物、倒してるかもしれないよっ!」
「ドラゴンだっつーの、さすがにあのサイズはやべェだろっ」
リヴィアがヴァルに食ってかかるが、ヴァルは平気そうな表情で歩く。
「早くしないと日が沈むわ。夜になってしまったら危険よ」
「わーった、わーったよ。行きゃァいいんだろ? 行きゃァ」
ニコレットに詰め寄られて、流石にヴァルも観念する。
「ァ、アノ……」
「早く行きましょう! キアラも私達を探してるかもしれないわっ!」
「アノッ!」
「そうね、まずは固まって向かいましょう? でないと迷子になってしまうわ」
「デ、デスカラ……」
「ったくよォ、あんな化け物と戦うのだけは勘弁だぜェ?」
先程まで木にめり込んでいた緑のメリ子は上を見ながらあたふたとしている。他の三人はキアラの事で頭が一杯で声というか、存在そのものを認識出来ないでいる。
すると、急に辺りが暗くなる。というよりも、大きな影がリヴィア達を包み込む。何だろう? と三人が上を向くと。
グオオオッ!
「「「ギィイヤァァァァア!」」」
大空を舞う竜。それは決して速い訳では無いが、その大きさと優雅さが絶対の存在感であった。
間違いなく狙いがリヴィア達であることは明白であり、猛ダッシュで密林を駆け抜ける。
「な、なんで? なんで? なんでぇ!」
「いゃァァああん、魔法が使えないから無理よぉぉぉ!」
「ちっきしょぉぉう、だから嫌だったんだ俺ァァア!」
「皆サン、私の言葉に反応してくれないから……」
密林内を叫びながら爆走するリヴィア達。約一体が元気というか、自信を無くしているがいつか取り戻せるだろう。
さすがに空と言えど、森が遮るので見失うジハード。
グオオ。ガオガオン
「もう~、ジハードちゃんが最初に驚かせたからだよぉ?」
ジハードの頭の上で、人差し指を立てながらメッというポーズを取るキアラ。ジハードも面目ない、という表情でキアラに謝りつつ、空からリヴィア達を探すのだった。
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「はぁ、はぁ、また全力で走っちゃったわね……」
「はぁ、はぁ、仕方……はぁ、はぁ、ないわよ」
「クソがァ、はぁ、はぁ、もう動けねぇぞ? はぁ、はぁ」
三人とも息を切らせて地面にへたり込む。
「皆サン、あまり空気を吸いすぎると身体によくありませんよ? コレを飲んで二酸化炭素を中和して下さい」
そう言われて三人はイェモン(仮)の濃縮液を口にしてスッパァァァァアイしている。
「ところでここはどの辺なの?」
「どこも同じようなものだから、迷ってしまうわね」
「どうせ、そこのォ……あぁっと、緑の奴が教えてくれるだろ?」
「仕方ナイですネ。ですが私は緑の奴ではありません。私の名前は……」
ガオオオオオオン
竜の咆哮に三人とも素早く木の陰に身を隠す。
「チッ、まだ探してやがらァ、とっとと移動しようやーーーーッ!」
そう言って、歩き出すヴァルだったが、突然の殺気に素早く反応して後方へ飛び退く。
ザシュッ
ヴァルの居た場所に素早く鋭い何かが地面を抉る。
「な、何っ?」
「こりャあ、ちょいと不味いかもなァ」
リヴィアとニコレットも立ち上がって抉れた地面を見つめる。すると、ヴァルが向かおうとしていた茂みから、ガサガサッと得体の知れない生物が姿を現せる。
「フム、どうやら以前の昆虫よりも厄介かもしれませんネ」
「見た目はまだいいけど、なんて言うか極悪そうな姿ね」
緑の落ち込み気味のロボットとニコレットが分析する。
リヴィア達の目の前に現れたのは、見た目は大型のサソリだった。前足のハサミが太く鋭い。普通の木の幹であれば簡単に切れてしまいそうである。さらに身体と同じサイズの尻尾は二つあり、明らかに身体のバランスがおかしい。全体的に見ると、ハサミと尻尾が大き過ぎる。
しかし、そんな身体でも支えられるようにと強力な脚が全部で十本も付いている。さらには身体全体が黄色い甲殻に覆われているようで、嫌な光沢を放っている。
「それよりもよォ、コイツ攻撃してきたって事はよォ」
「……見えてるわね、私達のこと」
「そ、そんなっ、どうしよう? 逃げる?」
ガサガサ……ガサガサ……
リヴィア達を囲むように追加で三匹現れる。後ろは大きな木が邪魔して動けない。
「まぢかよ、コイツら連携してやがるのかァ?」
「仕方アリマセンネ、ここは私が片付けを……」
そう言って緑の鎧が見せ場を作るように、タイミング良く前に出ようとしたその時。
「エイヤァァアアッ!!」
ザシュッ
! ギギッ!
「オリャアアア!」
ボゴンッ
「ンナッ!?」
見せ場を奪われ驚愕する緑のロボット。急に現れ、二人の戦士風な人物が巨大な槍と棍棒で一匹のサソリモドキを襲う。動きを封じられるサソリモドキに他の三匹が怯む。
「こっちだっ! 急げっ!」
「「「!」」」
三人目の戦士風な人物がリヴィア達を呼ぶ。それに何とか反応して逃げ出すことで難を逃れることに成功するリヴィア達。走りながら目の前の戦士に礼を言う。
「ありがとう! お陰で助かりました!」
「まだだっ! まだ空にはレッドがいるっ!」
(レッド? あぁ、あの赤い竜の事か)
「あのドラゴン……いえ、レッドは一体何なのかしら?」
ニコレットが質問する。
「あんたら知らないのかい? ありゃここら一帯を火の海に変えた化け物なんだよっ!」
「ひ、火の海に?」
「ああ、そうさ! もう大昔の話だが、奴はその時のまんまの姿で今も生きていやがる」
憎悪に塗れるような表情で空を睨む戦士。
「普段は大人しく湖で寝てるが、誰かが起こしやがったんだな?」
ギクリと三人は心の中で思う。
「アァ、ソレでしたら……ーーーーグホアッ!」
「ん? あれ? アンタら一人足りなくねぇか?」
リヴィアが慌てて残心を解いて、口元に手を当てながら上品にカラ笑いをする。
「オホホホ、あら、そうだったかしら? オホホホ」
ニコレットとヴァルが走りながら両手を揃えて黙祷している。一本の木にめり込む、緑の余計な奴への手向けとして。
「? まぁいいか、とりあえずここを離れるぞ! まだここは奴らの縄張りだからな」
「奴らってさっきの黄色い生き物のこと?」
「ああ、レッドを知らないって事は、ここらの奴じゃないんだもんな。アイツらはヤゴリっていう凶暴な奴らだ。アンタらをたまたま見掛けてこっちに向かうもんだから、止めようと思って追いかけてきたんだ」
「そ、そうだったの。ごめんね、迷惑掛けちゃって……」
「別にいいさ。無事で何よりだ!」
そう言って密林をすいすい走っていく戦士は笑顔を見せる。
後からでは分からなかったが、その顔は短い毛で覆われ、亜人というよりもより獣に近い獣人であった。
「まぁそれよりこれから夜になっちまう。泊まる場所がなければ俺達の村に来いよ!」
「え、ええ。ぜひお願いするわ……」
初めて見る獣人に驚くリヴィアだったが、獣人の戦士はいい笑顔でこっちこっちと案内してくれた。ニコレットもヴァルも見た事の無い種族に驚きつつも、ここが過去の世界なのだから亜人の祖先なのかもと予想していた。
そうして空が暗くなる所で獣人の戦士の村へと到着する。
「着いたぜ! ここが俺達の村、ガーゴ村だ」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回リヴィア動物園にゆく! お楽しみに! (嘘です)
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