7 伝説の生き物
翌日、日が一番高くなる前にリヴィア達は湖へと辿り着いた。それはかなり大きく綺麗な湖であった。対岸までがかなりの距離があり、向こう側へ行くのも一苦労だろう。
ただ、不思議な事に湖の周りが黒っぽい岩だらけでゴツゴツした地形となっていた。
「随分変わった地形ね。密林の中の湖ってこういうものなの?」
川なら見た事のあるリヴィアだったが、初めて見る湖とその周りの地形に興味津々で見ている。
「流石にこれは……この岩、この臭い……」
ニコレットが思い詰めるように考えている。
「ニコレット殿の予想通りカモしれません。」
「? どういうこと?」
データ収集が趣味の変な人が答えて、リヴィアが不思議に思い尋ねる。
「コノ湖は恐らく地面が陥没した事によって生まれた湖のようです。岩の含有物や周囲に立ち込めるこの臭いは火山などに見られる特徴と一致します」
「あァ? 火山だァ? こんな平地にどうして火山があるんだ?」
ヴァルが呆れたように質問する。
「陥没って事はこの真下に巨大なマグマ溜りがあったってことよね?」
「ソウ予想します。コノ規模の湖と所々にある大岩からかなりの確率でこの仮説は正しいと思ってイマス」
既にチンプンカンプンなリヴィア。
「つまりここは火山があって、大地が沈んで出来た湖っつーことか?」
「ソノよーデス」
「流石太古の時代だなッ、 規模が馬鹿げてやがるぜ」
ヴァルがうんざりといった感じで言う。
ここはいわゆる陥没カルデラ湖というものらしい。そもそもここには火山があったが、地下深くに溜まったマグマに、何らかの原因で空洞が出来たため、表層部分ごと地下に陥没して出来た場所に水が溜まって湖となったようだ。
「ふぅん? でも危険はないんでしょ?」
「水質が気になる所ね。後は陥没して出来た場所だから、周辺は崖崩れしたようになっていて深いから気をつけるのよ?」
「ふむふむ! じゃあ泳げるって事だねっ!」
せっかくニコレットが注意しているのに、キアラは駆け出して湖に勢い良く飛び込んだ。
「あっ! もぅあの子ったら……」
「ったく、これだからガキは……」
「アハハ……」
キアラがいなければリヴィアが飛び込んでいたに違いない。すると飛び込んだキアラがぷはっと水面から顔を出す。
「きぃもちぃよぉ! ほらぁ! お姉ちゃん達も入りなよぉ!」
笑顔で手を振るキアラ。確かにここに来てからというもの、水浴びもしていないので、そろそろ入りたいと思っていたリヴィアとニコレット。
「仕方ないわねぇ」
「よォし、私も入っちゃうぞぉ!」
あえて仕方ない風な雰囲気で向かうニコレットに、誘われたから行っちゃいます! 的なリヴィア。ヴァルも緑べこも何だかんだで湖に近付いて行くがーーーー。
ズォォォォ……
「ほぇ?」
キアラの泳いでいる後ろから何やら水面が盛り上がっていく。やがて大きな影がキアラだけでなく、湖の傍に来ていたリヴィア達をも覆う。
あまりの出来事に全員が固まり、やがて水が全て落ちた所でその姿を目にする。
グアォォォオッ!
一匹の竜だった。
「「「「…………!!!」」」」
「わぁぁあ」
波に押し寄せられて溺れかけながらもキアラが泳ぎ続ける。三人と一体は見上げたまま、現実を受け入れたくないと首を横に振っている。いや、ないないないっ! っと。
真っ赤な鱗に包まれた竜は大きな翼を広げる。弾く水が綺麗な虹をかける。巨大な顎と鼻先に角があり、爬虫類のような目がぎょろぎょろと動いている。胸の辺りまで水面に入っているので、水から出るとかなりの大きさになる事が分かる。
そしてリヴィア達に気付いたのか、ギロッと目を向ける。ヒィッと小さく悲鳴を上げるリヴィアとニコレット。そして、大きな顎を開き、巨大な牙と歯を見せながら竜は咆哮をあげる。
グオァァァァァァァアッ!
その勢いと爆音は三人と一体を簡単に吹き飛ばす。
「「きゃぁぁぁぁっ」」
「ぐおあああっ」
「異常事態、非常事態」
転げるようにリヴィア達は密林へと逃げる。脱兎の如く駆け抜ける。
「な、何なのよあれぇ!」
「ど、ドラゴン!? アレはドラゴンなのっ!?」
「知るかよォ! それよりも走れ走れっ! 食われっちまうぞォ!」
「緊急避難、緊急避難」
美しいフォームで駆け抜けるリヴィア達。緑べこはビービーッと電子音を鳴らしながら走る。遠くの方ではまだ竜が咆哮を上げている。
高速で駆け抜けるリヴィア達は何とか湖から距離を取ることが出来た。息を乱し、手を膝について呼吸を整える。
「はぁ、はぁ、も、もう大丈夫かしら?」
「はぁ、はぁ、追っかけてくる様子はねェなァ」
「だ、だけど……はぁ、はぁ、これじゃ湖に近付けないわね」
木に手をついて呼吸を整えるヴァルとニコレット。しかし、ある事に気付く。
「……待って。キアラちゃんはっ!?」
「!」
「アイツ……まさか」
湖で泳いでいたキアラを置いてきてしまった事に気付くリヴィア達。
「一応溺れないように泳いでいましたノデ、生きているとは思いますよ」
「気付いてたなら……言いなさいよっ!」
リヴィアは落ち着いて話す緑べこの腹部を、的確に捉える正拳突きを放つ。うごごごごご……と後方にくの字にぶっ飛んで木にめり込む。
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「ほぇぇぇえ」
キアラは水面に漂う哀れな猫のように、竜の出現によって発生した波紋、キアラ的には波なのだが、漂いながら竜を見上げている。
巨大な竜はリヴィア達に咆哮した後、キアラに気付いてギロッと鋭い視線を向けている。その視線を浴びたら小動物であれば心臓が止まってしまうだろう。
「すっごく大きいねぇ! カッコいいっ!」
キアラが目をキラッキラさせながら叫ぶと、竜は何故かビックリしたように目を見開いてキアラを見ている。
グオオッ、グアオオオ?
「んー? 怖くないよぉ?」
! グォォグォォ……
「どうしたの? 元気ないね?」
ガオオオオッ
「どうして? 驚かせてたの?」
ガオオオオッ、ガオンガオ
身振り手振りを入れながら竜は言い、ふむふむとキアラは頷いている。
ガオンガオ、グオオッ
「えぇっ! そうなの? 可愛そうだよぉ!」
コクリと首を動かす竜は、何故か酷く寂しいオーラを放っていてキアラは可哀そうになってしまった。だけど、そこはキアラのいい所が大爆発する。
「じゃあさ、じゃあさ! キアラとお友達になろうよっ!」
グオオ?
「うんっ! そしたら独りぼっちじゃないよ?」
満面の笑顔でキアラが叫ぶ。竜はその言葉の意味を理解し、全身を震わせながら喜ぶ。
グォォ? グオオッオ?
「うんっ! 私はキアラっていうの! アナタのお名前は?」
グォォオガオ
「ジハードちゃんねっ! よろしくね!」
グォォォ、ガオン!
こうして独りぼっちだった竜のジハードとキアラはひょんな事で出会い、友達として仲良くなるのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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