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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第二章 旅立ち
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19 託された想い

「あーっ、スッキリした!」


 リヴィアが両手を高く突き出して背伸びをする。現在宿屋へと向かっている一行。ラリィがバツの悪い表情でリヴィアを見ている。キアラはお腹いっぱい食べたので既に眠そうだ。


「よ、良かったのですか? リヴィア」

「ん~何が?」

「な、何って、あのヴァルという人物の事ですよ」


 リヴィアがまるで何事もなかったような顔をしているので、タメ息混じりにラリィが指摘する。


 現在、街の広場にはボロボロになった状態で捨てられている人物がいる。


 ヴァルだが、何か?


 ボロボロ過ぎてほぼ半裸状態ではあるのだが。


 ……何か?



「さ、さすがにあれはやり過ぎだったのでは……」

「いいのよっ! アレでもまだ優しい方なんだからっ!」


 それを聞いてラリィは震える。やはり敵に回しては行けないと……


 宿屋に戻り、リヴィアはキアラと一緒の部屋で、ラリィは今夜は一人のみで部屋を取る。ケイ氏が居ないのが少し違和感があると思いつつ、ベッドに横になる。ここ最近毎日のように忙しいなぁと呟きながらラリィは眠る。

 リヴィアもキアラをベッドに寝かせて、自分も横になる。明日も平和であるよう祈りながら。


 しかし、平和は決して長くは続かないのであった。魔王がすぐそこまで迫って来ているのだから……


 ある女性は空に浮かぶ月を見上げ、不吉な風を読み取り呟く。


「始まる……のね」



 ある生態兵器は目を覚まして呟く。


「ワ、ワタシは何を……チョ、壁がっ!」



 ある半裸同然の男は……今だ気を失ったままだった。


「……」



 ______________________



 次の日、異変は朝から既に起きていたのだった。


「おはよー! ラリィ」

「おっはよぉ、兄ちゃん!」


 美女と美少女に朝から挨拶される優越感に浸りながらラリィが挨拶を返す。


「おはようございます」


 宿屋を出発しようとして、ロビーに向かうと数名の兵士を連れたザガンがいた。


「おはようございます」

「えっと、おはようございます」

「おっはよぉ!」

「どうされたのです? こんな朝から?」

「はい、実は折り入ってお話がありまして……ここでは何ですから別の場所でも宜しいでしょうか?」

「え、ええ」


 こうして宿屋までわざわざ迎えに来るザガン隊長に、違和感を覚えつつもただ事ではないのだろうと察する。


 一行が連れていかれたのは、高級区画にある食堂で、通されたのは貸切にされた広い部屋であった。


「ささ、まずは朝食でも食べながらお話を致しましょう」

「えっ……で、でも」

「大丈夫です。ここの支払いはさせていただきますので、お好きな物をおたべ下さいませ」

「「「!!」」」


 こんな高級そうな場所で、モーニングとかシャレオツじゃねっ? とテンションアゲアゲになる三人。もちろん出てくる料理に感動の涙を流すまでがセットである。

 そして全員がある程度お腹が膨れた辺りで、ザガン隊長は本題を話し出す。


「さて、皆様にお集まり頂いたのは他でもない」

「来たわね? 面倒事はイヤよ?」

「ハッハッハ、これは手厳しい。しかし、そうも言っていられない状態なのです」

「どういうことでしょうか?」


 声のトーンが急に変わり、深く深呼吸をするザガン隊長。その表情は重く真剣である。


「まず最初に報告致します。西方方面防衛基地は壊滅致しました」

「え?」「んなっ!」


 二人がテーブルに手をついて乗り出すように話を聞く。


「ケイ副団長を含め、私の部下数名が西方方面防衛基地へ向かった後、一泊して戻る予定だった部下がボロボロの状態で日の出と共に戻ってきました。」


 ゴクリ……

 誰かの生唾を呑み込む音がやけに大きく聞こえる。難しい話は苦手なキアラでさえ、ケイ氏が心配で耳をピンと立てている。


「命からがら戻った部下によれば、中継基地を過ぎて、西方方面防衛基地との間辺りで、避難している部隊と合流し、基地の壊滅を知ったそうです。そして、中継基地まで戻る道中に敵と交戦になり、何とか逃げ出してきたとの事です。」

「そ、それでは他の方々は……」

「申し訳ありませんが、無我夢中だったゆえ、分からないとのことです。中継基地へ戻った部下は、援軍を要請するため、その足でここまで帰ってきたとの事です。」

「そ、そんな……」

「ケ、ケイ? ねぇ! ケイは? リヴ姉! 兄ちゃん!」


 キアラが珍しく耳を折りたたみ、目をウルウルさせてリヴィアの腕や、ラリィの肩をその小さな手で引っ張る。キツく唇を結ぶリヴィアとラリィ。


 ザガン隊長も心中を察するように目を瞑る。その表情には申し訳ないという念が詰まっている。


 零れそうな大粒の涙を堪えてキアラは叫ぶ。


「た、助けに行こう! ねぇ! お願い! 行こうよ!」


 立ち上がったキアラは、今すぐ飛び出して行きそうな勢いでリヴィア達の袖を引っ張る。キアラの気持ちが痛いほど伝わるリヴィアとラリィ。もちろん、助けに行きたいが無情な言葉が突き刺さる。


「現在、ロンダーク王国騎士二個中隊(400人)が援軍に向かいましたが、押される一方で既に中継基地も放棄、渓谷入口まで後退し、迎撃中との事です」


 救助すらままならない程、絶望的な状態ということだった。


「そ、そんなに投入して抑えられない相手って一体何なのよっ!?」

「報告では真っ黒で見たことも無い敵としか……」

「っく……」


 あまりに情報が少ない、しかし確実に王国に攻め入っている。


「ほ、他の国には……!」

「既に援軍要請の書簡を送らせましたが、恐らく間に合わないでしょう」


 ここロンダーク王国は大陸の中でも一番西側にある国であり、他の国とはかなり離れている。一番近い国で北にある亜人の国、エル・デ=ボンド王国であるが、片道で二日のため、とてもではないが間に合わない。


「それでは、何故我々をこの場に呼んだのですか?」


 ラリィが震える拳を抑えながら聞く。今すぐにでも助けに行きたいのが伝わってくる。


「私はもう間もなく、第二援軍の指揮につき、前線へ向かう予定であります」

「で、では、我々もーー!」

「なりませぬっ!」

「っつ!?」


 立ち上がるラリィに、気迫の篭もったザガンの言葉が刺さる。


「ここには我々の守るべき民がおります。どうか、あの強大な魔獣をも退けた皆様には、ここを守って頂きたいのです」

「そ、そんな! 私たちだって戦えます!」


 残って欲しいと願うザガンに、リヴィアが食らいつくが、目を瞑り首を横に振るザガン。


「恐らく、私達は死ぬことになるでしょう」

「なっ!」

「「!」」


 ラリィが声を上げた、リヴィアとキアラは息を呑む。


「敵は恐らく強大。王国内の全兵力を持っても抑えきれないでしょう」

「それなら尚更私達が……!」

「私達はこんな形でしか戦えないのですよ。リヴィア殿。どうか、どうか我が国の民を守って頂きたい」

「……」


 覚悟を決めた男の姿がそこにはあった。

 リヴィアは知っている。絶望の中、想いを託し繋げる父親の姿を。

 ラリィも知っている。死を前に、一歩も引かず立ち向かう男の姿を。


「……分かりました」

「う、うう、うわぁぁあああん!」


 二人はザガンの覚悟を理解し、託された想いを胸に刻む。キアラはまだ幼い。感情の表現が難しいのだろう。唇を震わせて大声で泣く。その涙に多くの表現出来ない想いを乗せて……。



「……ぁぁぁああん、うう、ぁぁぁあああ!」



 リヴィアがキアラの正面から優しく抱きしめる。リヴィアの肩にキアラの大粒の涙が零れる。ラリィも堪らず、二人を横から抱きしめた。



 ザガンはその姿にこの若者たちに託して良かったと、感謝の涙が目に溜まっていた。



 ______________________



「それでは、リヴィア殿、ラリィ殿……キアラ殿。後は任せましたぞ」

「「はいっ」」

「……グスッ」(コクリ)


 ザガン隊長が、暑い眼差しで三人を見つめる。キアラは落ち着いたが、まだいつも通りになるには時間がかかるだろう。チャームポイントの猫耳はペタリと頭と同化し、リヴィアの背中に隠れて顔だけ覗かせている。

 キアラなりに涙を我慢していたのだ。そして、どうしても我慢出来なくなった時に、すぐリヴィアの身体で顔を隠せるようにと配慮していたのだった。


「では、さらばだ」


 ザガンは馬に跨り、もう一度三人の姿を焼き付け、兜のバイザーを下ろす。三人は固く唇を噛み遠ざかるザガンを見送る。


 やがて第二援軍として徴収された二個中隊へと溶け込み、西の渓谷目指して草原を進んでいく。


 リヴィア達はその姿を目に焼き付けるようにジッと見つめていた。


 するとキアラが何故かソワソワし始める。リヴィアの服に掴まる手に力が入る。


「ど、どうしたのキアラ?」

「な、何か……何か来るよ! リヴ姉っ!」

「何か……?」


 リヴィアとラリィが、怯えるキアラを宥めようとしたその時ーーーー。



 空が雲に覆われ始める。それもザガン率いる部隊の真上を中心にグルグルと……。


「あ、あれは……!?」

「ま、まさかっ!?」


 リヴィアとラリィが気付いたが、それは既に遅かった。









悪魔の抱擁エムブレイス・フローズン




最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

真面目な話が続く予定です。作者はいつも真面目ですがねっ!


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