18 恐怖体験アンビリーヴィア
この作品はホラーではありません。ダークなんです。
ケイ氏と涙の別れをした一行は、そろそろ夜になるので夕食を取りに酒場「ミーツ」へと向かう。ブランガ達は壁外での待機をしさせている。報奨金も出たのでホクホクの懐だが、実はリヴィア達はお金を使ったことがない。というか、見たことのないお金だった。
「ねぇ、ラリィ。国によってお金の価値って違うのかしら?」
「さ、さぁそこまでは……」
「おっかね!おっかね!」
キアラはよく分かってないが、これがあればご飯が食べられるとしか思っていない。これまでケイ氏に全て任せていたツケが降りかかる。
「んー、これが硬貨、これが紙幣……。数字が大きいのが価値が高い……と思うのだけど……」
「ですね。とりあえず、注文する時にいくらか確認しましょう!」
「それもそうね!」
リヴィアがキアラの手を取って仲良く歩き出す。その姿を見て、ラリィは過去の自分を殴り倒したくなる。その手があったかぁぁぁあ! っと。
将軍の前に軍曹が呼びつけられ、反省文を書かせている。
そして気付いてしまった。
まだ間に合うと。
軍曹はすかさず将軍に作戦立案を報告。光の速さで承認し、扉を蹴飛ばして出陣する軍曹。
「り、リヴィア」
「ん? どうしたの?」
「お、俺も手……握っていいかい?」
軍曹は走る。ヒヨコ共の寝る宿舎へ。
「んー?」
少し考えるリヴィア。でも直ぐに返事が来る。
「いいわよ! さぁ手繋いで!」
軍曹が叩き起す。起きろヒヨコ共! 仕事の時間だァぁあ!
「あ、ありがとう」
そして手を繋ぐラリィ。
小さな手。とても柔らかく、暖かい手。女の子の手ってこんなに小さいのかと感動するラリィ。
これが……
これが……
リヴィアの手だったら……
「三人仲良しだねぇ!」
「ねぇ! アハハー!」
「……だ、だねぇ」
キアラの手だもの、小さいよね。
しかし、これはこれで傍から見たら子持ち新婚夫婦のように見えるだろうからグッショブ軍曹っ!
酒場に到着した三人は座れそうな席を探す。やはり夕食の時間は混んでいるようだ。それに防衛成功を祝して、色んな場所で宴会のように騒いでいるのでここもそうなのかもしれない。
相席だが何とか三人座れそうなテーブルを見つける。リヴィアが代表して相席の許可を取ろうとする。
「すみません! 宜しければコチラ相席させてもらっても良いですか?」
「あァ、構わねーぜ?」
「ありがとうござい……ます?」
「どういた…… あっ」
人間には忘れてならないことが沢山あるが、ここでは敢えて三つに絞らせてもらう。
一つ、恩
二つ、約束
三つ、 ……借りだ。
「みみ……みみみ……みみみ見っけたァァァあ!」
「おっといけねぇ!」
掴みかかるリヴィアを、ひょいと華麗に躱す人物。
「ひゅ~危ねぇ危ねぇ……運が良いなぁ嬢ちゃん、そしてボウズ!」
「ああっ! 貴方はヴァル!」
「ふぇ? だぁれ?」
ヴァルの顔を見て指差して叫ぶ。ヴァルは相変わらずハットに手を置いたまま、不敵に笑っている。
「こ、この人に俺達はハメられて牢屋に入ったんだ!」
「うんうん! んー?」
説明するがキアラは思い出せない。牢屋に入っていた事はすでに忘れているのだろう。
「ふふん、まぁそんなに怒るなって。ちゃぁんと、入国は出来たんだからよぉ」
相手を逆撫でるように喋りかけるヴァル。だが、ヴァルはすぐにでもこの場を去るべきであった。
「まァ嬢ちゃんも元気そ……うで? へ?」
ヴァルとラリィが喋っている間、リヴィアは掴みかかった時にテーブルへと身体を伏せたまま動かなかった。
……何故動かなかったのか。
それは……狩りを楽しむためのハンデだった。
「……ィィッ、……ヒィーヒッヒッヒッ」
「じょ、嬢ちゃん?」
黒いオーラのようなものが、うつ伏せになっているリヴィアの背中から溢れ始める。そして壊れたように甲高く笑う声が、酷く耳の内側にこびり付いて来る。
リヴィアの様子のおかしさにヴァルの肝が冷え始める。
「イヒヒヒ……、アーーハッハッハッ」
「こ、こりャア、一体……」
ラリィがいち早く察知し、ヴァルに逃げるようにジェスチャーする。口を大きく動かし、「NI.GE.RO」と口パクする。事実、キアラは既に居ない。
混乱するヴァル。しかし、背中に氷が滑り落ちるような感覚に、つい「ヒィっ」っと声を上げた。
それと同時にーーーー。
まるで天井に釣り糸で吊るされているかのように、リヴィアの身体が不自然に持ち上がる。手はだらんと力が抜けているように見えるが、釣り糸が手首、肘、肩を持ち上げているようにも見える。
ヴァルはガチガチと何かが当たるような音に違和感を覚える。やけに大きな音。しかし、すぐに理解する。自分の奥歯の噛み合う音である事に。
ラリィは既に限界であると判断し、酒場の人達を出来るだけ端に誘導する。みんな本能でヤバいと気付いて、素直に素早く真っ直ぐに移動する。
そして、ゆっくり、ゆっっくりと、リヴィアの身体が回る。
逃げたいが動く事が出来ない。まるで頭を後ろから鷲掴みにされ、目をそらす事も出来ない。
まるで空中に磔にされたような姿のリヴィア。目を閉じ、口を半開きにし、首が斜めに傾いたまま固定されている。
カッ!
目が開き、ギョロり、ギョロりと右左、上下、眼球の運動が明らかにおかしく定まらない。
ヴァルは息が止まる。
酒場の全員が目をそらす。
そしてーーーー。
ヴァルに視点が定まる。
瞳孔が猫の目のように細くなる。
「みぃ〜つぅ~けぇ~たぁ~」
ヴァルに影が迫っていく、ヴァルは涙が止まらない、恐怖で足がガクガクしている。影がヴァルの顔まで迫り遂に声を張り上げる。
「ぎ、ギィヤァァァァアアアア……!」
そして、その日。町中に一人の男の叫ぶ声が響き渡ったのであった。城の外のブランガ達でさえ震えていた。
ちなみに、この酒場には例の傭兵風情共も居合わせていたのだが、リヴィアのあまりにも恐ろしい姿に恐怖し、その日の内に傭兵を引退した。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
リヴィアは怒りが頂点に達すると多芸になりますw
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