15 三流フラグ建築士
トンテンカンテン
リヴィア達は食事が終わったので、散策の続きでもしようと思っていたが、何やら外が騒がしい。
「どうしたのかしら?」
「ちょっと聞いてきますね」
ラリィは近くで話している人達の中へ向かっていく。
キアラはお腹がいっぱいで満足したのか、ケイ氏の背中でヨダレを垂らしながら幸せそうに寝ていた。リヴィアはツンツンとキアラの頬っぺをつついて、遊んでいた。
するとラリィが人混みの中から慌てたように戻ってくる。
「た、大変ですっ!」
「「?」」
ラリィが聞いた話によると、帰らぬの森から大量の獣達が西防へと攻めてきたそうだ。幸い西防の善戦により、獣達の大半は追い返す事に成功したのだという。しかし、問題は一部が渓谷内に侵入し、ロンダーク王国を目指しているとのことだった。
「ここにいる人達は戦いに慣れていない」
「そうね、私達なら多少の荒事にも慣れてるし、門の警護くらいならお手伝いしましょうよ」
「それもそうですが、西防の方々も心配です」
防衛の協力に行くか、西防が心配だから戻るかで迷う二人。しかし、ケイ氏は即決断する。
「大丈夫。西防強い。西門のー防衛にー行こう!」
「ケイ氏……分かったわ。ここはギャバンさん達を信じて、私達は西門へ向かいましょう!」
「はいっ!」
「ふぇ……わたひもひふー!」
一行は西門に行く事に決定する。キアラも寝起きでよくわかってなさそうだが、一人に出来ないので連れて行く。
「そうーだ、このーまま、危ない。武器をー持って行く」
「し、しかし、お金はありません」
そう言うと走りながらケイ氏がサムズアップする。ケイ氏が商業区画の方へと向かっていき、ある建物に入ると、ロビーの様な場所に色んな武器が置いてある。
「動けるものは武器を持てー! 西門に集合だーっ!」
「「「おおおーっ」」」
中ではかなりの人が武器を選んでいて、西門防衛にやる気満々のようだ。
実はここはギルドと呼ばれた何でも屋みたいな場所で、家事~護衛など様々な仕事が集う場所なのだ。元々傭兵などが手を持て余さないようにと設立したものだが、今では多くの人間が利用し、お小遣い稼ぎをしているのだった。
しかし、今回のような緊急時は、武器を提供し、任務を遂行させるための手伝いなどをする。
「好きなのー、選んでーね」
「わ、分かったわ!」
「俺はこの剣があるので大丈夫です!」
「わー、あったしも! 選ぶ選ぶ!」
ケイ氏は身体に見合った巨大な斧を手にする。リヴィアはレイピアを手にし、ラリィは王国の剣があるのでそのまま使用する。キアラは……拳にナックルの付いた篭手と足にも脛当てを装備する。
そして準備が出来たので皆で西門へと向かった。
西門に向かうと大勢の人達が集まっていた。ロンダーク王国の騎士は一個中隊、酒場で会ったあの傭兵風の男達含め、寄せ集め部隊四十弱。リヴィア達の四人。つまり全部で約五個小隊規模で西門を防衛する事となる。
「おいおい、こりゃあ過剰防衛ってヤツじゃないのかぁ?」
昨日の男共だ。
「まぁ報奨金出りゃあ文句は言わないが、コイツらにも金が出ると思うとやる気なくすわー」
チラチラとわざとらしく、大きな声で此方を煽ってくる。
「ったく、女子供はお家に帰れってな! アハッハッハッ」
ラリィはコイツらまぢで空気読めないな……と呆れる。せっかく昨日はニコレットさんのおかげで命拾い出来たのにと思う。
しかし、隣ではリヴィアが我慢に我慢を重ねている。握りこぶしがブルブル震えているが、それでも飛び掛ったりしないだけ成長したと、ラリィは大人になったリヴィアに感動していた。
だが大人になったリヴィアは一味違う。
「ねぇ、ケイ氏? もし、もしもよ? 防衛する際に乱戦になって、密集してしまった時なんかに誤って人を傷付けたっ! なぁんて事があったらどうなるの?」
「ん、んー? ど、どうーかなー?」
「ふ~ん、それじゃあこんな時は……」
「えっ? う、んーー、んーーーっ」
あのケイ氏を困らせる程に、リヴィアの会話の内容が怖くなっていた。
ラリィは別の意味で涙を流した。ラリィの横では、キアラがリヴィアの話の内容は分かっていないのに、その邪悪な雰囲気によって恐怖を感じているのだろう、毛が逆だっていた。
そしてあの傭兵風情の馬鹿共は、今も笑い続けているが、ラリィには見えていた。その背後に鎌を携えた死神がカタカタと笑っている姿が……。
ロンダーク王国王国騎士の隊長格らしき人物が現状の報告と今後の計画を説明する。
「集まってくれた同胞諸君、君達の勇気に感謝する。今回集まって貰ったのは他でもない。西方方面防衛基地より、帰らぬの森から現れた複数の獣に突破されたという報告があった。」
隊長格らしき人物は一拍置く。集まった人達へ視線を送り、皆の覚悟を確認しているようだ。
「現在、中継基地を突破! 多少の手傷は負わせたとの報告があったが、あまりアテにしないで頂きたい。これから向かってくる敵は全力全開であると心得よ!」
ここで部下の一人が、隊長格らしき人物に近付いて何かを報告する。
「新しい報告が入った。敵の数は十匹程で、四足歩行が五、二足歩行の三、飛行型が二。どれも中型だが一匹大型の獣が混じっているとのことだ。」
ここで昨日の男共がちゃちゃを入れる。
「おいおい、ザガン隊長さんよぉ。たった十匹の獣に、この人数で掛かるのかよ?」
「流石にヒビりすぎだろぉよ?」
アッハッハッハッハッと高笑いする馬鹿共。ザガンと呼ばれた人物は、厳しい視線を送るが本人達は全く気付いていない。呆れてタメ息を吐きつつも話を続ける。
「先行部隊との接敵まであと一時間もないだろう。各自準備を怠らず、最善を尽くしてくれ。」
軽くお辞儀をして下がるザガン隊長。代わりに参謀らしき人物が予め組んでいた作戦隊列の指示を出して解散した。
「そう言えば中型の獣ってどれくらいの事なの?」
リヴィアがケイ氏に尋ねる。
「んー、渓谷でー出会ったー、怪鳥より? は小さーいかな?」
「では、大型とはあの怪鳥以上という事ですね?」
ラリィの言葉に頷くケイ氏。あの怪鳥より大きいと想像するだけで恐ろしい。しかし、あの傭兵風情の馬鹿共は何故あんなに自信満々何だろうと、疑問に思ったラリィ。
「あの、あの方々の余裕っぷりはどこから来るんでしょうか?」
「あれーは、気にしーない」
「?」
ケイ氏曰く、平和ボケの象徴の様なものらしい。元々西防は、帰らぬの森からの侵入を防ぐこと以外に、王国側からの侵入を防ぐことも任務に入っていた。
なのでほとんどの人間が帰らぬの森の事を知らない。なのでこれから戦うべき敵の怖さを知っているのは、僅かな人間のみだった。
「そ、そんな! 大丈夫なんでしょうか?」
「そのたーめ、われわーれが、いるー」
「だねっ!」
「う~わっくわくだぁ!」
そこでリヴィアは気付く。
「ん? キアラちゃんも戦うの?」
「もっちろんだょ~!」
やる気満々の表情のキアラ。装備したナックル同士をぶつけ合って、軽快な構えを取る。
「ナーゴの戦士は強いんだからねぇ!」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回! 傭兵風情死す!
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