14 君と僕の間には
名曲が流れます
「アノ、ここは私の家なのですが……」
「「……」」
二人は固まったまま、喋る緑の鎧に目が離せない。
目が覚めた二人が、壁に目をやるとそこには先程の喋る鎧がなく、安心する二人であったが、すぐ横にその鎧が居たので再度硬直している最中である。
「アノ〜? もしもーし」
「「……」」
これは夢である。夢から覚めよう。しかし、どうやって夢から覚めるのだろうか? アハハ、そんな鎧が喋るわけないじゃんよー。
現実逃避に必死な二人に後ろから、ケイ氏とキアラがやって来る。
「おーい」「リヴ姉ー!」
ビーチフラッグをご存知だろうか。二人の見事なスタートダッシュは、華麗な加速により秒で最高速度に到達。低い姿勢からダイブを決めるようにケイ氏の身体の後ろに隠れる。
「チョ……、傷つくんですけど……?」
電子音混じりの男性の声が、寂しそうに聞こえる。
何となく黒いバイザーの中の赤い光が、水色に変わって涙目のようなマークへと切り替わる。
「おちーつくーよ? わるいーひとーちがうよ?」
「わー! すっごーい!」
ケイ氏は後ろの怯える二人を宥める。逆にキアラは興味津々に、ぺたぺたと緑色の鎧を触って遊んでいる。「ちめたーい」と、無邪気な笑顔のキアラに、優しく「ヨシよし」頭を撫でるグリーンメイル。
その姿を見て、危険人物ではないと理解した二人。
しかし、その出で立ちはあまりにも異質であった。メタリックグリーンにメイルに、関節部分などがコバルトブルーに光っている。鎧のサイズはかなり細く、どちらかと言うと、フィットスーツに色んなパーツが後から付けられていると言った方が分かりやすいかもしれない。
身長は割と高く、ケイ氏と同じかちょっと低いくらいだった。頭の部分はヘルメットで耳のある部分は鋭い形のアンテナのようなものが斜めに伸び、目は普段緑色の光を発しているようで、今は緑だ。感情によって色や形が変わるのだろう。
「ワタシは生体兵器と呼ばれるもので、決して怪しいものではありません」
「変態……兵器……」
「セ、イ、タ、イッ!」
生体兵器とは、昔に偉大な科学者が発明されたという化学兵器の一種で、すでにそのテクノロジーは失われている。しかしながら、世界にはまだ彼のような生体兵器が何体もいるので、珍しいは珍しいが騒ぐほどのことでもない存在だ。
彼らのような生体兵器は、元々の意思や性格が反映されている為、新たな種族として登録もされている。しかしながら種の繁栄は出来ないようで、減ることはあるが、増えない。
そのため、超長命に造られている。太陽光によるソーラーエネルギーを体内で変換する事で、活動出来るように設計されており、壊れない限りは活動し続けるのであった。
実際、建物の屋根に置かれた黒いパネルでソーラーエネルギーを集めて、先程の身体中にくっ付けていたケーブルで補給という名の仮眠をしていたのだった。
「ご、ごめんなさい。寝てる所を邪魔してしまって」
「俺も大変失礼な事をしてすみませんでした」
「イエいえ、いいのですよ! コチラこそ驚かせてしまったようで申し訳ない」
リヴィアとラリィが謝る。生体兵器の彼は心が広いようで気にしていないようだった。今も背中にキアラを乗せてあやしている。
「私、勘違いしてしまって……人を見た目で判断するなんて……本当最っ低でした!」
リヴィアは自分自身の行いを反省し、勢いよく頭を下げる。下げた勢いで肩が横にあった棚にぶつかり、盛大に中身が散らかる。ドジっ娘の属性を手に入れたリヴィアだったが。
「す、すみま ーーーー?」
「ア、大丈夫ダイジ ーーーー!」
君ィと僕とぉの
あーいだーにはー♪
今日ぉーも、
下着ィの雨がーふーるー♪
ハラハラと色んな女性の下着が落ちてくる。緑の塊が固まる。リヴィアも固まる。
バイザーが真っ青になる。今日は油を差すのを忘れたのだろう。ギギギギッと音を立てながら、リヴィアの表情を窺うブルーバイザー。
視線の先のリヴィアはお辞儀した状態なので表情が分からない。分からないが分かるのは、震えている事と、ゴゴゴゴゴゴの文字が背景にハッキリと見える事だ。
横でラリィがエスケープのサインを出す。背中に乗っていたはずのキアラは既にいない。
ブルーofブルーが言い訳を高速で演算し、脳内回路が焼き切れそうになる寸前で、タイムアップする。
「最っ低ェェェエ! この変態兵器ィィイ!」
「ウボァはぁぁぁぁあーーーっ」
リヴィアの正拳突きが見事にグリーンメイルの腹部に炸裂する。拳の形にへこんだ腹部から衝撃が先に後ろへ伝わり、遅れるようにしてその身体が吹き飛ぶ。
「オボボぼぼぼぼ……ぶはァ!」
ゴガガガガガガ……ボカァァン!
緑の鎧はくの字に後方へとぶっ飛んで行く。足で何とか勢いを殺そうと踏ん張るが、床には二本のレールが築かれていくだけだった。そして壁に激突し、尚且つ壁に蜘蛛の巣が張ったような亀裂が走る。
メリ込んだ哀れなキュウリ人間がそこにはいた。
「もぅ知らないっ!」
リヴィアは正拳突きの残心を解いて、出口へとズンズン行ってしまった。
ラリィとキアラはメリコミグリーンの身体を壁から引き抜き、床に仰向けで置き、ソッと両手を添えて黙祷したのだった。
______________________
「あのぉ、あの方は大丈夫なんでしょうか?」
「だいじょーぶ、生体兵ー器強い」
「そ、それならいいのですが……」
酒場「ミーツ」にて昼食を取る一行。リヴィアは不機嫌のまま、ガツガツ食べている。キアラは相変わらず、幸せそうにモシャモシャとお肉を頬張っている。
「ほぉーら、キアラ? 頬っぺが汚れてるわよ?」
「んんんっんー!」
「あとは、野菜も食べなきゃダーメッ!」
「んぐっ、ううう……野菜、苦い」
急にリヴィアがキアラを構いだしたと思ったら、まるで姉妹のような事をし始める。機嫌を取り戻したのか不安なラリィ、今はキアラのその無邪気な笑顔に賭けるしかない。
「ほぉーらぁ、コレ食べてみなさい?」
「んんーっ、んーーっ? んんっ!」
緑の葉っぱの様な物に、ドレッシングを掛けてリヴィアがキアラの口に放り込む。キアラは最初は恐る恐る食べていたが、食べてみたら美味しかったようで、自分から食べていく。
「そうそう! その調子よ、キアラ! うふふ」
遂に笑顔になるリヴィア。ラリィは自分一人ではどうしようもなかったので、キアラに感謝する。仲間がいてくれて良かった……と。
そういえばと思い、ラリィはケイ氏に尋ねる。
「あの、ケイ氏は俺達とこんなに長くお付き合いしてもらって良かったのでしょうか」
「んー? 大丈夫ー、きっーと、隊長も分かってくれーる」
笑顔で答えるケイ氏。確かにギャバンのような男は心が広いから大丈夫なのだろうと、安心するラリィであったが、酒場の外が騒がしくなる。
その騒ぎがある訪れを運んで来たのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
生体兵器は男のロマンなのです。
良かったら↓評価☆やイイネ↓ポチってね!
✧‧˚\\\\٩(*´▽`*)۶////✧‧˚




