13 グリーンメイルド
まだ傭兵風の男達は笑っているので、席を変えて隅へと移動する。
「それで……さっきの話の続きだけど……」
そう言って席に着く、ローブの人物はフードをとってその顔を見せる。
その顔は魅力的な大人の女性で、綺麗の一言だった。顎はシュッと細く、顔も非常に整っており、美の化身と言えた。真っ白な肌に長いブロンドヘアーで一つ縛りのポニーテールにしている。長い揉み上げも大人の女性を演出する。瞳は青く、透き通った美しいターコイズのようだ。
身長はリヴィアよりも高いのが分かる。そんな誰もが振り向くような女性に、同じ女性であるリヴィアも見蕩れる。
(き、キレイな人……)
「どうした? 座らないのか?」
「あ、は、はい!」
ボーッと見蕩れていて座ることを忘れていたリヴィアが、急いで席に着く。ケイ氏とキアラ、ラリィの三人も急いで座る。全員が見蕩れていたようだ。
全員が席に着いたので、リヴィアは自分の国であった事を掻い摘んで説明する。
封印された神器、大勢の人の生贄、魔王の一部と呼ばれた化け物の姿、そして国が滅んだ事。
キアラにはまだ難しい話であったようで、居眠りしていた。ケイ氏が途中でキアラを抱えて宿へと連れて行く。今はリヴィアとラリィ、そして謎の美女の三人だった。
大体の話を聞いて真剣に考え込む女性。そこで名前を聞いてないことに気が付いたリヴィアから、まずは自己紹介をした。
「ごめんなさい、まだ名乗ってなかったわ。私はリヴィア・レーベン。元……お姫様です」
「俺は側近のラリィ・トゥテラです。亡き王国の王国騎士第三団副団長を務めておりました」
謎の女性もうっかりしていたと頭を下げてから答える。
「すまない。私はニコレット・ノアと言うものだ。」
ニコレットと名乗った女性はさらに続けて言う。
「私はある土地からの旅人なのだが、その土地には古くからの伝承が残っている」
「伝承……」
頷くニコレット。
「伝承では大昔にある化け物によって大戦が引き起こされたとある。つまり、その化け物は貴方達の国を襲った化け物と似ているかもしれない。
「そ、そんな……」
口を押さえるリヴィア。ラリィは拳に力が入る。
「化け物の正体は恐らく、魔王の一部……って所かしらね」
「な、なぜ、私達の話を信じてくれたの!?」
リヴィアは疑問に思い、ニコレットに尋ねる。
「魔王は……いるって私も信じてるから……」
そう言い、ニコレットは暗い表情になる。そして立ち上がり二人に背を向けて言う。
「話を聞かせてくれてありがとう。貴方達の仇が取れることを祈っているわ……」
「はい……ありがとうございます」
ニコレットは酒場を出ていくのだった。残された二人はクラーゲン国での出来事を思い出していたので、とても重い雰囲気だったが、気を取り直す。平和な世の中でも、いつ魔王が現れるのか分からないのだから。
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次の日、ケイ氏の提案で朝から街の散策に出る事にしたリヴィア達。まずは工業区画からグルッと回ることにする。
色んな製品を作っているのが分かるが、リヴィアとラリィには何が何だか分からない。クラーゲン王国とはまるで違う技術力に目を丸くする二人。キアラは探検気分でケイ氏に肩車してもらいながらキャッキャと散策していく。
途中で鍛冶屋等もあり、直接交渉してオリジナルの武器なんかも作れるとケイ氏から教わり、目をキラキラさせるリヴィアとラリィ。
建物から熱風が来るが、鍛冶屋と言えば当たり前なので仕方ない。職人達がカンコンカンコン叩いているのをジロジロ見ていた。
ちなみに鍛冶師と言えば力の強い種族が主に就く仕事らしく、ここにはドワーフという身長は低いが、腕の太さが男性のお腹周り程あるずんぐりむっくりな姿だった。
種族の垣根がないロンダーク王国には、沢山の亜人が住んでいて、犬耳やウサギ耳を見て興奮するリヴィアとラリィだが、なんの動物の耳なのかはよく分かっていない。長い、大きい、丸い、小さい、三角、といった形に興奮していたのだった。
やがて昼頃になり、一行は商業区画の近くまでやって来る。
「はぁー凄かったね、色んな人が沢山いたよー!」
「はい! ぜひ新しい武器を作って貰いたいですね!」
「あたしもねー、あのね、楽しかったー!」
「よかーったねー」
楽しそうに話す一行だったが、不思議な建物がある事に気付く。不思議……というかヘンテコな形? まるで複雑に絡み合うパイプのようだ。工場? にしてはかなり建物のサイズも小さい。屋上には黒くて平べったいものが並べてある。
「あ、あれは何かしら? 他の建物と明らかに違うんだけど」
「んー、いーってーみーる」
「お〜っ!」
元気良く建物に突入するケイ氏とキアラ。まるでお父さんと娘のようで微笑ましい。残る二人も恐る恐る建物へ入っていく。
建物の中は薄暗く、壁がやはりパイプだらけだ。赤や青の小さな光が所々にあるがよく分からない。狭い通路を進むとちょっとした部屋に出る。
すると防具屋なのか、武器屋なのか、よく分からないが色んな防具が部屋の真ん中に立て掛けてあり、壁には見たことのない武器らしきものが掛かっている。
「すっごーい」
「なんだろー、これ」
「み、見たことのない素材ですねっ!」
見た目のインパクトが、外も中もヤバい。ラリィなんか目を輝かせて防具に触れている。男の心に火をつける、そんな名店がここにあったのだった。
リヴィアもキョロキョロしながら、奥へと進んでいくと、壁に埋め込まれたように緑色の全身鎧がそこにはあった。
頭部は見たことのない形で頭のてっぺんから口元辺りまで、黒っぽいテカテカした物がはめ込んであった。
(新種の兜? バイザーが変わった素材ね)
ラリィに見せてあげようと思い、背伸びして兜らしき物を取ろうとするリヴィア。
「ん、ん~、と、取れないわね」
グイグイっと持ち上げてみようとするものの、持ち上がらない。
「ふん〜、ふぎぎぎ……」
踏ん張るリヴィアだが、取ることが出来ない。おかしいなぁ、と思っていたら、急に鎧のはめ込んである壁が光る。
「ほえっ?」
そして次に全身鎧の関節部や鎧に青緑のラインが発光する。
「な、何なの?」
驚くリヴィア。
そして変わった頭部の黒いテカテカした部分から赤い光が二つ発光し、うっすらと形を変える。まるで人間の目が開いたように。
「ン?」
「ん?」
声が聞こえた。鎧から。
固まるリヴィア。すると鎧のケーブルの繋がった手が動き、まるで挨拶するような素振りで。
「ヤ、ヤア」
挨拶された。鎧に。
固まったままのリヴィアが白目を向いた。
バタリ
その音に反応するラリィ。
「リヴィア? リヴィアどうしたのですか!」
倒れたリヴィアに急いで近づくラリィ。何が起きたのかと、リヴィアの向いていた壁を見ると。
「ヤ、ヤァ」
控えめに挨拶された。鎧に。
バタリ
こうして二人の白目を向いた、哀れな人間が出来上がったのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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