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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第二章 旅立ち
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12 進撃のリヴィア

 ピコピコ動く猫耳に、リヴィアは作り物ではないと判断する。今だ座ったままで探している猫耳っ子。もうそろそろ後ろを見て欲しいリヴィア。


「あ、あのね、ゴメンね? 起こしちゃって……」


 申し訳なさそうに声を掛けてみた。すると、ピコーンと擬音があってもおかしくない程、猫耳が立ち上がる。

 そしてやっと振り向いた猫耳っ子はとても可愛らしい、女の子だった。小麦色の肌と肌に合った瞳の色、オレンジ色に近い髪はクリクリっとカールして、肩辺りで外に跳ねている。

 頬っぺには部族の習わしのようなペイントがされており、口からは犬歯のような牙がチラッと見える。

 服は薄い黄色のノースリーブ、ジーパンが破れたような短パンと、かなりラフな格好である。

 女の子座りをしたまま、上半身を後ろに捻る姿は愛らしい。肩幅も細く、歳相応の華奢な身体だとリヴィアは思った。


「おねぇちゃん誰?」

「私? 私はリヴィアって言うのよ」

「り、ぶあ?」

「リ、ヴィ、ア」

「りゔいあ?」


 なかなか上手く発音が出来ないが、頑張っているようなので怒れないリヴィア。


「んー、あっ、じゃあリヴ姉ちゃんでいいよ」

「リヴ、姉ちゃん?」

「そうそう!」

「リヴ……リヴ……うん! 分かった!」


 何度か口に出して練習する姿に、ちょっと心がくすぐられるリヴィア。よく動く猫耳も可愛い。


「私はキアラっていうの!」

「キアラちゃん? 可愛い名前ね!」

「えっへへー!」


 名前を褒められて喜んでいるようだ。どことなく子供っぽさがルゥに似ている。するとルゥ……いや、キアラは立ち上がって、身体に付いた汚れや埃を手ではらっている。


 立ち上がった身長も、それ程高くなく、リヴィアの胸辺りといった感じだ。健康的な肌で太陽のような笑顔がよく似合う。


「ねぇねぇ、何でこんな所にリヴ姉ちゃんはいるの? かな?」


 かな? って所で首を傾げるあざとさに、リヴィアのハートはキュンキュンだ。あぁ、亜人、最っ高……と、リヴィアは初めて見た亜人がキアラであった事に感謝をする。



 そしてリヴィアは思い出した。


「うんー! えっとね、私がここに……」



 リヴィア達がヤツにハメられていた事を。


「いる……のは、 ーーーー」

「んんー?」


 急に俯くリヴィアに、キアラはどうしたんだろーっと思ったが、野生の勘が危険だとすぐに身体全身を電流のように駆け巡る。


「あんのやろうぉぉぉおお!」

「イイイッ!?」


 ガゴンッ!


 リヴィアが鉄格子を頭の上に掲げて、クルクルと回して怒り狂う。目には紅い光が宿り、身体中から白い煙が噴き出す。


「お、おお、お姉ちゃん?」

「ハッ!」


 キアラの怯える声に正気を取り戻したリヴィア。オホホホホ……と言いながら秒で鉄格子を元に戻す。……逆さなのは内緒だ。ラリィも何の音だ? とブリッジから戻るが、鉄格子には気が付かない。


「ご、ごめんね、怖がらせる気はなかったんだけど……」


 すでにキアラは涙目だ。動物の本能で逆らってはいけないということが、今の瞬間で調教されてしまった。

 リヴィアは怯える小動物を、何とか宥めようとする。


「あ、え、えっとね、私達はある人にハメられて、此処に入れられてしまったのよ」

「……ほ、ホント?」


 ウルウルする瞳に乾杯したいリヴィア。持ち帰りたい衝動に駆られる。これがペットショップに行った時に、衝動で飼ってしまう人の心理なのだろう。


「本当よ」(ニコッ)

「う、うん」(コクコクコクコク)


 リヴィアの全力の笑顔に、全力で頷くキアラ。


「キアラちゃんはどうして此処に?」

「んー?」


 可愛らしく頭を捻って考える。手が猫耳を撫でる姿が尊い。語尾にニャと付けないあたりが、しつこくにゃくていいのかもしれにゃい。


 そして、キアラの拙い説明によると、村を出てここに来たけど、食べる物も何も無いから、いろんな人に分けてもらってたらここに来た……らしい?


「んんー、分けてもらうって、タダで貰ってたりとか?」

「うん! みんな良い人達で追いかけっこしてくれるんだよぉ?」

「……」


 それを聞いて何となく、こんな小さな子がここに入れられた訳を把握する。そして同時に、まだまだ幼い考えで危なっかしさも感じてしまう。こんなに小さくて可愛い子が、犯罪に巻き込まれたり、商売道具にされたらどうしようと不安になるリヴィア。


 いい加減後ろで頭ブリッジしているラリィがウザい。


 どうにかしてこの子を救う手はないか、ついつい考えてしまう。あまり首を突っ込むのはいけないと分かっているのだが、目の前で髪を毛繕いしている可愛いケモミミっ子に、リヴィアの欲求が抑えられない。押すなと言われたら、余計に押したくなる心理に近い。


 すると、守衛達がやって来る。リヴィアもキアラも鉄格子から離れて様子を伺っていると、守衛はリヴィア達の牢屋の前で止まる。というか鉄格子の入口が上にあるので驚愕する。

 リヴィアはーーあっ! とか言いながら、素早く外して戻す。何事もなかった! いいね? という視線を守衛の二人に送り、二人の守衛は高速で頷く。


 リヴィアとラリィは守衛に連れられ、地下牢から出ていく。すると。


「おそくーなっーたよー」

「「! ケイ氏!」」


 そこにはケイ氏がいた。何でも、リヴィア達が出発した後に大騒ぎになって、ケイ氏もロンダーク王国に向かい、リヴィア達が捕まったと聞き、王国側に説明して、シルトにも赴いて証明出来る人などを募って何とか誤解が解けたのだと言う。


「ありがとーーケイ氏!」

「ありがとうございます!」

「いいーん、だーよ!」


 さて、行きますかという所でリヴィアが止まる。


「んんー? どーしたーの?」

「じ、実は……」


 リヴィアはキアラの事を話す。すると、ケイ氏は少し考え込んで、「あっ!」と何かを閃く。


「ちょっーと、いってーくーる」

「「?」」


 何処かへとケイ氏が向かい、しばらくして戻ってくる。


「おーけー! 許可、もらっーた!」


 と言いながら、説明してくれた。

 何でも囚人や国で手の付けられない人などは、兵士として出兵させられたり、危険な仕事に無理やり連れて行かれる事があるらしく、このままだと危ない目にあっていたそうだ。

 そこで今回ケイ氏は西防の人員を補充したいと願い出てみたら、あっさりと許可を頂けたという訳だった。


「厄介ー、払いー」

「な、なるほど」


 という訳で……


「私、キアラ! お兄ちゃん、お姉ちゃんよろしくね!」

「うん! キアラちゃんよろしくね!」

「ケイだーよ!」

「ら、ラリィです」


 ラリィは初めて見るケモミミっ子に驚いていた。呆れるリヴィアであったが、既に夜になっていたので酒場で遅い夕食とキアラの歓迎会をすることにした。


 王国の外側に位置する住居区画から商業区画の間にある酒場「ミーツ」で四人は食事をとる事にした。理由は安くて美味いと評判だからだ。十席程のカウンター席に大人数用の丸いテーブルが四つ、中程度の丸いテーブルが八つほどある割と大きな声酒場だった。


 四人はカウンターと入口の真ん中辺りで夕食を食べていた。


「おいひ〜!」

「こ、これはっ!」


 やはり二人にはどこの料理も美味しく感じるのだろう。こんがり焼けた肉や、いろんな野菜の入ったスープ、外はサクッと中は柔らかい食べ物をムシャムシャと食べていく。キアラも満足気に大きな肉にかぶりついていた。


「たーくさん、たべーる……」


 ケイ氏は二人の誤逮捕で国から少しお金を貰っていたのだが……足りるか不安になる。


「ね、ね! リヴ姉はどうして旅してるの?」


 キアラが興味津々に聞く。リヴィアは頬張っていたお肉を喉に流し込んで言う。


「ふふん、聞いて驚くな? 世界を救うための旅なのよ?」


 ちょっと自慢げに、両腕を組んで顔の位置を高くし、天を仰ぐ。


「んー? 世界? 危険なの?」

「危険じゃないのですか?」

「んんー?」


 キアラは不思議そうに答え、ラリィがケイ氏に質問する。

 ケイ氏曰く、十数年前までは国同士が争ったりはあったが、今は比較的平和なのだという。危ないと言えば西に広がる未開の地、つまり帰らぬの森より先のことだそうだ。


 あれ? あたし達の国って実は危ない場所だったの? とリヴィアとラリィは汗を流す。


「ま、魔王がいるんじゃないの?」

「まおー?」


 リヴィアが食い気味に尋ねるが、キアラもほえ? っというひょうじょうで片耳が垂れていて可愛い。


 それを聞いていたのか、別のテーブルの男性が笑いながら言った。


「じょ、嬢ちゃん、よしてくれや!」

「「?」」

「この世界に魔王なんざいねーよ」

「「!」」


 別の男性がお腹を抱えながら答える。


「どこから来たか分からないが、俺達傭兵は盗賊から商人や民間人を守るのが仕事さ。魔王なんてのは絵空事よ」


 確かにシルトのような街は、あまり防衛を気にしてないようであった。つまり、魔獣なんかいないし、魔王もいないのだろう。


「まぁ勇者ごっこしたいなら別の所でやりなぁ」

「!」


 傭兵風の四人の男達は一斉に笑ってリヴィア達をコケにしたのだった。しかし、この目で見てしまっているリヴィアは、男達の冷やかしが許せない。現に国は滅びたのだから。


「ちょっと! アンタ達こそ、冗談は止めてよねっ!」


 テーブルを叩くように立ち上がるリヴィア。


「私達の国は魔王によって滅ぼされた! だから絶対に許せないのよっ!」


 男達は一瞬黙ってリヴィアを見た後、さらに大笑いする。


「こ、こりゃ傑作だ!」

「マジもんのヤツキタァァァ!」

「ヒィーー腹いてーよーっ!」


 その光景にリヴィアの身体が怒りで震える。ラリィがソッとキアラとケイ氏を遠ざける。しかし、思わぬ事で収まることになる。


「その話……本当?」

「え?」


 振り向くといつの間にかリヴィアの後ろに黒いローブ姿の人物がいた。


「本当か聞いているの」

「……ほ、本当! 本当なんだからっ!」


 一瞬呆気に取られたが、すぐに勢い良く答えるリヴィア。



「そぉ……その話、聞かせてちょうだい」


最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

黒いローブの安売りに涙です。


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✧‧˚\\\\‎٩(*´▽`*)۶////✧‧˚

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