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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第二章 旅立ち
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8 眠れるお姫様

「んー、ここはー、何処ですかなー?」


「「んー、何処でしょー?」」


 そして冒頭に戻る。


 大怪鳥襲来後、大渦に呑み込まれた三人は、激流の中をあっちへこっちへと流され、やっと流れから解放され水面に上がることが出来たのだが。


「ここは……地底湖でしょうか……?」


 洞窟のちょっとした湖に流されたのだった。


「流石に暗いわね。明かりを付けるわ!」


 ブレスレットの光球を広範囲に指定して明かりを付けるリヴィア。


「便利なー道具ーなんだーなー」

「ふふん、私の発明なんだからっ! 感謝してよね」


 水から上がって、ずぶ濡れの服を絞りながらも、胸を張って自慢するリヴィア。その控えめな胸が控えめにドヤる。

 ラリィはその姿に、軍曹の出番が来ないように辺りを見回すフリをする。


「そ、それにしても、ここは少しひんやりとしますね。濡れているからというのもありますが……」

「それもそうね、それじゃあラリィ! ()()()()()()()!」


 軍曹が振り向く。

 ラリィは「あ、あっため……え?」っと動揺が身体全体に影響を及ぼす。目と口と鼻が全開だ。


「? 早く魔法使って暖めなさいよ!」


 軍曹が寂しそうに帰っていく。

 あっそういう事ね、っと思いつつもラリィは呪文を唱える。しかし、何かに阻害されているようで、魔力が集まらない。


「? あれ、魔力が……」

「ん? どうしたの?」

「いえ、何故か魔法が使えないようです」

「え、どういうこと?」


 魔力を練らないと魔法は発動出来ないため、ラリィは魔法が使えなかった。


「あー、そーいえばー……」

「「?」」


 ケイ氏が思い出したように話す。

 この渓谷は昔に出来たものだが自然に作られたわけではなく、大魔法によって出来てしまった産物だと言うのが伝説にあるそうだ。

 それによって魔力が安定しない場所が多く存在するとの事。


「そうなのね、使えない男って惨めね」

「んなっ、なんて事を言うんですか!」

「だってそうじゃない! あの鳥が襲ってきた時も私より早く飛び込んだくせに!」

「! いーえっ! リヴィアの方が早かったです! 俺は見てました!」

「なによ! 証拠でもあるの?」


 またギャーギャーと二人は口喧嘩する。するとケイ氏がある物を拾ってくる。


「いいーもの、あったー」

「「?」」


 二人は口喧嘩を止めて、ケイ氏の持ってきたものを目にする。それは手のひらサイズの鉱石であったが、やや赤みを帯びていた。


「これは?」

「こうするーと、あったーかい」


 ケイ氏はそれを同じ鉱石同士で掠らせるようにぶつける。すると鉱石の赤みが強くなる。


「はーい」

「? あっ!温かい!」


 ケイ氏がら鉱石を受け取ったリヴィアは驚く。なんと赤みが強くなった鉱石が熱を発しているのだ。


「ど、どういう事なんですか?」


 ラリィも不思議そうに鉱石を見回してみる。

 ケイ氏曰くこの鉱石は温高石という、衝撃を与えると熱を発する石なのだという。これがあるということは温泉が湧いていたり、逆に寒い洞窟なんかでよく見つかるのだという。


「へぇー、とても不思議な石ね!」

「これは凄いですね! 与える強さで温度が変わります」

「うんーうんー」


 良く見るといくつか転がっていたので、リヴィアもラリィも手にして試しに衝撃を与えている。

 三人はその後集めた温高石の上に濡れた服を載せて乾燥させる。流石にリヴィアは恥ずかしいので、岩陰に隠れて覗かれないように二人を睨み付けながら乾かす。


「まぁこんなもんかなー」


 流石に完全には乾燥出来ないものの、少しだけ水気を感じる服を我慢して着るリヴィア。

 リヴィアと違い、鎧やら鎖帷子のラリィやケイ氏はさほど気にならないようだ。


「あの流れは流石に無理だから後戻りは出来ないわよ?」

「そうですね、そうなるとやはり……」


 湖から元いた川には戻れないと判断し、見つけておいた奥へと続く道を進む事にする三人。

 ケイ氏の大きさが不安であるが、何とか通路を進んでいく三人。途中に段差があって降りたり、登ったりを繰り返す。基本的に一本道で横をドドドドっと凄い音で流れる水路がある。


「これは落ちたら危ないわね」

「想像したくないです……」


 恐らく雨で増水したせいで川の水が洞窟内にも流れ込んでいるのだろう。ケイ氏もこんな場所がある事を知らなかったようだ。


 道なりに進むとどんどんと周りの空気が冷え込んでくる感じがする。温高石を握り、寒さを凌ぐ三人。


「くぅ~、やっぱり寒いわね」

「この先に何があるんでしょうか? まるで天然の冷蔵庫のようです」


 吐き出す息が白みがかってきた所で、少し明るい光が通路の先に見えてくる。


「あ、あれは外?」

「それにしては、何だか光が青い気がします」


 その光は太陽のような暖かみのある光ではなく、冷たく切ないような青白い光であった。


 三人は行く当てもないので、そのまま光の差す方へと進み目を丸くする。

 そこは先程の地底湖と同じような広さではあるが、一箇所壁が大きく突き出している場所がある。と言うよりも、突き出している壁自体が蒼く輝くクリスタルのような巨大な氷だった。


「綺麗……」


 リヴィアは息を呑むようにその光景に目を奪われる。寒さの原因も間違いなく、この巨大な氷塊のせいであろう。

 三人はその美しさに見蕩れるように近付いて行く。触れられる距離まで来て、リヴィアが手を伸ばしてみる。

 すると急に氷の中の光が向きを変えるように、中が見通せるようになる。そして、リヴィアは伸ばした手をそのまま口へと押し付ける。


「! こ、これは」


 氷塊の中に一人の女性がいた。

 膝を抱えるように氷塊の真ん中辺りで浮かぶように氷漬けになっていた。その表情はとても寂しそうに目を瞑り、頬には涙が流れたような跡が残っている。白い肌に長く伸びた髪、服はワンピースの様で青と白のグラデーションが入っている。


「いっ、一体何が……」


 すると後ろの方、三人が来た方向とは逆の方から大きな唸り声が響いてくる。



 ヴヴヴヴヴ……



 振り向くと真っ白な四足歩行の獣がそこに居た。身体は大きく、口元がとんがり、大きな牙を口から見せている。目は黄色く鋭い。


「! なっ、なに!」

「リヴィア!」


 ラリィがリヴィアと獣の間に立つ。

 獣はゆっくり、ゆっくりと壁際をリヴィア達に視線を向けたままその鋭い爪の足を進めていく。

 リヴィア達も距離を取るように後ろに、そして元来た入口に向かい、下がる。


「ケイ氏も下がって下さい」


 ラリィが視線を獣に固定したまま声を上げる。

 すると、リヴィアがラリィに言う。


「け、ケイ氏ならもう()()()()いるわよ?」

「へ?」


 ラリィが変な声を上げて、洞窟の入口に目を向ける。するとケイ氏がこっーち、こっーちと手招きしていた。


「アンタ、動き良すぎるだろっ!」


 つい心の言葉が、いや魂の叫びがラリィから飛び出す。



 ヴヴヴヴヴ……ヴァウン!



 唸り声から一度吠える獣。それに反応してラリィも素早く視線を戻す。


「っく、いつ襲ってくるか分からないっていうのに、油断する所だった。」

「ね、ねぇラリィ? 何だかあの獣さん様子が変よ?」

「変?」


 リヴィアの言葉に、ラリィも獣の動きに注視する。


「……まるで、あの氷から私たちを遠ざけているような……」


 あっ! と思うラリィ。確かに壁際に進んでくる獣は、氷塊を背にするように回り込んでいた。


「もしかして……あの中の娘を待っているのか?」


 その予想が正しいと言うように、ちょうど氷漬けの女性を背にした所で獣は止まり、いつでも飛びかかれるようにと前足を下げ、頭を低くし、後ろ足に力を入れているようだった。



 ヴヴヴヴヴ!



 一層唸り声が大きくなる獣。その姿はまさに主を守る騎士のようだった。その姿を見てリヴィアもラリィも自分達がいけない事をしたような気になってしまい、警戒を解く。



 ! ヴァウ! ヴァウウッ!



 警戒を解いたことで獣はあっちに行け! っと言わんばかりに吠えた。


「……行きましょう?」

「……はい」


 リヴィアとラリィは気まずそうに後方へ下がる。ケイ氏と合流し、獣とは反対の壁際を通って獣がやって来た入口へと向かう。その間も獣は一歩も動かず、ジッと三人を睨みつけている。

 ケイ氏を先頭に入口へと入っていく三人。リヴィアは最後に獣に振り向きお辞儀をする。何故かそうしないと行けないような気がしたのだった。


 暫く無言で進む三人。


「……あの、あの獣は一体何なのでしょう?」


 静寂を破るようにラリィがケイ氏に質問する。


「ん~、わからなーい、けど、あんなーに、おーきな狼は初めーて」

「おお……かみ?」


 ケイ氏が狼について少し補足するが、本来は茶色や紺色、黒等の色で真っ白な狼は見た事がないという。それにあの大きさでありながら、ひどく痩せこけているとも言った。


「そ、そうですか……」


 ラリィはあの獣に何故か尊敬の念を抱かずにはいられなかった。リヴィアも同じ気持ちなようで、俯くラリィの肩に手を乗せる。

 ラリィがリヴィアに視線だけ向けると、寂しそうな笑顔でラリィを見ていたのだった。




 きっと主を失っても、あの獣はこれまでずっと一人で守り続けてきたのだろう。そしてこれからも……。



最後まで読んで下さり、ありがとうございます。



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