誰のために?
学校を卒業してからというもの、責任ある仕事を陛下たちから少しずつ任されるようになった王子。
用意された執務室には現在、王子であるフレッド、平日にも関わらず平然といるルディ(先生方に許可は頂いてますとのことだ)。教えることはないのでいいのだろう。
父上に勉強してこいと押し込まれたロッド。
王子とルディがいるなら親睦を深めておけ(間を上手くとりもてともいう)と言われたジョルジュ。
それと宰相によって試されているルイの5人がいる。
今回は流れ作業になっている。
まずルディが必要かどうか判断をして問題がなければ王子に回す。
王子は確認をして判をおす。
で、それをルイが(サポートでロッドも)最終確認をする。
ジョルジュは終わった書類を、各部署に運んだりして手伝っている。
俺はこの5人で何かあったら報告しろと陛下たちから言われているので隠れて様子を見ている。
もっとも、心配しているのは宰相だけで、他は楽しんでいるだけだが。
ジョルジュが席を外しているうちに、問題が起きた。
ルディとロッドのちょっとした口撃のせいだ。
いつもと対して変わらないものだったが、タイミングというかメンバーというかが悪かった。
静かに王子はルディたちに問いかける。
「君たちは誰のためにやってるんだ⁉︎」
一番返したのはルディだ。
「シャール様のためです」
続いてロッド。
「兄さん以外誰が?」
何も言わずそっと目をそらすルイ。
身分的に発言しにくいのだろう。まあ、今の状況じゃなにを言っても聞きやしないだろうし。
ちょうどそこに戻ってきたジョルジュは、全くと笑いをこぼす。
「なにやらみんな手厳しいみたいだね。しかし、伸び代があるとは思えないかい、王子?」
「……そう、だな。認めてもらえるほどの技量がないのも事実か」
戻ってきた直後のことで、状況もよく理解できてないだろうに上手いこと丸く収められるもんだ。
「長年の付き合いがあってこそだよ」
壁際に張り付いたジョルジュが小声でいった。
想定済みか。
ついでに陛下たちが俺を使って様子を知ろうとしてるのも。
壁際にある机にジョルジュはバスケットを置くとフレッドたちに声をかけた。
「少し休憩をしないかい。厨房から差し入れだそうだ」
「そうですね。朝からずっとですし」
「早く終わらせてしまいたいし、王子だけなら休まずにやらせるんだけど、仕方ないか」
ルイに気をつかったようで、それがわかったルイはロッドにお礼をいうが、ロッドはそっけない返事を返しただけだった。
「ありがとうございます。ロッド様」
お茶を淹れようとルイが立ち上がるがロッドが制する。
「僕がやる。たぶん、僕が一番上手く淹れられる」
「それでは……」
身分が一番低いので気にしてるらしいルイにジョルジュが助け舟を出す。
ジョルジュがいなかったらどうなるのか不安なメンバーだよな、これ、
「それなら、学ばせてもらうのはどうかな?」
「頼めますか、ロッド様」
「ロッド殿、ぜひ。シャール様のためにも」
渋りそうなロッドにすかさずルディもお願いをする。
俺の名前を聞いて了承するロッド。
できれば、何もなくても了承して欲しかったけどな。
教えながらお茶を淹れたロッドは、真剣に話を聞いていたルイに感心していた。
ひと休憩を終えて、仕事に戻る。
俺はジョルジュがいれば大丈夫そうだと判断して陛下たちに報告をすることにした。
主に宰相を安心させるために。
報告を聞いて、宰相は息子のルディに頭を痛めていたが、陛下たちは大笑いをしていた。
「いつになったら認めてもらえるんだか」
「笑いごとではないですよ。ルディもロッド君も、ルイ君は慣れてないので仕方ないとしても、これでは困りますよ」
「ま、こればっかりはなるようにしかならねぇよ」
ルディは絶対に認めないだろうな――。
ロッドは表面上は褒めるかもしれないけど。
ジョルジュはまあ、あの調子だろうし。
ルイは場数を踏めばそれなりにかな。
ロッドとルイが会うのは初めてでした。




