シャールの休日
これが最後の話になります。
久しぶりに何もない休日――。
仕事ばかりしてると、せっかくの休みもなにをしていいか分からなくなる。
家で鍛錬が妥当か。
そう思い庭に出ると、ロッドが声をかけてくる。
「兄さん、一緒に出かけませんか?時間が合う日もなかなかないので」
それもそうか。
ロッドは侯爵家を継ぐことが正式に決まって、王子と一緒にいることも多くなったし、俺も裏方で働いて家にいることも少なくなったから。
「そうだな。ロッドは行きたい場所あるか?」
「兄さんと一緒ならどこでも」
そう言われると鍛錬ばかりの俺じゃ行くあてが思いつかない。
ジョルジュならいろいろと知っていそうだと悩んでいるとリックが助け舟を出してくれる。
「南の大通りが最近人気らしいですよ。新しい店が多く開店したとかで」
「じゃあ、そこに行ってみるか」
「はい、兄さん」
準備を手伝うといったリックが女装させようとしてきたので一撃与えて大人しくさせて、南の大通りにロッドと向かう。
俺もロッドも自分の身は自分で守れるため護衛はつかないので正真正銘二人だけで出かける。
特に目的はないから適当に目についた店を見て回っていく。
せっかくだからと母上に土産を買うことにして喜びそうなものを探すことにする。
ちなみに父上には考えてない。
そうして歩いているとルイに会う。
宰相からおつかいの帰りらしい。
最近、意気投合して仲がいいロッドとルイ。
ロッドがルイに俺に会うのは久しぶりだろうと言って、ルイが合流する。
仲良くなって兄離れが少しでも出来るなら、いいとは思う。
ずっと歩きっぱなしもどうかと思い、近くの店にはいる。
二人が話す内容は俺のことが多く、聞いているこっちが恥ずかしくなる。
ロッドが喋ってルイが賛同する形で、まぁ、ルディとロッドの組み合わせよりは幾分かマシというくらいだ。
ロッドが俺から離れるのはいいことなので、このまま放置しておく。
この店は各国の料理を扱ってるようで、見たことのないものが結構おいてある。
精霊の約束で国を出れない俺にとってありがたい。
こっぱずかしい会話は聞かないようにして、食べているとあたりが急に騒がしくなる。
他のお客は小声で話しながらチラチラと入り口付近をみていた。
ロッドも周りの様子がおかしいのに気がつき、入り口に視線を向ける。
質素な格好をしているが、育ちの良さが滲み出ている金の髪に水色の瞳。
あと後ろに私服の護衛がちらほらといる。お客の誰もが王子に道を開けるせいで私服の護衛たちはこの空間ではかなり浮いている。
世間知らずの貴族が変装のため庶民の服だけを着てみましたって感じで、フレッド王子を見たことがあれば確実にバレるタイプの変装だ。
実際バレてるからこんな騒がしくなってるのだろうけども。
優しい国民の皆さんはお忍びのつもりなのだろうと知って、何も言わないつもりらしい。むしろ、親切すぎるほどだ。
王子は俺らに気づくとまっすぐに向かってくる。
「シャール、頼みたいことがあるんだ。ロッドとルイも手が空いてるなら手伝ってくれると嬉しい」
「そのよう――」
「わかった。城で聞く」
この場からさっさと離れた方がいいだろう。
俺はロッドの口を手で塞いで黙らせると、味わって食べていた料理の残りを急いで突っ込むとロッド、ルイ、王子と城に向かう。
城に着くと、王子の部屋の前でルディが仁王立ちで立っている。
年齢のわりになかなか様になっている。
「シャール様の休日を邪魔をするとは、何をお考えですか。フレッド殿下?」
声は凍てつくような冷気すら感じる。
城の騎士でもここまで威圧はできないと思う。
「ルディ、急用なんだろ?」
「それは、そうですが。1日くらいなら問題はありませんから」
「俺らの仕事はそういうもんだろ」
分かっていても納得いかないと頰を膨らませるルディは、フレッドにやつあたりを始め、それに加担するロッド。
止めようと試みるが、止めきれないルイ。
そこに騒ぎを聞きつけたジョルジュが仲裁に入る。
きっとこれが、俺の日常だ――。
女装騎士は未来の王妃を探します。を読んでくださった方々に感謝を。
ありがとうございました。




