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在るべきモノを、在るべき場所へ、在るべき姿で。
アルフレド・キング
「まぁ、あなたの言い分はわかりました。しかし、街中で軽率に力を使ったのはやはりいただけませんね」
「はい、反省してます……」
そうだよなぁ……。倫理的な問題は置いといて、ギルド的今回の正解行動は「スルー」だもんね。
七罪は一般人に対して無力、無害ですよ~、と世間に主張しているわけだから、むしろ「きゃぁぁ」とかなんとか悲鳴の一つも上げてちょこっと巻き込まれて軽い怪我でもしてくれたら上等、だったんだろう。どうせ補償するのはギルドだしな。
七罪の真の恐怖(ってなんだろう……)を知っているのはギルド上層部だけ。それ以外の人々には、ぜひとも侮られていてほしい、というのが彼らの望みなんだもんね~。
……侮られるも何もマジで私、何の力もないのに。
「まったく……。お蔭で丁度良い口実を与えてしまったではないですか」
「こうじつ?」
「がっがっがっ。まぁしょーがねぇよユリウス。いっくらおめぇさんでも、いつまでも守り切れねぇって。なぁに、じょーちゃんならだいじょーぶだって!」
なぁ、と一応の手加減でもって叩かれた背中がものすごく痛い。いま、ぱぁんっ音がしたよ! 絶対赤くなったよ!
「この娘は肝心なところが脆いですからねぇ。不安しかありませんよ」
はぁ、とユリウスさんが眉間を押さえため息をつく。
えー。なんかもー嫌な予感しかしない単語が目白押しでそろそろめまいが……。
「あ、あの、今度はどんな厄介ごとに巻き込まれかけてるんですか私?」
「あなたは落ちてきたその日から、むしろ厄介ごとの中心にいるのですが」
「中心なのっ?」
りぃぃぃぃん……。りぃぃぃぃん……。
そこんとこ詳しく! と立ち上がりかけた瞬間、自動ドアの開く音がした。
ええい、こんな時になんだっ。もしもジェレミーナXXX世さんだったら今度こそペンで刺してやるっ!……と気合を入れて(あ、実際にはできないから。気分だけ)そちらに目をやったところで、私はとっても後悔した。
そこには濃い紫色の髪に黒いボンネット、同じく黒いケープを羽織った黒いドレス姿、見た目40歳くらいの背の高い女性。
お身内に何かあったんですかと聞きたくなるような服装だが、彼女は違うんだよね。私知ってる。だってこの前会ったばっかりだもんこのヒト。
うわぁ、うわぁ。やばいよ九老院メンバーさまのお出ましだよ。うっかり睨んじゃったどうしよう。不敬罪で減給されちゃったりする?
「あら、わたくし時間を間違えていて?」
彼女は気だるげに微笑んで、わざとらしく首を傾げた。
入学式の最中に一通り読んでおいた略歴からすると、彼女はかなりのお歳のはずである。ユリウスさんと同じかそれ以上か。
そんでもって、ぱっと見イイトコのオクサマ風の割に武闘派である。
あ、うん、もうわかった。口実とか守るとか、このヒト関連ね。はいはいりょーかい。
「……いいえ、いつも通り、時間ぴったりですよレディ・オニキス。このような何もない場所へ何度も足を運んでくださってありがとうございます」
ユリウスさんがよそ行きの笑顔を貼り付けてレディ・オニキスに軽いお辞儀をした。
ちなみにこの世界の一般的な軽いお辞儀は右手の平を心臓(つーか制服の紋章の上)にあてて目を少し伏せ、頷く、とゆーものである。
これ、制服姿のユリウスさんがやるとなんか破壊力すごいんだよね……。え、王子さまにダンス誘われちゃった? みたいな気分になるの。ファンクラブができちゃったのも頷けるわぁ。
でも不思議。レディ・オニキスがいかにも中世の貴婦人然としているにも関わらず、なぜか今回は王子さまフィルターがかからない! むしろ怪獣大戦争の始まりを見てるみたい!
「こちらこそ、いつもお時間をとってくださってありがとう、ユリウス。……ごめんなさいね、わたくしもあなたを煩わせるのは本意ではありませんのよ? 地下にもだいぶ慣れましたし、そろそろ一人でも大丈夫ではないかしら?」
「いえいえ、とんでもない。無粋な仕掛けだらけのあの場所へ、レディをお一人で行かせるなどできませんよ」
うふふ、ふふふ、という笑顔の応酬の裏に副音声が入ってる気がする。つまり「一々ついてくんなようぜぇ」「野放しにしてたまるか」ってことでしょ? やだこのヒトたちこわい。
「でも今日は、そのことで来たのではありませんの。お伝えした通り、昨日のことで暴食さまへお詫び申しあげなくてはね」
「ふぇっ?」
おぉっと、怪獣に例えたら何対何が相応しいだろう、なんて考えていたせいで変な声が出た。
いや、私に関係することでいらしたのは薄々察しておりましたけれどっ! 昨日のことって?
「昨日、わたくしのひ孫が大変なご迷惑をお掛けしたそうで。そのあとの噂の広がりといい、暴食さまも若い女性ですからさぞや傷ついていらっしゃることでしょう。本当に、申し訳ありませんでした」
「……」
……ひまご。




