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第三章:冠の裏側
白刃を向けたその先に
怯える隣人の瞳を見たとき
勇者の胸に宿っていた「正義」は
音を立てて 瓦解した。
あの日 討ち取ったはずの魔王が
冷徹な声で 耳元に囁く。
「次は お前の番だ」と。
民衆が求めたのは 平和ではない。
思考を止め、ただ熱狂するための「敵」。
ならば、私がその器になろう。
血に染まった聖剣を 虚空へと投げ捨て
勇者は 漆黒の外套を羽織る。
あえて世界を 恐怖で縛るために。
これ以上の 醜い内輪揉めを止めるために。
万能の魔法が 絶望の雨となって降り注ぐ。
悲鳴を上げる民衆を 見下ろしながら、
元・英雄は 孤独な玉座で微笑んだ。
そして、勇者は魔王となる。
かつての敵と同じ 悲しい仮面を被って。




