↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を滅ぼす聖女様は殺し屋傭兵に拾われたらしい  作者: 待鳥月見/凪紗夜
後編 砂漠の先、血と慟哭の楽園
PR
25/26

第25話 楽園の消失と新しい人生

 あのあと大きな植物の間で、憂《ペイシャン》は眠りこけた。安心したら、どっと疲れが押し寄せてきて、というか、大規模に能力を使ったせいもあったと思う。

 黎明《リーミン》もいつの間にか、寝ていた。

 朝になって、あまりに眩しい陽の光で、二人は起きた。

 起きてからは植物に覆われて、死んだように静かな都市を、二人で歩いた。人の死体も、怪我をしていた人も、もう見つけられなかった。憂の能力は近い位置にいた人をほとんど取り込んでいた。逃げられる人はもう逃げたのだろう、そういう痕跡だけがあった。


 生きている人は、黎明《リーミン》と憂《ペイシャン》以外に二人だけ。

 咲夜《シャオイエ》と、その隣で大粒の涙を流す星蘭《シンラン》。


 憂《ペイシャン》は泣いている星蘭《シンラン》を初めて見た。風呂場で人を噛んだり、ひっかいたりして、暴れていた、あの情緒の拙い少女が、こんなふうに感情を露わにして泣くところを予想できていなかった。


 憂は、咲夜《シャオイエ》の手首の脈をとり、それが正常に脈打っているのを確認した。


「殺さなかったんですね」

「憂は人の命を助けるために【聖女】の力を使ったんやろ。なら、俺が殺したらだめよ」

「前は問答無用で殺していたのに、殺さなくなった、その変化が嬉しいです」


 死闘の末にぼろぼろになった咲夜《シャオイエ》の顔に、憂が触れると、金色の光が灯った。すぐに顔の腫れが癒えていく。

 まだ目を覚まさない咲夜《シャオイエ》と星蘭《シンラン》を置いて、二人はまた歩きはじめる。気持ちははじめてのデート、のような。そんな軽やかな歩調。


「そういう憂も、力を前より恐れなくなったんとちゃう?」

「今でも怖いですよ。この力は。でも、どうやって調整したらいいか、わかるようになったんです」


 最大出力して、都市を破壊し、植物園に変えた力。【聖女】改め、【進化】の能力。

 黎明《リーミン》が死ぬのならば、すべてを滅そうとした、あのときの覚悟――

 その覚悟を抱いたら、天井を知らずに少しずつ出力して確かめていたころが懐かしくなるくらい、一気に力の制御ができるようになった。


「楽園は消失しましたね。ここに都市は再興できるのでしょうか……」


 一夜にして荒れ果てた廃墟群を眺めて、憂は言う。

 泉の周りの花も燃やし尽くされ、灰すら残っていない。

 あとは巨大で奇妙な形をした肉色の樹が街中に生えている。

 死人の体が変質して芽吹いた植物、人間が触れていいものかわからない。


「そうやなぁ。憂が言ってたあの怖い女……なんて言ったっけ? 鮮血姫も、外国の人間を殺していることがバレたら、報復くらうで。処刑で済めばいいほうや」

「……まあ、もう彼女は、死んだものと見なしていますが」

「せやな。もう二度と会うことはないやろ」


 黎明《リーミン》は頷く。


「じゃあ、私たちは私たちのこれからを大切にすることにして。これから、どこに行きますか?」


「天空に浮かぶ、伝説の島」

「えー? そんなの本当にあるんですか?」

「文献にはちゃんと載ってるで」

「え~」


 二人は旅支度をした。また白装束を纏い、砂漠に向かう。


 その先に、まだ見ぬ未来が待っていると信じて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。