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イヌ

「おい――」

黒崎が声をかける。

「なんだ、黒崎」

振り返る。

「あと、その呼び方やめろ。俺の名前はイヌだ」

「……十年前の名前だろ、それ」

「今はこれでいい」

一切譲らない。

「で、要件は?」

黒崎は小さく息を吐く。

「フクスの予知だ。近いうちに――大規模なテロが起きる」

「大量のゲヒュールを使ったやつ」

「へぇ」

興味なさそうに相槌を打つ。

「それで?手伝えって?」

「雑魚の処理だけでいい」

黒崎は続ける。

「強い個体が三体出る。そっちに時間を取られる」

「その間に他が暴れたら終わりだ」

「なるほどね」

少しだけ考える素振り。

「報酬は?」

「お前に渡してもギャンブルに消えるだろ」

「当然だが?」

即答。

黒崎は呆れたように額を押さえる。

「……これでどうだ」

金額を提示する。

「……まぁ、いいか」

軽く頷く。

「三日は遊べる」

「パチスロ以外やれ。どうせ勝てるんだから」

「は?」

イヌは鼻で笑う。

「勝ちが確定してるギャンブルを、楽しめると思うか?」

一瞬、沈黙。

黒崎は顔をしかめる。

「……なんでこいつが、俺と同格で強いんだよ」

小さくぼやく。

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