ゲヒュール2があれば………
ヴェーラーが撃破されてから十年後。
「いらっしゃい。運試し、していきます?」
カジノに足を踏み入れた瞬間、声をかけてきたのはバニーガール。
接客もディーラーもこなす女。
身元は不明。名前も知られていない。
だから皆、彼女をこう呼ぶ。
――バニーちゃん。
「あ、お兄さん。私と勝負する?いいよ、特別に」
軽く笑う。
「せっかくだし、ちょっと面白い賭けしない?」
カードを配りながら、視線を絡める。
「私が勝ったら、質問に全部答えてもらう。
私が負けたら――好きにしていいよ」
読心。イカサマ。視線誘導。
全部使う。
勝負は一方的だった。
「はい、ありがと」
カードをまとめる。
「じゃあ質問。この写真の男、知ってる?」
「……へぇ、なるほどね」
軽く頷く。
「ありがと。また遊んでね」
男の背中を見送る。
そして、小さく呟く。
「……使えねぇな」
軽く舌打ち。
「情報屋って聞いたから期待してたのに」
彼女は“信頼”を喰わせている。
契約は強制履行される。
だから分かる。
――嘘はついていない。
だからこそ、価値がない。
視線をモニターへ向ける。
闘技場。
「勝てよ、イヌ」
低く呟く。
イヌ。
名前は奪われ、与えられたもの。
契約によって絶対服従を誓った存在。
「……まぁ、負けるわけないか」
イヌは“尊厳”を喰わせている。
その代償で得た身体能力は、常軌を逸していた。
モニターの中。
試合が終わる。
「勝ちました、ご主人様」
「当たり前でしょ。負けてたら捨ててたわ」
「はは……」
「ほんと変わり者だよな、お前」
少しだけ笑う。
「私よりギャンブル上手いくせに、わざと負けて契約されるとか」
肩をすくめる。
「正直、引いたわ」
「……いくら勝ったんですか?」
「あー、全財産賭けたけどさ」
つまらなさそうに言う。
「お前強すぎてオッズ低いし、正直微妙」
「全財産……?」
「リスクは負わないとね」
あっさりと返す。
「金が必要なんだよ」
少しだけ間。
「……なんで、そこまで」
イヌが問う。
バニーちゃんは一瞬だけ視線を落とす。
「この写真の男さ」
ポケットから取り出す。
「家族騙して、借金背負わせてさ」
淡々と続ける。
「両親、首吊ったんだよね」
軽く笑う。
「最悪でしょ」
「……僕も手伝います」
「言われなくても手伝わせる」
即答だった。
「策はあるんですか?」
「お前も考えろよ」
振り返る。
「私より頭いいんだからさ」




