表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/69

接触

「……やっぱりさぁ、誰か私を狙ってるよね」

紫苑が小さく呟く。

散歩の途中。

視線の先には、三体のゲヒュール。

しかも――前より明らかに強い。

「ねぇ、私のワンちゃんになってよ」

静かに言う。

沈黙。

「この前からおかしいと思ってたんだよねぇ。ゲヒュールが私に敵対するなんて」

一歩、距離を詰める。

「しかも今回は“本気で魅了”したのに効かないし」

わずかに目を細める。

「強いのは認めるけど……私の魅了を弾けるほどじゃない」

結論は一つ。

「――別の突然変異体に躾けられてる個体、か」

影が揺れる。

「ポチだけでいいや。手駒は減らしたくないし」

黒い影から、ポチが現れる。

「殺さないで。動けないようにして」

次の瞬間。

ポチの身体が霧のように崩れた。

空間に、剣が生まれる。

斬撃。

一体が避け、紫苑へと飛び込む。

だが――

その軌道に、すでに剣があった。

防がれ、同時に斬られる。

「ポチ、ハウス」

霧が収束し、影へと沈む。

「はい、捕獲」

紫苑は瀕死の三体を抱き寄せる。

「私の目を見て、言葉を聞いて」

やわらかく囁く。

「今から君たちは私のワンちゃん。いいなら――頷いて」

抵抗。

逃れようとする。

「大丈夫。抱きしめられて、嬉しいでしょ?」

声が少しだけ甘くなる。

「目、離せないでしょ。素直になっていいよ」

わずかな間。

やがて三体は、ゆっくりと頷いた。

「……よし」

紫苑は微笑む。

「私の影に入って」

三体はそのまま、影へと沈んだ。

「今のでやっと……ワンちゃんにできた。どういう事?」

違和感が残る。

その時。

「やぁ、一人?」

声。

「お兄さん、誰?」

紫苑は振り向く。

「君の親御さんの知り合いだよ」

「へぇ。ゲヒュール仕向けてくるヤバい知り合いが、パパとママにいたんだ」

軽く笑う。

「……同じ匂いがする」

目が細くなる。

「突然変異体のフェロモン」

一歩も動かない。

(この距離、まずい)

(私自身はただの人間と変わらない)

(ポチも、ワンちゃんたちも……出したら奪われる可能性がある)

考えろ。

「警戒してるね」

「そりゃね」

沈黙が落ちる。

――次の瞬間。

「ワンちゃんたち。全員、全速力で空へ」

影が弾けた。

無数のゲヒュールが空へと放たれる。

「……何をしてるんだ?」

「おまわりさん呼ぼうかなって」

「は?」

その直後。

「よぉ、ヤクモ。二十年振りじゃん」

横から衝撃。

ヤクモの身体が吹き飛ぶ。

「おじさん!!」

紫苑の声が弾む。

「紫苑ちゃん、大きくなったな」

現れたのは黒崎迅。

空気が一変する。

「……君が私を倒せるとは思えないけどね。人狼は付いてないんだろう?」

ヤクモが立ち上がる。

「紫苑と同じ状況だよ」

黒崎は一歩踏み込む。

「この距離なら――関係ない、だろ」

至近距離。

純粋な身体能力の領域。

「チッ……分かってやがる」

ヤクモが舌打ちする。

「今日は逃げるよ」

影が揺れる。

「追えば、その子は守れない」

ゲヒュールが放たれる。

黒崎は即座に動く。

全てを倒す。

だが――

終わった時には、ヤクモの姿はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ