子供達
「燐が好きなのは、私だよね」
紫苑が唐突に切り出す。
「いや……その」
燐は言葉に詰まる。
「え?普通に燐くんは私のでしょ?」
紬も引かない。
「どっちも大切な友達だよ」
「「ふーん」」
二人の声が揃う。
納得はしていない。
「……来る」
燐がぽつりと呟く。
「ん?」
「何が?」
次の瞬間、空気が歪む。
現れたのはゲヒュール。
だが、野良とは明らかに質が違う。
「二人とも、下がって。僕がやる」
燐が一歩前に出る。
「ワンちゃんたち、私を守って」
紫苑の影が揺らぐ。
十数体のゲヒュールが現れ、一斉に襲いかかる。
衝撃。
だが――
「今ので死なない……か」
紫苑がわずかに目を細める。
「いいとこ取りー!!」
紬の感情が溢れる。
その“余り”を喰らい、レヒツが一気に加速する。
次の瞬間、ゲヒュールの首が跳ねた。
「いい子だねぇ、レヒツ」
紬が満足げに撫でる。
「いや、私だけでも倒せたんだけど」
紫苑が不満そうに言う。
「言い訳しなーい」
「……ありがと。助かった」
燐が小さく礼を言う。
「燐は私のものだから、当然だよ」
紬は誇らしげに笑う。
「……はぁ。お母さんみたいに、人も魅了できたらなぁ」
紫苑は手柄を取られ、少し拗ねたように呟く。
「喧嘩しないで、ね」
燐が苦笑する。
――少し離れた場所。
三人を見下ろす影があった。
「あのゲヒュールで倒せないか」
「厄介な強さだなぁ」
「フクスを殺すのに、邪魔だね」
静かな声が重なる。
二十年間、影を潜めていた“何か”が――動き出す。




