二十年後
「ヤクモ、動けや。二十年なにもしないけど」
朱音が愚痴をこぼす。
「五千年生きているあやつからすれば、その程度は一瞬だ。仕方ない」
フクスが肩をすくめる。
「それにしてもさぁ」
朱音はそれでも不満げだ。
「子供たちに任せてもいい頃合いではある」
フクスは気楽に言う。
「いや、自分らで片付けるわ」
即座に朱音が否定する。
「そうか?もう安心していいくらい、あの子ら――それに“あの四人の子供”も十分強いぞ」
「……癪に障るけど、まぁね。私とフクスの子は分かるけどさ」
朱音が少しだけ眉をひそめる。
「黒崎と朝霧の子、あれは何?感情の出力と濃度が高すぎて、常にゲヒュールに狙われてるでしょ」
「だがレヒツが張り付いている。そう簡単には死なない」
フクスはあっさりと言う。
「黒崎も相変わらずだな。レヒツから引き出した身体能力だけで任務をこなす」
「流石というか、執念というか」
「それより神代くんと雨宮さんの子。あれ、なんなん?」
朱音が呆れたように笑う。
「フクスから見ても歴代最強クラスの突然変異体でしょ。影に無数のゲヒュール飼ってるって聞いたけど」
「突然変異自体は偶然だ。ただ、リーベの体質が遺伝し、それがさらに増幅された」
フクスの説明に、朱音は納得していない。
「……バグじゃん、それ」
「否定はせん」
「まぁ――」
朱音が息を吐く。
「一番は、私たちの子だけど」
「昨日、親子喧嘩しそうで危うかったな」
「朱音が止めていなければ、周囲ごと消えていた」
「本当にやめてくれない?」
朱音の声が低くなる。
「三秒先が常時見えて、三分間だけ底なしの力をフクス以上の出力で出せるんだよ?」
「周囲が消し飛ぶからね、マジで」
「だって、授業参観来るなって言うから」
フクスがわずかに不満げに言う。
「反抗期かと思ってな」
「なんで行けると思った?」
即答だった。
「フクスは見えなくても、来たら普通に大惨事でしょ」
「だってぇ」
「だってじゃない」




