狙うなら
「おかえり、迅くん」
黒崎は理央に抱きつく。
「おっと……今は催眠でワンちゃん、だったね」
(あの嘘、まだ信じてるんだ)
「今日は危険な仕事だったもんねぇ。ご褒美」
そのまま、軽く唇を重ねる。
(ちゃんと喜んでる)
「……迅くん、疲れてるね」
(欲望が解放された影響で、ゲヒュール全体の強度が上がってる。今回も私は外されて、迅くん単独任務)
「大丈夫。私がなんとかするから。無理しなくていいよ」
(白崎さん側にはまだ動きがない。迅くんを潰した後、フクスに対抗する手段があるのか……?)
「首輪、ベッドにあったかな。今日も付けてあげる」
(そもそも、敵対する理由が薄い。有効活用した方が合理的……上が歪んでる)
「似合ってるよ。私のワンちゃん。いい子」
指先で撫でる。
(ヴェーラーが消えた今、野良のゲヒュールで迅くんに勝てる個体はいない。来るなら、“契約個体”)
「……あ、心配させちゃった?私も少し疲れてて」
(白崎さんとフクスの情報――ヤクモは“隷属”。なら、狙いは一つ)
「私はもう寝るね。私のワンちゃんは、抱き枕」
黒崎の体を引き寄せる。
(契約者の墓地、“楽園”。あそこにいる個体を使う)
「……寝たか。やっぱり疲れてたんだね」
静かに髪を撫でる。
「私のものを傷つけようなんて……許せないよね」
(仕掛けるタイミングは――フクスの予知待ちでいい)




