どうやって落とした?
「そういえば、どうやって黒崎を落としたの?」
朱音がふと疑問を口にする。
「リンクスとレヒツを懐かせた時と、同じ要領かな」
理央は当然のように答えた。
「なるほどね。元は黒崎だし、リンクスは簡単そう」
「逆だよ」
「逆?意外なんだけど」
「レヒツは甘えん坊だからね。何して欲しいかを汲み取ってあげて、“怖くない”って理解させれば、割とすぐに懐く」
「リンクスも同じじゃないの?」
「リンクスは誰にでも懐くタイプだから、逆に私を特別視してくれないんだよね」
「じゃあリンクスはどうやったの?」
「迅くんと同じ。断れない性格だから、少し強引に距離を詰めるの。ハグしたり、膝に乗せて撫でたり」
理央はわずかに笑う。
「最初は戸惑うけど、だんだん自分から“してほしい”って思うようになる」
「ふーん……」
「だから迅くんにも、最初は強引に撫でたり、ハグしたり、褒めたりする」
「嫌がるでしょ」
「途中まではね。でも、そこで急にやめると、“してほしい”って思うようになる」
一拍。
「そう思った時だけ、応えてあげればいい」
「それで落ちたのか。あいつ、チョロ」
「そんな簡単じゃないよ」
理央の声がわずかに落ちる。
「迅くんはずっと警戒してる。“裏切られるかもしれない”って思ってるから。だから、普通に大変だった」
「……いつでも出来たんじゃないの?なんで今になって?」
「リンクスがいなくなったから」
短く、はっきりと。
「少しでも支えになりたかった」
「やっぱり、任務で死にかけたところを助けてもらったから?」
「それもあるけど……その後かな」
理央の視線がわずかに逸れる。
「“役に立たないなら辞めろ”って、脅されたんだ。」
「ひっど。あいつ」
「でも本心では、怪我してないか心配してたし……私が仕事を続けたら、死ぬんじゃないかって」
一瞬、言葉を選ぶ。
「ずっと気にしてた」
「それで専属カウンセラー、ね」
「迅くんも白崎さんも、危険視されてる対象だから。上は監視役が欲しかったんだよ」
「ん?私には付いてないけど」
「迅くんと仲良いでしょ。なんやかんや」
「……あいつ、私の監視役だったのかよ」
「気をつけた方がいい」
「何が?」
「君たち四人は、ヴェーラーを撃破した存在だ」
理央の声が静かに冷える。
「ヴェーラーがいなくなった今、“用済み”だと思ってる人間も、少なくない」
「ふーん」
朱音は肩をすくめる。
「だからなんだって話だけどね」
一瞬の沈黙。
その軽さだけが、妙に浮いていた。




