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カウンセリング

「……最近、よく来るね」

朝霧は穏やかに言う。

同時に、能力で黒崎の思考を読む。

「謝る必要はないよ」

少しだけ首を傾げる。

「気持ちは理解できる。共感はできないけど」

黒崎は何も言わない。

「レヒツ、出てきて」

影が揺れる。

足元から、レヒツが現れる。

「いい子だね」

迷いなく頭を撫でる。

「よしよし」

「……最初それやって、殺されかけてただろ」

黒崎が呆れたように言う。

「リンクスに治してもらったの、忘れたのか」

「覚えてるよ」

あっさり返す。

「でも分かるから」

「何が」

「この子たち、いい子だよ」

「心を読んでるからね」

黒崎は眉をひそめる。

「リンクスはともかく、レヒツが?」

朝霧は少しだけ考える。

「犬に例えるとね」

「リンクスは、誰にでも懐く子」

「レヒツは……」

一拍。

「虐待されて捨てられた子」

「人が怖くて、噛みついちゃうだけ」

黒崎は鼻で笑う。

「ただの殺人鬼だろ」

「違うよ」

静かに返す。

「他人の幸せを壊して、自分は不幸じゃないって思い込みたかっただけ」

「不安から逃げてる」

黒崎は目を細める。

「共感もできないくせによく言う」

「共感じゃない」

即答だった。

「情報と行動から、論理で導いただけ」

「……感情の無い俺には響かないな」

「無いと思い込んでるだけでしょ」

わずかに視線が揺れる。

「君は確かに、リンクスとレヒツを喰わせた」

「でもゲヒュールが喰うのは“感情”であって、“人格”じゃない」

「無理やり喰わせただけ。全部は消えてない」

「ならもう一回喰わせればリンクスは……」

「やめて」

わずかに声が強くなる。

「植物人間になりたい?」

沈黙。

「……無駄か」

「さっきの話、黒崎君にも当てはまるよ」

「……何がだ」

「レヒツと同じ」

「怖いから、壊してる」

黒崎は何も言わない。

「元々、君だからね」

「当たり前だよ」

一歩、距離を詰める。

「私は捨てない」

「ずっと君の味方だよ」

「安心していい」

黒崎は視線を逸らす。

「……そう言われてもな」

「嘘は通じないよ」

少しだけ笑う。

「嬉しかったでしょ」

「カウンセラー変えようかな」

「それもいいね」

あっさり返す。

「じゃあ私、現場出るよ」

「君とペアで」

「いや、邪魔なんだけど」

「役に立つよ」

黒崎は少し考える。

「……思考を送り込んで動きを止めるやつか」

「読み取りはともかく、送り込みは対策されるだろ」

「精神が強ければ弾ける」

朝霧は、くすっと笑う。

「それ、前の話」

「今は違うよ」

「レヒツ、見てて」

次の瞬間。

空気が変わる。

黒崎の目が見開かれる。

「……っ!?」

昼のはずだった。

だが、そこにいるレヒツは――

まるで深夜。

禍々しさが、段違いに膨れ上がる。

「深夜の状態を、脳に流し込んだ」

「最近、練習してたんだ」

「今は片手間でできる」

黒崎は一歩引く。

「……それは」

「危険すぎる」

「そう?」

首を傾げる。

「レヒツのデメリット、消せるよ」

「私を守る制約込みでも、得でしょ」

沈黙。

黒崎は視線を逸らす。

「……却下だな」

「珍しいね」

少し楽しそうに言う。

「普段なら合理で即決するのに」

一歩、踏み込む。

「さっきの言葉で揺れた?」

「惚れたでしょ」

「……チョロいな」

「やりづらいな……」

黒崎がぼそりと漏らす。

「さっきのは本心だよ」

「証明しよっか」

思考が、流れ込む。

「……だからなんだ」

短く返す。

朝霧はわずかに目を細める。

「嬉しいの、誤魔化すの下手だね」

「可愛いよ」

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