フクスの弱点
「あぁ……思い出すだけで嫌だ」
フクスがうんざりしたように呟く。
「ん?あぁ、この前のやつ?ごめん、ちょっとやり過ぎたかも」
「強制的に発情させられて、その上くすぐりで責められて、さらにそれを促進させられる気持ち……考えたことあるか?」
「戦闘ではあんなに強かったのに、くすぐり耐性は雑魚だったもんね」
「……違う」
「その話もそうだが、ヴェーラー戦の話だ」
「あ、そっちか」
朱音が軽く笑う。
「いやさ……あいつら分かってるから、合間に朱音を狙ってくるんだよ」
「そのたびに庇ってたから……キツイのなんの」
「私、いない方が良かった?」
「いや、それはない」
即答。
「朱音の命令で動きを止められたから、確実に喰い殺せた場面もあった」
「そっか」
「……問題はそこじゃない」
少しだけ間を置く。
「尻尾を狙われた」
「ヤクモの入れ知恵だな。あれは最悪だった」
「そんなに?」
「正直、なんで勝率が一割だったのか理解できていなかった」
「だが、あれで分かった」
「……あぁ、なるほどねぇ」
朱音が軽く頷く。
「ヴェーラーって手が多いやつもいたしさ、くすぐり攻撃してたら勝てたかもね」
「その話はやめてくれ」
即座に遮る。
「例えるなら、HPもMPも無限のボスを倒すようなものだ」
「無理だね」
「そうだ」
「予知がなければ、舐めて死んでいたかもしれない」
「どんどんリソースが削られていく恐怖……あれは厄介だ」
「でもさ、心臓潰されたら死ぬんでしょ?」
「死なない」
あっさりと言い切る。
「尻尾が九本揃っていれば、生命力は無限に湧き続ける」
「多少動きが鈍る程度だな」
「えー、理不尽」
「……そういえば、戦闘中に予知は使わなかったの?」
「使う余裕が無い」
「ふーん……まぁいいか」
「ヴェーラーももういないし、フクスもそこまで弱体化してないでしょ?」
「……いや、それがな」
少しだけ言い淀む。
「私、本気で戦うとエネルギー消費が激しい」
「十分間、全力で動けば尻尾一本分の力が消える」
「燃費悪すぎない?」
「さらに、一体を瞬殺する出力を引き出せば」
「一本分が一瞬で消える」
「えぇ……」
「じゃあさ、前みたいに尻尾ぶん回せば?」
「あれ強かったじゃん」
「無理だ」
短く否定する。
「尻尾は、欲望を喰らっていたからあの強度だった」
「今は……ただの柔らかい尾だ」
「つまり?」
「攻撃には使えない」
「以前より、簡単に破壊される」
沈黙。
「……ヤバくない?」
「ヤバい」
あっさりと肯定する。
少しの間。
朱音がふっと笑う。
「でさ」
「会話で気を逸らそうとしても無駄だよ?」
「今日は日曜日でしょ」
「……!?」
一瞬で空気が変わる。
「週に一回の――フクスが大好きなくすぐりと匂い攻めの日」
「待て」
フクスが後退る。
だが。
尻尾の根元を、掴まれる。
「……あれ?」
朱音が首を傾げる。
「急に力抜けたね」
「そっか、そこ弱いんだ」
「はい、魅了」
フクスの表情が、緩む。
抗えない。
「今日は――」
朱音が静かに命じる。
「僕の為に、たくさん虐めてください」
「……復唱」
「今日は僕の為に、たくさん虐めてください」
そのまま。
フクスは、逃げられない。
気絶する寸前を維持されたまま、
一晩中、責め続けられた。




