少し前の話
「フクス、作戦どうする?」
「……え?」
少しだけ間が空く。
「特に無いけど」
「なんで?」
「小細工するより、蹂躙した方が早い」
淡々とした声。
「その方が、私は強い」
「あー……ね」
朱音が苦笑する。
「じゃあ、優先して倒すやつは?」
「カンプフだな」
「なんで?」
「削るほど強くなる」
「ダメージを受けるたびに、攻撃力が上がるタイプだ」
「強くない?」
「だから、一撃で喰い殺す」
あまりにも当たり前のように言う。
朱音がくすっと笑う。
「……なんかさ」
「今の聞いてると、後でお仕置きしたくなるんだよね」
「前から考えてたのあるし」
「今回、実行しよっかな」
「……?」
フクスは特に気にしていない。
「ナイトも厄介だ」
「相手の持ってるものを模倣する」
「フクスの力も?」
「アリがライオンの真似して、同じになるか?」
「……ならないか」
「形だけだ」
「問題は無い」
「で、最後がノイギーア」
「目だけの存在だが、黒いコートで全身を覆っている」
「何が問題なの?」
「観測を固定する」
一拍。
「シュレディンガーの猫の結果を、勝手に決めるようなものだ」
「探究の名のくせに、やってることは強引だがな」
「それ最強じゃない?」
「フクスの攻撃、無効化されたりする?」
「いや」
「遠視で常に内側を観測する」
「だから意味は無い」
「あー、なるほどね」
朱音が軽く伸びをする。
「そういえばさ」
「私、肌着三日くらい変えてないんだよね」
「戦闘でもっと汗かくだろうし」
「……何が問題なんだ?」
本気で分かっていない声。
朱音が小さく笑う。
「ううん、別に」
「あとで分かるよ」
フクスはまだ知らない。
この戦いが終わった後、
自分に何が待っているのかを。




