その18.半獣のレオ
わたしの魔法でできること…
「治療」「育成」新たに「罠の解除」
誘拐犯がルーナの屋敷の庭を走り抜ける前に前方のバラを急成長させる。
足が止まった。
驚いてこちら睨む誘拐犯。
魔法の粒はまだ残ってる。
それを全部誘拐犯にぶつける。
誘拐犯の服の内側、髪の中、わずかに魔法の光が漏れていた。
つまり武装解除だ!
ボキッ
嫌な音がした。
激痛が走る。
誘拐犯は本当にわたしの指を折った。
右手の薬指だ。
痛さで全身が強張る。
でも集中力は途切れさせない。
こちとら前世で痛みに耐えて、耐えて耐え抜いてきたんだ!
魔法が誘拐犯にぶつかる。
パッと花びらが舞う。
誘拐犯が驚いて一瞬力を抜いた。
今だ!
わたしは誘拐犯に頭突きをする。
自分より背の高い相手には頭突きが有効だというのは
村の子供同士の喧嘩で知った。
わたしを手離す誘拐犯。
ゴロゴロ転がりながら距離をとる事に成功した。
「アニカ!」
クーガがわたしと誘拐犯の間に入ってくれた。
ものすごい安心感!
でもクーガに何かあってはいけないと
いつでも歌えるよう身構える。
クーガは誘拐犯を睨みつけながら
マントの下から取り出した剣を構える。
「半獣か」
「あーあ。
魔法で隠してたのにバレちゃった」
花びらが舞い落ちると、そこには金髪で青い瞳の美男子が立っていた。
確かに人なのに丸い耳が頭に乗っていて、太い尻尾が揺れている。
???
「あれ、半獣を見るのは初めて?
人と獣人の子供だよ」
そうなんだ!
獣人と人って結婚する事あるんだ!
興味津々で誘拐犯を見る。
「…面白い子だね。
好奇心旺盛なリスみたいだ。
おっと。」
誘拐犯は横に飛ぶ。
イグルーが捕まえようとして失敗したらしい。
「丸腰じゃあ部が悪い。」
3対1の状況で優雅にお辞儀をする誘拐犯。
「俺の名はレオ。
君の事が気に入った。また、会いに来るね」
「指を折ってくる人とは
二度と会いたくないです!」
間髪入れずに答えると、愉快そうに笑いながら
逃げて行った。
クーガは追うかどうか一瞬迷ったように見えたが
止まってくれた。
うれし〜。
流石にひとり取り残されたら悲しい。
「イグルーも追うな」
小さくいうとわたしの手を取る。
「痛た!」
「他に痛いところは?」
「転がった時に擦り傷が…」
わたしはボロボロの服を見下ろす。
きっと髪もボサボサだろう。
「大丈夫です。傷を治すのは得意ですから」
さっきハミングした曲を歌う。
優しく強い、空を自由に飛ぶお姫様が主役のアニメ映画。
映画の中で傷を癒すシーンにも流れる曲だからイメージがしやすいんだ。
ピンクの魔法の粒が現れ、折れた指に触れると痛みが引く。
魔法が見えるようになる前は過剰に魔力を使っていたのを実感する。
「クーガさんは大丈夫ですか?
窓から飛び降りたんじゃ…」
「あれくらいの高さはなんともない。
すぐに助けられずに、申し訳なかった。」
クーガがわたしのほおに触る。
泥を落としてくれてるのだとわかるが
なんだか勘違いしてしまう触り方だ!
「アニカ〜大丈夫ですの〜」
ルーナの声が聞こえる。
助かったような、惜しいような気持ちでルーナの声に応えた。




