その19.お風呂タイム
魔力の帯びた武器しか解除できなかたはずだから、
「丸腰」と言ったレオは嘘をついているんじゃないか…とか
クーガの恋愛対象は人に及ぶのか…とか
ルーナが作ってくれた服は弁償かな…とか
思考が散らばる。
いろいろな事がありすぎて疲れてしまったみたいだ。
ルーナの父が察してくれて外出許可を取ってくれた。
「警備を強化するから安心して泊まって行きなさい」
「いえ…そこまでは」
「お風呂を用意しますわ。遠慮なさらないで」
お風呂!
庶民には滅多に入れないお風呂。
前世では病院のお風呂を利用した記憶があるが
時間制限などでリラックスとは程遠い状況だった。
「よろしくお願いします」
誘惑に負けた。
汚れた服等は洗濯したのち修繕するらしい。
専属メイドがいるらしく「気になさらないで」との事だった。
「屋敷に不審者を招いてしまったのはオーガスト家のミスですわ。
お客様を危険な目にあわせてしまったのだから
お詫びをさせてくださいな」
ルーナ達のせいじゃないのに…そう思いながら
お言葉に甘える。
浴室はすでに整っていてルーナと入る事になった。
最初メイドをひとり付けると言われたが
リラックスできないし、ひとりでは使い勝手がわからない。
「ルーナと…お友達とお風呂に入りたいなぁ」
と甘えた事を言ってみる。
「しかたありませんわね!」
ルーナ大好き。
と、いうわけでお風呂タイム。
大人ひとり用の湯船なので少々きついが身体を洗って二人で浸かる。
うん。極楽だ〜。
陶器の足付き湯船は可愛いし
ルーナの美容トークも楽しい。
魔法のことや、不審者のことは話題に出さないのは気をつかってくれてるのかな?
時々突拍子もない事をしなければ
良い子なんだよな…としみじみ思う。
「歌を聴きたいですわ」
「いいよ〜」
わたしは自然に出てきた曲を歌う。
宇宙船が波に漂うアニメーションのエンディングが思い浮かぶ。
繰り返しのアニメーションだけどつい見てしまう。
浴室に歌にあわせて光の粒が踊る。
ルーナに歌っている時でも魔法の粒が漂っているのに驚く。
無意識に魔法を使っていたのか…
歌い終わると魔法の粒は辺りを漂って弾けて消えた。
「アニカの歌を聴きながらお風呂だなんて贅沢ですわ〜」
うっとりと言いながらルーナは余韻を楽しむ。
「こちらこそ、ありがとう」
その後は髪の洗いっこをしたりして少しのぼせてしまった。
怖かったことや、痛かった事も洗い流せた気がした。
オシャレなパジャマやナイトガウンを着て
ルーナより一足先に部屋に戻る途中クーガに会った。
クーガも宿泊するのは聞いていた。
近づいて挨拶しようとしたら…ポカポカクーガだった!
クーガもお風呂に入っていたらしい
いつもよりもさらにツヤツヤな毛並み。
良い匂い。
近くにいるだけで熱が伝わってくる湯上がりのクーガ!
「折られたところは大丈夫ですか?」
「う、うん。なんともない!」
手をグーパーと動かして見せる。
「失礼」
クーガがわたしの手をとり観察する。
熱が!直に熱が!
クーガの顎から雫が落ちる。
それがわたしの手に落ちた。
それだけなのに動悸がする。
顔が赤くなる。
意識しすぎてしまう自分が嫌すぎる。
「こんなにも綺麗に治す魔法は類を見ないよ」
感心してクーガが言う。
「そうなんですか?」
他の人の回復魔法は見た事がなかった。
実技の授業は三年生からだし、聖女様に傷を治してもらうこともなかった。
「立ち向かう勇気は素晴らしいが、
もっと自分を大切にしなさい」
クーガがわたしの怪我したところにキスをおとす。
とても大切な事を言われたが頭が真っ白になって
倒れないように踏ん張るのが精一杯だった。




