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捏造探偵~ドン・キホーテの大罪~その探偵は真実を葬り偽りの罪を作り出す【完結】  作者: 高山路麒


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4-3 四人目の犠牲者

 真矢が不在の間出来る事を探しその後どうにか自分に出来る事はないかと考え鑑識の左門を探そうとした俺だったが、鰈浜のビジネスホテルに戻ってノートパソコンで情報収集をしていた俺は早速出鼻をくじかれてしまった。


『速報! ドン・キホーテ事件四人目の犠牲者の生配信!』

「ッ!」


 それは新たなドン・キホーテ事件の発生を告げる記事だった。俺は急いでそのURLをクリックしその動画を確認する事にした。


『フゴ、フゴッ!』


 例の如くどこかの廃墟で撮影されたその動画の中央には主役である犠牲者の中年男性が両手首を縄で縛られ解体を待つ動物の様に吊るされていた。口にはタオルが巻かれていて喋る事は出来ないらしい。


 画面には二人目の動画に出てきた貴族風の人物、三人目の動画の大柄な人物、そして萩野キホも映っていた。どうやら今日はオールスターで行くようだ。


『さあ、皆様お待ちかねの裁きの時間だ。今日裁きを下す罪人は左門悟。かつて穂久佐村連続幼女殺人事件でDNA鑑定の結果を捏造した男だ』


 口上を述べるのは貴族風の人物である。だがさすがに凄惨な生中継も四回目となれば慣れたもので俺は冷静に情報を分析していた。


「先を越されちまったか……」


 左門はドン・キホーテたちに殺される事を警戒していた様だがその悪い予感は現実のものになってしまったらしい。出来れば俺か真矢が先に見つけて話を聞きたかったんだが。せめてもの救いはこいつが死んでも特に問題がないクズである事だろうか。


『あの事件で見つかった切断された足は当時実用化されたばかりのDNA鑑定が用いられたがその鑑定結果では足の人物と姉歯照子との親子関係は認められなかった。だがこの男は姉歯照子の焼け跡にあった流産した子供のミイラを使用して親子であると偽ったのだ』

『フゴゴッ……』


 そして貴族風の人物は誰も知らなかった真実を告げた。もしそれが事実なら様々な前提が覆ってしまうだろう。だがその辺の考察は一旦後回しにしてまずはすぐに削除されてしまうこの動画から情報を入手しなければ。


『この男の罪はこれだけではない。彼は他の事件でも証拠を改ざんし多くの罪なき人間の人生を狂わせた。その罪は万死に値する』


 貴族風の人物は裁判官の死刑宣告の様にそう告げた。正直この後の光景は見たくないが……仕方ないか。


『いつもならここで刑を執行するが今回は趣向を変えてみたいと思う。今回は様々な道具を用意したので希望の処刑方法があれば述べてほしい。大体の事は出来るから多少馬鹿馬鹿しいものでも構わないぞ』

「悪趣味な奴だな……」


 貴族風の人物がそう告げるとコメント欄は一気に盛り上がってしまった。中には『通報しました』『いくら何でもやりすぎ』など良識的なコメントもあるが、その多くは嬉々として自分の考えた殺害方法を述べるものだった。


『待ってました!』

『今回は燃やしたらどうですかね』

『このポーズなら生吊り胴とか。いや流石に無理かww』

『wktk』

『私刑は良くないと思うけど正直殺される方も自業自得だしなあ』

『いっぺん鋸引きを見てみたい』

「どいつもこいつもおかしいだろ……」


 そこには悪意に満ちた発言しかなくコメント欄はまるで人気インフルエンサーの配信の様だった。正直吐き気がしそうな程不愉快極まりないがなんでこいつらはこれほどまでに狂っているのだろうか。


 どいつもこいつもイカれてやがる。ここには頭のおかしい奴しかいなかった。


『よし、では生吊り胴を採用しよう。丁度刀もある。いけるか?』


 貴族風の人物はコメントに寄せられた生吊り胴なる処刑方法に決め大男は無言でコクリと頷いた。それがどんな方法なのかイマイチピンとこないがおそらくろくでもない処刑方法には違いないだろう。


『ンーンー!』


 大男は刀を手に取ると鞘を放り捨てその白刃の光に恐怖した左門は激しく暴れまわる。だが言うまでもなく彼には迫りくる死から逃れる術はなかった。


 大男は刀を両手でしっかりと握りしめ歴戦の侍の様な構えを取る。いよいよか……!


 シュッ!


 その一閃は左門の胴体を真っ二つに切り裂いた。下半身はボトリと落下し、重心が移動したせいで上半身は宙に浮きブランブランと揺れてしまう。


 ザシュッ!


 更に大男は返す刀で首に斬撃を浴びせ切り落とした。それは人間の所業とは思えない残酷な光景だったはずなのに俺は不覚にもその残酷劇グランギニョルに見入ってしまったんだ。


 倫理的にセーフかどうかはさておき確かにこの処刑方法は凄い。胴体を一薙ぎで両断し不規則に動き回る頭部を切り落とす。おそらく相当な技術を持っていないと不可能な芸当のはずだ。


『おおー』

『パチパチパチパチ』

『すご』


 それはドン引きしていた一部の視聴者も同じだったらしい。ドン・キホーテたちはその華麗なる美技でアンチですら魅了してしまったのだ。


『皆様、爽快な復讐劇はお楽しみいただけたでしょうか』


 中央のグロテスクな物体が異常に気にはなるが、萩野キホは微笑みながら残酷ショーの終幕を告げる。


『さて、次はいよいよ悪の親玉だ。私たちは次の動画で捏造を主導し、歴史に残る冤罪を生みだした男を処刑する。後ほど貴様に通告をしてやるからせいぜい首を洗って待っているがいい。光が消えた偽りの空の下で待っているぞ』


 そして彼女はそう締めくくり動画はようやく終了する。有益な情報はそれなりに手に入ったがまた殺人を食い止める事が出来なかったな……。


「ん? 待てよ」


 だが落胆していた俺はある事に気が付いた。この動画は生配信、そしてドン・キホーテ事件の犯人と疑われている真矢は現在警察に捕まっている。


「あれ? これってもしかして真矢にアリバイが出来ちゃった?」


 俺はその事に気付いて少しだけ安堵した。犠牲者が出たのは残念だが真矢の身の潔白が証明されたのは良かったかな。


 それを証明してくれるのはもちろん彼女を拘束していた烏丸達本人だ。これも一種のざまあ展開だろう。後は解放してくれるのを待つだけだ。


 正直な所貴族風の人物がもしかしたら真矢じゃないか、とそんな事を思っていたけどこれで犯人候補からは除外出来るだろう。うん、よかったよかった。

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